市場拡大を見据え、ローカル5G関連の展示が急増した「CEATEC 2020 ONLINE」:5Gビジネスの神髄に迫る(1/2 ページ)
新型コロナウイルスの影響で、2020年はオンラインでの開催となったCEATEC。今回は携帯大手の出展がなかったこともあり、ローカル5Gやそれに関連したデバイス、ソリューションなどの展示が目立っていた。富士通コンテクテッドテクノロジーズ、シャープ、京セラといった主要企業の取り組みを見てきた。
新型コロナウイルスの影響で、2020年はオンラインでの開催となったCEATEC。今回は携帯大手の出展がなかったこともあり、ローカル5Gやそれに関連したデバイス、ソリューションなどの展示が目立っていた。主要企業の5Gやローカル5Gに関する取り組みを確認してみよう。
ローカル5Gは垂直統合型ソリューションに注力
国内のIT・エレクトロニクスの見本市イベントとしては最大規模となる「CEATEC」。だが2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、「CEATEC 2020 ONLINE」としてオンラインでの開催となった。
CEATECは近年、法人向けのデバイスやサービスが主体のイベントへとかじを切っていることから、2020年は商用サービスを開始したばかりの5Gに関する、産業用途への活用に向けた取り組みが注目されている。だが今回は携帯大手の出展がなかったこともあり、必然的に目立ったのがローカル5Gに関する取り組みの数々である。
2019年末に28GHz帯の免許割り当てが実施されたことを受け、多くの企業が参入を打ち出しているローカル5Gは産業界から強い期待を集めている。だが実際に企業が導入するとなると、免許の取得やネットワークの保守・運用など無線通信特有の複雑さ、基地局や端末のコストが高いこと、さらには具体的なユースケースが少なく、業務効率にどこまでつながるのかが分からないことなど、課題が非常に多いのも事実だ。
そうしたことからローカル5G関連のソリューションに力を入れている企業の多くは、プロダクトの企画段階から顧客と一緒に検討を進め、デバイス調達からクラウドやネットワークの構築、保守・運用に至るまで全てを請け負う、垂直統合型のソリューションとして提供することに力を入れているようだ。
また具体的なユースケースの創出に向けても、幾つかの企業が力を入れていることをアピールしている。例えば富士通は、パートナー企業とローカル5Gを活用したソリューションを創出する「ローカル5Gパートナーシッププログラム」を展開、ローカル5Gの実証ができる「FUJITSUコラボレーションラボ」を活用しての具体的なユースケース開拓を進めているという。
FCNTは端末投入を積極化、ローカル5Gを新たな事業の柱に
今回のCEATECでも、ひときわローカル5Gに力を入れているのが、スマートフォンメーカーとして知られる富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)だ。同社はスマートフォンで培ったセンシングや5Gなどさまざまな技術を生かし、企業向けのローカル5Gビジネスを新たな主力事業にするべく積極的な取り組みをアピールしている。
実際、FCNTはローカル5Gの市場開拓に向け、スマートフォン型の「ローカル5G用スマートデバイス」。Wi-Fiルーター型のデバイスにはない多機能性が特徴で、4Kカメラや高性能なプロセッサ「Snapdragon 865」を搭載していることから、ローカル5Gによる通信だけでなく、映像伝送や、クラウドにデータを送る前に処理をして負担を減らす、エッジデバイスとしての活用も想定しているようだ。
FCNTが提供する「ローカル5G用スマートデバイス」は、スマートフォン型ながらローカル5G向けの周波数帯にも対応しているのが特徴。形状やスペックから同社の「arrows 5G」をベースにしたとみられる
通信面ではスタンドアロン(SA)、ノンスタンドアロン(NSA)双方の運用に対応しており、カバーする周波数帯もローカル5G用の28GHz帯(n257)と、今後割り当てが予定されている4.7GHz帯(n79)、さらにはsXGP向けとなる4Gの1.9GHz帯(バンド39)への対応も予定しているとのこと。一方で公衆網の帯域もカバーすることで、拠点をまたいだ活用なども想定した設計がなされているようだ。
このスマートデバイス向けに、ネットワークの状態を可視化できる「ローカル5Gネットワーク可視化ツール」も提供するとのこと。4G・5Gによる通信や、位置情報などさまざまな無線の状況をディスプレイ上で確認でき、ログの保存もできることから、ローカル5Gのネットワーク検証や実証実験に役立つとしている。
そしてFCNTでは、こうしたデバイスやツール、そして5Gに関するノウハウを生かしてローカル5Gの構築支援ソリューションを提供していく方針も示している。単にデバイスを提供するだけでなく、ネットワーク構築や保守・運用までを提供することで、継続的なビジネスにつなげる狙いがあるといえそうだ。
もう1つ、FCNTが力を入れようとしているのが「5G対応スマートAIカメラソリューション」だ。ネットワークカメラの市場は急伸している上に買い替えサイクルが早く、新技術の導入が進みやすい。そうしたことから同社の技術を生かして5Gのネットワークと4Kカメラ、そしてクラウドではなくエッジ側で画像のAI解析をするデバイス、システムを一括で提供することで、この市場に入り込みたい狙いがあるようだ。
その事業拡大に向け、FCNTはエッジで映像解析ができる2つの5Gデバイスの投入も発表。1つはカメラ内蔵型で防水・防塵(じん)に対応した「スマートAIカメラPro」、もう1つは既存のカメラなどを接続して利用する「エッジAIキット」になる。これら2つのデバイスに、データの分析や端末の管理などをするクラウドシステムなどをセットで提供するとのことで、店舗や交通、設備の監視など幅広い分野での利活用が想定されているようだ。
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