「mineo」のオプテージがMVNOではなく自らローカル5Gの構築に取り組む理由:5Gビジネスの神髄に迫る(2/2 ページ)
オプテージは、2020年6月17日に「ローカル5G LAB」の設立を打ち出し、ローカル5Gへの取り組みを本格的化している。コンシューマー向けのイメージが強い同社がなぜローカル5Gへ参入するに至ったのか。実はオプテージがローカル5Gに参入したのには、社名変更が大きく影響しているという。
FTTHはローカル5Gの展開にも大きなメリット
無線の経験は浅いオプテージだが、一方で関西地区に限定されるとはいえ、既に固定ブロードバンドの事業を展開していることは大きな利点となるだろう。実際、オプテージは関西において、企業向けにFTTHを用いた監視カメラなど、24時間・265日止めることなく運用し続けるミッションクリティカルなソリューションを提供している実績があり、そうしたアセットを生かしてローカル5Gに参入できることは、同社にとって大きな強みとなるようだ。
白野氏も「ローカル5Gは無線通信と捉えられがちだが、ラストワンマイル以外はほぼ固定通信であり、固定通信の知見やスキルは十分生かすことができる」と話し、ラストワンマイルをローカル5Gに置き換えるところから事業化を進めていく考えのようだ。実際、製造業などでは、工場の有線ネットワークを5Gで無線化したいというニーズが多いそうで、無線化によって従来1000万円以上の経費がかかっていた工場ラインの組み換えコストを大幅に削減することが期待されている。
もちろん関西以外ではそうした優位性を持つわけではないが、白野氏は「全国でもどんどん(ローカル5Gの)サービスを提供していきたい」と意気込む。ローカル5Gはクローズドなネットワークとなるため、関西以外でも他の事業者と同じ土俵で競えることから、関西での優位性を生かしながらも全国でローカル5Gの事業展開を進めていくというのが、オプテージの考えであるようだ。
では、MVNO事業との連携はどのように考えているのだろうか。三宅氏は「顧客がローカル5Gの端末を、外出先でもシームレスに使いたいというニーズはあると思っている」と話し、将来的にそうしたニーズに応える上では、広域でサービス展開しているMVNOとの連携が重要になってくるとの考えを示している。
そのためにも、テレコムサービス協会のMVNO委員会が提唱している、MVNOがキャリアのコアネットワークを運用できる「VMNO」に関して、三宅氏は「ありだと思っており、重要な検討課題になっている」と答えている。特にコアネットワークに関しては、ローカル5GとVMNOとで技術的に大きく変わるわけではないことから、まずはローカル5Gで実績を積みつつ、VMNOが実現する将来に備える考えのようだ。
取材を終えて:強みをどこまで実績に結び付けられるかが勝負
多くの企業が参入を表明しているローカル5Gだが、オプテージはFTTHやMVNOの実績を持つ通信事業者であるということが、今後の競争を見る上で優位性につながってくることは確かだろう。事業再編によって情報システムの提案構築などの事業も持ち合わせるようになり、法人向けにサービスを提供するための構えが整っていることも、大きな強みとなりそうだ。
ただ一方で、同社は無線通信を初めて手掛けるという意味では、他のローカル5Gと同じ土俵に立っているのも事実。しかも多くの事業者がオプテージ同様、4.8GHz帯の割り当て後にSAでローカル5Gの事業を本格化しようとしている状況だ。
白野氏は「競争は全然余裕ではないが、ライバルと一緒に市場を作る上ではいいと思っている」と話し、ローカル5Gの市場を立ち上げる上で多くの企業が参入することが重要との認識を示す。
だが今後、ソフトバンクが「プライベート5G」を展開するなどキャリアも同様のサービス提供を進めることで、競争は短期間のうちに大幅に激化する可能性が高い。それだけにオプテージがこの市場で優位性を獲得するには、いかに無線通信のノウハウを早期に蓄積し、強みを生かして早い段階で実績を多く作り上げるかが重要になってくるといえそうだ。
関連記事
- オプテージ、5Gの体験や実証実験ができるオープンラボを開設 ローカル5Gのセミナーも
オプテージは、同社のオプテージビル21階/3階に西日本初の5Gオープンラボ「OPTAGE 5G LAB」に開設。実際に稼働している5G用の無線基地局や端末を展示し、実証実験を行える環境を提供する。 - APRESIA Systemsとオプテージ、ローカル5GのSA方式による共同実証実験に合意
APRESIA Systemsとオプテージが、スタンドアローン(SA)方式のローカル5Gに関する実証実験の実施に合意した。対応する機器の開発を経て、2020年度末から「オプテージビル」内に開設したラボなどで実験を開始する。 - オプテージが「ローカル5G」事業への参入意向を表明 2019年度内に実証実験ラボを開設へ
オプテージは、5Gを地域限定で利用する「ローカル5G」事業への参入を目指すと発表。実証実験を開始するため、2019年度中に同社オプテージビル内にラボを開設する。 - なぜキャリアの5Gとは別に「ローカル5G」が必要なのか? メリットと課題を整理する
5Gはキャリアが展開するものだけでなく、自由に5Gのネットワークを構築できる「ローカル5G」という仕組みも存在する。特に法人での5G活用においては、ローカル5Gに高い関心が寄せられている。ただしNSAでの運用が求められていること、参入事業者に知見があるとは限らない、などの課題もある。 - コストはソフトで解決、本命は4.8GHz帯 先駆者が語る「ローカル5G」の極意
「Interop Tokyo Conference 2020」の初日となる6月10日に、「ローカル5G:活用のための課題克服に向けて」と題したローカル5Gに関するパネルディスカッションが開催。NEC、ファーウェイ・ジャパン、阪神ケーブルエンジニアリング、IIJのキーパーソンが登壇。ローカル5Gの活用に向けた取り組み、そして利用拡大に向けた課題と解決策について議論した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.