KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルがNTTのドコモ完全子会社化に物申す――今こそ見直したい10年前に頓挫したソフトバンク「光の道」構想:石川温のスマホ業界新聞
NTTドコモを完全子会社化するための手続きを進めるNTT。その動きに対して、KDDI、ソフトバンクや楽天モバイルなどが「意見書」を取りまとめて総務大臣に提出した。ここで思い出したいのが、ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)の孫正義社長が唱えていた「光の道」構想だ。
2020年11月11日、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなど28社が総務大臣に対して意見書を提出した。NTTによるNTTドコモの完全子会社化に対して、電気通信市場の持続的発展に向けた公正な競争環境整備を求めるのが目的だ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年11月14日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
NTTドコモ以外の通信事業者にとって、今回の完全子会社に対しての危機感は相当、強いものがある。NTT東西が高額な卸料金を設定すれば、NTTドコモと他の通信事業者は赤字に転落するものの、NTTグループ全体で見れば黒字を達成することが可能だ。意見書では「ボトルネック設備の接続ルール・卸役務の利用について厳格な運用が必要」としている。
3社が登壇する会見を見ていて思い出したのが10年ほど前になるソフトバンク孫正義社長による「光の道」構想だ。
光の道構想では、既設の電話線(メタル回線)を全廃し、一気に光ファイバーに置き換えるというもの。日本全国どこででも高速インターネットが提供され、しかも税金ゼロで実現できるとしていた。5年で全国への整備を終え、利用料金も月1000円ちょっとという触れ込みであった。
A案(税負担あり、月5000円、地方切り捨て、2025年以降)とB案(税金ゼロ、月1150円、全国、2016年以降)という比較を見せて、国民にどちらがいいのかを迫った。
光の道構想ではインフラをNTTではなく、別のインフラ専業会社がやるという提案だった。
結局「NTTの機能分離という話にはなったが、最終的にはお茶を濁された」(関係者)という感じで幕を閉じた。
当時、ソフトバンクは携帯電話事業に参入後、エリア展開において苦戦していたこともあり「光の道構想で全国ネットワークを作らせ、そこにうまいこと便乗してソフトバンクのエリアを展開したいんじゃないか」的な目で見られていることも多かった。さらに、当時、孫社長はあまりに美味い話をし続けており、結構、胡散臭い感じになっていたのも、光の道が実現に至らなかった敗因と言えそうだ。
今思うと、10年前に光の道構想を掲げていた孫さんには未来が見えていたし、実現しなかったのが本当に悔やまれる。
今回の意見書を見ていると、5G時代を迎えて、今こそ、「光の道」構想が必要なんじゃないかと思えてきた。全国津々浦々、5G基地局を展開するにはNTT東西が持つ光ファイバーは不可欠だ。しかし、NTTドコモと一体となれば、競争事業者が脅かされることになる。
それならば、NTTグループからインフラ部門を切り離し、「インフラ専業会社」として、NTTだけでなく、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルも好きなだけ出資できる会社にしてしまえばいい。それであればNTTグループはインフラを持たず、ドコモ、コミュニケーションズ、データ、東西の電話と通信サービスを提供するだけの会社に一本化してもいいのではないか。
インフラ専用会社が5Gの基地局も手掛ければ、4社がシェアリングして使え、それぞれの設備投資額も抑えることができる。メインブランドでの値下げも夢ではない。
総務相も公正取引委員長も、NTTによるNTTドコモの完全子会社化を黙って指をくわえて見てるのではなく「ドコモを完全子会社化したいならインフラ部門は切り離せ」ぐらいの提案をかけてもいいのではないか。
かつて、4社目として携帯電話事業に参入していたイーモバイルがソフトバンクに買収された時も、総務省や公正取引委員会は機能していなかった。あの時、公正取引委員会が止めに入っていたら、日本の通信市場は今まで以上に競争が活性化していた可能性もゼロではなかった。
総務省と公正取引委員会はセンスがなさそうなので、誰かが菅総理に耳打ちし、「NTTからインフラ部門を切り離せ」と提案できないものか。
5G時代こそ光の道が求められているし、孫社長には再び、光の道構想をぶちまけてもらいたい。
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