どんどん増えるauの「データMAXプラン 5G」シリーズ バンドルのアラカルト化をしない理由は?
auが「データMAXプラン 5G」シリーズにAmazonプライムをバンドルしたプランを追加した。これにより、同シリーズのプランは都合8つとなる。プラン数の増加を避けるためには、バンドルするサービスをアラカルト化(自由選択式)にすることが有効策で、海外では実例もある。なぜauはバンドルプランをアラカルト式にしないのだろうか。
既報の通り、KDDIと沖縄セルラー電話は12月11日から順次、au 5Gのスマートフォン向けに「Amazonプライム」の利用権を付帯したプランを提供する。
2019年9月13日に登場したau 4G LTE向けの「auデータMAXプラン Netflixパック」の登場以来、auは通信サービスとネットサービスを一体提供する「バンドル(セット)プラン」に注力している。KDDIの自社調べではあるが、バンドルプランを利用しているユーザーの顧客満足度は、そうでないプランと比べると高い傾向にあるという。auがAmazonプライムのバンドルプランを新設したのは、その流れを受けたものである。
これに伴い問題になるのが、プラン数の増加だ。
KDDIの自社調査では、バンドルプランを使うユーザーの満足度は、そうでないユーザーより高い傾向にあるという。また、20歳代のデータMAXプランシリーズの利用者に絞ると、その61%が月間20GB以上通信するという
プランが乱立しつつあるデータMAXプラン 5Gシリーズ
auのバンドルプランは通信サービスとネットサービスが“完全に”一体化している。そのためバンドルするネットサービスの組み合わせの分だけプランが“乱立”する可能性がある。今回発表された新プランを含めて、データMAXプラン 5Gシリーズのプランを列挙すると……。
- データMAX 5G
- データMAX 5G Netflix パック
- データMAX 5G Netflix パック(P)
- データMAX 5G テレビパック
- データ MAX 5G with Amazon プライム
- データMAX 5G ALL STARパック
- データMAX 5G ALL STARパック(P)
以上の通り7つある。全てのプランは端末単体での国内データ通信容量が無制限であることは共通だ。一方で、テザリング/データシェア/世界データ定額を利用する際の月間データ容量や、バンドルされるネットサービスに差異がある。
NetflixパックとALL STARパックにおける「P」の有無は、Amazonプライム利用権の有無を示す。月額基本料金は「P」の有無を問わず同じだが、あくまでも“別のプラン”である。利用権が自動的に付与(追加)されるわけではなく、プラン変更の手続きが必要だ。au 5Gの料金プランには上記7つの他、スマホ向けの段階制「ピタットプラン 5G」とルーター専用の「ルーターフラットプラン80(5G)」もある。
一方で、NTTドコモの5G料金プランは「ahamo(アハモ)」を含めても4つ、ソフトバンクの5G料金プランは3つと、auと比べて数が絞られている。しかも、NTTドコモとソフトバンクは「スマホ」「タブレット」「ルーター」で共通の料金体系だ。
バンドルサービスの違いや対応端末の違いに応じてプランを作った結果、au 5Gは他社と比べるとプラン数が多くなってしまっていることが、見方次第では課題といえる。
海外のバンドルプランはどう?
auのバンドルプランは、海外の携帯電話事業者の料金プランをもとにして考案されたとされている。では、海外におけるバンドルプランはどのようになっているのだろうか。
例えば米国のVerizon Mobileの場合は、auと同様にプランに応じてバンドルされるネットサービスのラインアップに差異がある。5Gネットワークの利用可否や通信速度の条件もプランにより異なる。
Verizon Mobileの容量無制限プランには、バンドルサービスや通信サービスの提供条件が異なるものが4種類(複数回線契約時は5種類)用意されている。auのデータMAXシリーズは、これを参考にしたものと思われる
一方で、イギリスのEEやVodafoneではサービスを選べる「アラカルト式」のバンドルプランを用意している。EEの場合はプランに応じて1つないし3つのサービスをバンドルできる。そのラインアップには「Apple Music」「Apple TV+」「Apple Arcade」が含まれている。
Vodafoneの場合はUnlimited(容量無制限)系のプランの一部において「YouTube Premium」「Amazon Prime」「Spotify」のいずれか1つをバンドルできる。
バンドルサービスのアラカルト化の予定はない?
auがバンドルするネットサービスをプランによって変更する戦略を取り続る場合、サービスの組み合わせの分だけプランが“乱立”する恐れがある。ユーザー目線で考えると、バンドルするサービスを自分で選べるアラカルト式の方が無駄を減らせて便利とも思える。
auはなぜ、バンドルプランをサービス一体(パック)型としているのだろうか。12月9日に行われた発表会の質疑応答で質問をしてみた。
筆者 バンドルプランの考え方として、料金プランがあり、そこに(別体として)幾つかのコンテンツサービスを「バンドルセット」として付けるといったアラカルト式にする方法も考えられます。実際に海外のキャリアではバンドルプランをアラカルト式にしている事例もあります。料金プランとして、あえて一体化して提供する理由を、改めて教えてください。
KDDI東海林崇副社長 大変鋭い質問です。長谷川(次世代ビジネス企画部長)からご回答申し上げます。
KDDI長谷川渉氏 パック型で提供しているのは、欧米と比べると日本では(ネット)サービスの利用率がそこまで高くないという市場環境を考慮した結果です。私たちが自信を持ってお勧めできるパートナー様のサービスをしっかりと付けた形で、説明もきっちりと行いつつ使っていただくのが良いだろうと判断して、パック型としました。
今後、(ネットサービスの)利用者が増えて、お客さまが「こういうサービスを選んで使いたい」という状況になれば、選択制(アラカルト式)を取ることも考えられるとは思います。
東海林副社長 「アラカルトで選んでください」となると、かえって複雑になってしまうケースもあります。(パック型にしているのは)お客さまにできるだけシンプルに見せて、選んでいただきたいという意図もあります。
店頭では「Netflixを見たいんだ」というお客さまにはNetflixパックを勧められますし、これからは「Amazonプライムが付いているといい」というお客さまにはAmazonプライムが付いてくるプランを勧められます。このような(プランを勧める上での)シンプル性を追求した結果でもあります。
au(KDDI)としては、ユーザーに勧める上での分かりやすさを優先してサービス一体型を選んでいるようだ。ただ、今後のユーザー動向次第ではネットサービスを自由に選べるアラカルト式に移行する可能性も否定はしていない。
このままでは、セットにするネットサービスの違いでプランが増えていくことは避けられないはずだ。それは果たして「分かりやすい」ことなのだろうか。今後のプランの展開に注目したい。
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