大手キャリアは国民に誠意を見せるべき――メインブランドの携帯料金を巡り武田総務大臣が熱弁(2/2 ページ)
11月27日、武田良太総務大臣が定例の記者会見を行った。この場で、改めてメインブランドにおける携帯電話料金について資料を交えて熱弁した。その模様を、解説を交えつつ紹介する。【記事リンク追加】
「公共性の高さ」を自覚していないキャリアが料金選択を妨げる?
―― メインブランドの中でも(比較的)容量の少ないプランの料金に問題意識を持っているということか。
武田大臣 いや、再三言っているが、このコロナ禍において、国民の家計負担に(携帯電話料金が)重くのしかかっている。みんなが苦労している中で、国民の電波である公共の電波を使う公共性の高い(移動体通信)事業において、このような複雑なスキームを作って、新たにお金を取ろうとするのか。もう少し公共性を見つめてほしいということだ。
もう1つ、料金プランと実際に使うデータ通信量を見比べると、料金プラン別だと42.8%のユーザーが(月間)20GB超のプランに加入しているが、そのずべてが能力(容量)を使い切っているかというとそうではない。実際に月間20GB以上通信しているユーザーは、(全体の)11.3%しかいない。
残り(差分である31.5%のユーザー)は、無用な部分が全部料金に上乗せされている状態となっている。(料金プランの設計が)国民にとって分かりにくくなっている結果ではないか。
利用者の皆さんには、「自分の(利用)実態を見つめ直してください」といつも言っている。使わない部分のために、毎月お金を払っている(人が多い)わけですから。このことを知れば当然、皆さんはプランを変えるはずだ。
しかしそうならないのは、(料金について)よく説明をしていないか、分かりづらいシステムになっているからであると私は考えている。公共の電波を使っている事業なのだから、(大手キャリアは)こうした部分にも「誠意」を見せて、自ら見つめ直して改める努力をすることが重要だと考える。
―― KDDI(の高橋社長)へのインタビュー記事では「国に携帯電話料金を決める権限はない」という趣旨の発言もあった。大臣自身は「公共の電波」を意識した対応を求めているのだと思うが、それを踏まえて、この発言への受け止めを聞かせてほしい。
武田大臣 先ほども言った通り、(個別企業のコメントに対して)あえてコメントすることはいかがなものかと思うが、私は非常にがっかりしたし、残念な思いもした。
公共の電波を利用する事業者が、このコロナ禍において国民生活が苦しい現状において、相当な利益を上げている。その利益は、各家庭における固定費(通信費など)を積み重ねて得られたものである。
今のコロナ禍で、全ての人たちが協力して、ともすれば自分のできる限りの犠牲を人にふるまう気持ちで、コロナに打ち勝とうと力を合わせようとするときに、国民生活に還元しようとしない、今でも複雑なプランを使って、さらに国民から料金を取ろうとする姿勢が、納得を得られるのか。私は指摘をしていきたいと考えている。
真の目的は、利用者の皆さんに(料金値下げの)実感を持っていただくことにある。そういう思いでアクション・プランを用意して、競争環境の整備を進めている。そのためには、こうした分かりにくい、乗り換えの自由選択のハードルを徹底的に除去してもらわなければならない。
「国は料金を決める、決めない」というレベルではなく、公共性の高い事業として、国民にどういうサービスを提供しなければならないのか、常識で考えれば分かると思う。そこの所は、自分の判断で歩んで頂きたい。国民の気持ちを、もっと分かっていただきたい。国民にもっと知って頂く努力をしてほしい。
(大手キャリアは)日本を代表する企業なので、利潤を追うのは分かるが、その向こうには人や社会に貢献するということが大きな役割としてある。しっかりと実行に移して、国民から信用され納得される制度を生み出して、低廉化を進めてほしいと考えている。
解説
大手キャリアは総務省から割り当てられた電波を利用して通信サービスを提供している。そのことは事実だ。
しかし、大手キャリアは国有企業ではないし、特殊会社(特別な法律に基づき設立された株式会社)でもない。各社はそれぞれに戦略を持って事業を展開し、その利潤をもとに設備投資や災害への備えなども行っている。最近であれば5G(第5世代移動通信システム)への投資も活発化している。
さらにいえば、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクは上場企業である。ゆえに、株主の不利益につながりうる「料金値下げ」には慎重に対応せざるを得ない(NTTドコモは12月25日付で上場廃止となるが……)。
「料金を分かりやすくする」「乗り換えに対するハードルを無くす」ということは、誰もが理解を示すだろう。「料金を安くする」ということについても、消費者目線に立てば異論を唱える人も少ないはずだ。
しかし、“私企業”である大手キャリアに「公共の電波」を盾に値下げを迫ることは、果たして健全な行いなのか。値下げによって通信やサービスの品質が低下した際に、消費者が困ることはないのか。何より、既に低廉な料金を掲げるMVNO各社の競争環境をむしろ悪化させることにつながらないか――もう少し、さまざまな側面を検討した上で、料金の値下げを促すべきではないだろうか。
KDDIとソフトバンクの反応は?
この記者会見を受けて、KDDIとソフトバンクはコメントを発表した。詳しくは、以下の記事を見てほしい。
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