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「mineo」のオプテージがMVNOではなく自らローカル5Gの構築に取り組む理由5Gビジネスの神髄に迫る(1/2 ページ)

オプテージは、2020年6月17日に「ローカル5G LAB」の設立を打ち出し、ローカル5Gへの取り組みを本格的化している。コンシューマー向けのイメージが強い同社がなぜローカル5Gへ参入するに至ったのか。実はオプテージがローカル5Gに参入したのには、社名変更が大きく影響しているという。

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 関西でのFTTHによる固定ブロードバンドサービス「eo」や、MVNOとして「mineo」を全国に展開している関西電力系のオプテージは、2020年6月17日に「ローカル5G LAB」の設立を打ち出し、ローカル5Gへの取り組みを本格的化している。コンシューマー向けのイメージが強い同社がなぜローカル5Gへ参入するに至ったのか、その狙いと現在の取り組みについて、次世代事業推進プロジェクトグループ 部長の三宅篤氏と、5G事業化推進T チームマネージャーの白野綾介氏に話を聞いた。

オプテージ
オプテージの三宅氏(右)と白野氏(左)。2人が立っているのが「ローカル5G LAB」だ(写真提供:オプテージ)

自ら無線技術を習得するのが大きな狙い

 実はオプテージがローカル5Gに参入したのには、社名変更が大きく影響しているという。同社の親会社である関西電力は2019年4月、情報通信事業の競争力強化のため子会社を再編したが、その際、通信事業を担っていたケイ・オプティコムに、システムインテグレーターの関電システムソリューションズの一部機能が統合され、社名もオプテージと変更することになったのだ。

 これによってオプテージは、ケイ・オプティコムが持っていた法人向けのネットワーク事業に、関電システムソリューションズが持つシステム構築・運用などの事業が加わったことで、自ら直接企業にネットワークを活用したソリューション提案ができるようになった。それと同じタイミングでローカル5Gが立ち上がったことから、企業の課題を解決し、B2Bの事業を拡大する新たな取り組みとして、ローカル5Gへ参入するに至ったのだそうだ。

オプテージ
ケイ・オプティコムのプレスリリースより。2019年4月の事業再編により、ケイ・オプティコムは関電システムソリューションズの一部機能を統合したことで、社名をオプテージに変更している

 同社はMVNOとしてモバイル向けの通信サービスも提供しているが、なぜローカル5Gが必要だったのか。その理由について白野氏は、「MVNOは無線のラストワンマイルはMNOの設備を借りるため、無線技術の習得ができない」と、ローカル5Gへの参入は同社にとって無線技術の習得が大きな狙いであると答えている。

 固定ブロードバンドもMVNOも、市場飽和と競争激化によって市場を取り巻く環境は非常に厳しい。それだけに、通信事業者として今後の競争に対応していく上では、自ら無線技術を持ち、新たな市場開拓をしていくことが重要と考えているようだ。

 それゆえ、ローカル5Gの参入に当たって同社内に立ち上げた「ローカル5G LAB」も、実証実験の場であると同時に、無線の技術者が少ない同社の中で無線技術を習得し、事業化を進めるための場として活用する狙いが大きかった。そこに社外に向けたアピールのためのコンテンツも用意し、ローカル5Gに対する取り組みを対外的にアピールするための場としても活用することになったのだという。

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ローカル5G LABはローカル5Gのアピールの場であると同時に、同社にとって無線技術を習得するための重要な場所にもなっているという

実証実験も積極展開、NSAの環境には苦労も

 白野氏によると、ローカル5G LABの発表直後から「問い合わせはかなりある」そうで、取材時点(2020年7月15日)では既に8月中旬までのスケジュールが埋まっている状況だという。

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ローカル5G LABでは4Kの映像伝送やバーチャル接客など、5Gの性能を見せるさまざまな展示も用意。施設内の基地局などはノキア製のものを使っているとのことだ

 問い合わせをしてくる企業の中で多いのは、やはり製造業だそうで、製造業に機器を提供する商社などからの問い合わせもあるそうだ。ただ建設業など、それ以外の企業・団体からの問い合わせも多く、業種を問わず多くの企業が関心を持っている様子だという。

 オプテージはローカル5G LABでの実証実験だけでなく、既にパートナー企業と組み、フィールドで実証実験も進めている。そのうち製造業とは、工場に基地局や端末を設置して電波特性を調べる実験を実施。発電所とはプラント上の設備を映像で監視し、損傷がないかを判断するという、実利用を想定した実験を進めている。

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パートナー企業とはローカル5G LABでの実証実験だけでなく、フィールドでの実証実験も既に進めている

 それらの取り組みで実際に無線通信を手掛けてみて、白野氏は「苦労はめちゃくちゃ多い」と話す。ローカル5Gの電波免許の申請をするのも初めてなので、そうした手続き上の苦労も大きいそうだが、より大きい問題となるのは「現状、ノンスタンドアロン(NSA)の構成でやらざるを得ない」ことだという。

 現在、ローカル5G用に割り当てられている28GHz帯は、商用の5Gサービス向けの周波数帯と同様、NSAでの運用が求められていることから、アンカーとして4Gのネットワークも必要となる。総務省ではその4G用の周波数帯として、地域BWAに用いている2.5GHz帯の活用を進めており、オプテージも2.5GHz帯を使用しているのだが、問題となるのはその地域BWAとの電波干渉である。

 というのも関西では、いくつかのケーブルテレビ事業者などが地域BWAを活用した通信サービスを提供しているため、それらとの干渉調整が必要になってくるのだ。オプテージは無線に関する知見がなかったことから干渉調整で大変苦労しているそうだが、さらに今後は28GHz帯の検証を本格化することとなるため「今後も生みの苦しみがたくさん出てくるのではないか」と白野氏は話している。

 そうした周波数帯の扱いの難しさに加え、5Gのメリットを最大限に発揮するためにも、事業化の本命はスタンドアロン(SA)で利用できる4.8GHz帯の割り当てがなされて以降と見ているようだ。実際、コロナ禍や働き方改革で注目される遠隔操作に関するソリューションなどは「SAでの実現に期待したい」と、三宅氏は話している。

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オプテージでは現在ローカル5G用の28GHz帯の免許割り当てを受け、2.5GHz帯によるLTEと組み合わせたNSA構成での運用を進めている。だが本命はやはり、SA運用ができる4.8GHz帯と見ているようだ
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