「全機種5G」「基地局5倍」で5Gサービスを強化するKDDI 課題は“政府の値下げ要求”?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
auが秋以降に発売にするスマートフォンは、原則として全て5Gに対応。4Gからの周波数転用も活用しながらエリアも一気に広げる方針で、2021年3月には1万局、2022年3月には5万局の開局を目指す。テレビ局の動画配信サービスをセットにした新料金プランも導入する。
1年で5G基地局を5倍に拡大、4Gからの周波数転用も積極活用
高橋氏によると、2021年3月末時点での基地局数は1万局になる見込み。そこから1年後の2022年3月末時点では、基地局数は5倍に増え、5万局を超える。高橋氏は「新規の周波数も当然使うし、既存の周波数も使う。いち早く5Gを広げていくことが、われわれに課せられた任務」と語っていた。KDDIによると、2021年3月の1万局は5G用に新規に割り当てられた3.7GHz帯や28GHz帯のみの数字だが、2022年3月の5万局には4Gからの転用分が含まれているという。
5万局の内訳は「非公表」(KDDI広報部)とのことで、5G専用の周波数と転用した周波数の比率は明かされていないが、推定はできる。3月に5Gの開始を発表した際に公開されていた2022年3月の基地局数は2万超。新周波数は年1万局のペースで拡大していくとみられる。5万局と2万局の差分である約3万局が、4Gからの転用と考えていいだろう。5万局まで拡大できれば、5Gでつながるエリアは体感上もかなり広がるはずだ。
5G専用に割り当てられた周波数帯は帯域幅が広く、速度が出やすい半面、周波数が高いため、エリアを広げづらい。電波の周波数は高くなればなるほど、その特性は光に近づき、建物などの障害物を回り込まなくなるからだ。現状でも、4G用に割り当てられた3.5GHzはスポット的にユーザーが多く集まり、混雑しがちな場所に導入されている。5Gになったからといって、この電波特性は変わらない。さらに、KDDIの持つ3.7GHz帯は、衛星との干渉を調整しなければならず、特に屋外は展開しづらい。
一方で、4Gで利用されている低い周波数帯を5Gに転用すれば、エリアは広げやすくなる。アンテナや基地局のハードウェアはそのまま活用して、ソフトウェアアップデートで対応できるケースもあり、新規で基地局を設置するより時間も節約できる。5万局の達成には、4Gから5Gへの転用が不可欠というわけだ。ただし、あくまでも転用のため、利用できる帯域幅は変わらない。5Gになったからといって、転用のエリアでは速度が大きく上るわけではない。
周波数転用に関するスタンスは三社三様。ドコモは速度が上がらない「なんちゃって5G」に懸念を示していたのに対し、ソフトバンクは転用でのエリア拡大を積極的に進めていく方針を示していた。KDDIは、その中間に位置付けられる。5Gの周波数を申請する際に打ち出していた基盤展開率は2024年度末で93.2%と高く、3.7GHz帯や28GHz帯でのエリア拡大にも前向きだ。同時に、4Gの周波数を5Gに転用して基地局数を大幅に増やしていく。その意味で、速度向上とエリア拡大のバランスを取ったのがKDDIの戦略といえそうだ。
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