総務省が「MNPガイドライン」の改定案を公開 転出手数料の原則無料化や引き留め禁止を盛り込む:パブリックコメントを募集
総務省が「アクション・プラン」で盛り込んでいた、MNP(携帯電話・PHS番号ポータビリティ)制度のガイドライン改定に動き始めた。11月3日から、改定案に対するパブリックコメントを受け付ける。
総務省は11月2日、「携帯電話・PHSの番号ポータビリティの実施に関するガイドライン」の改定案を公開した。これに伴い、同省は11月3日から12月8日までこの改定案に対する意見(パブリックコメント)を受け付ける。
改定案の概要
今回の改定案の提示は、総務省が10月27日に発表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」に盛り込まれていた具体的な行動の1つ。MNP(携帯電話・PHS番号ポータビリティ)を通して携帯電話事業者間の乗り換えを活性化する目的で策定された。
案に盛り込まれた主な内容は以下の通り。なお、MNOは「携帯電話回線を貸し出す事業者」、MVNOは「MNOから携帯電話回線を借り受ける事業者」という意味で利用する。
- MNOは、新規参入するMVNOに対して当初から双方向のMNPを可能とすること(最初から転出と転入の両方をできるようにすること)
- MNP利用時の「転出手数料」を原則として無料とすること(対面や電話で転出手続きをする場合は転出手数料の上限を税別1000円とする)
- MNPの転出手続きを極力Webで行えるようにすること(できない場合は、その旨をWebサイトなどで分かりやすいように提示する)
- MVNOがMNP転出を受け付けた場合、MVNOがMNOに支払う手数料はユーザー手数料と同額以下とすること
- MNPに関する手続き用のWebサイトは原則終日(24時間)運用とし、アクセスしやすいようにすること(画面表示も分かりやすく)
- 転出元の事業者においてMNPをする意思を明確に示している人に対する一切の引き留め行為を禁止(問い合わせを選んだユーザーに対する説明や利益提供は許容:※)
- MNP転出の手続き時間を極力短くすること
- MNP予約番号の有効期限に一定の長さを求めている転入先の事業者は、その期間の合理性について分かりやすい説明をすること
- 引き続き、転入先事業者で完結する手続き(ワンストップ方式)について検討すること
(※)MNP転出を検討した人“だけ”を対象とする利益提供は禁止
今後の流れ
先述の通り、総務省では11月3日から12月8日まで、この改定案に対する意見を受け付ける。意見は、「e-Gov」(電子政府の総合窓口)の他、総務省への電子メール、郵送、FAXで送ることができる。注意点は以下の通り。
- 意見の送付は12月8日必着(郵送の場合は消印日でないので注意)
- 1000文字を超える意見は要旨の添付が必要
- 郵送やFAXで意見した場合、必要に応じて電子データ(原則としてWord形式または一太郎形式)での送付を追加で求められる場合がある
総務省は寄せられた意見を整理・要約した上で、同省の見解を添えて公開する。意見によって修正が必要な部分が生じた場合は、それを反映した上でガイドラインを改定することになる。
同省では、改定ガイドラインを2021年4月1日付で適用(施行)する方針だ。
なお、改定ガイドラインはMVNOにも適用される。ただし、特別の事情のあるMVNOは、利用手続きに関する事項の一部について、同省の確認を経た上で適用外とすることもできる。
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