総務省でeSIM導入に向けた4社ヒアリングを開催――楽天モバイル「すべての周波数に対応せよ」に違和感:石川温のスマホ業界新聞
携帯電話事業者の移動(MNP)を円滑化するための方策を検討する「スイッチング円滑化タスクフォース」の第2回会合が開催された。端末に内蔵する「eSIM」について、MNO4社からのヒアリングが行われたが、楽天モバイルの主張に違和感を覚える部分があった。
総務省は12月8日、「スイッチング円滑化タスクフォース(第2回)」を開催。eSIMの普及に向けての話し合いで、各キャリアからヒアリングが行われた。
各社から提出された資料では、どちらかといえば、KDDIと楽天モバイルがeSIMに積極的な一方で、NTTドコモとソフトバンクが消極的な雰囲気が読み取れた。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年12月12日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
特に消極的なキャリアはeSIMに対して、セキュリティ面での不安をアピール。NTTドコモとソフトバンクからは「鍵情報が漏洩した場合はクローンSIMが作成される恐れがあり、特殊詐欺などで使われかねない」といい、特にNTTドコモからは「物理SIMであれば、キャリア側でSIMカードのベンダーを選定できるが、eSIMの場合はメーカー側でベンダーを選定するので、NTTドコモがセキュリティリスクを担保できない」とした。
KDDIは「専用アプリを使うことでセキュリティ面の懸念を最小化すべく対処している」という。KDDIでは2015年にiPadで訪日外国人向けのデータプリペイドサービスを提供。最近ではApple Watch向けに子供・シニア向けの見守り機能としての「ウォッチナンバー」にも対応している。
また、来春にはeSIM専業のMVNOを立ち上げる計画もあるため、eSIMに対して前向きなのだろう。
各社から提出された資料を見て、気になったのが楽天モバイルだ。資料の中に「国内で一定以上の販売シェアを有する端末製造事業者においては、周波数帯域やデータ通信・音声通信機能等についてすべてのMNOへ対応するよう義務付けるべき」とあった。
確かにスマホの周波数帯がすべてのキャリアに対応していれば、MNPでキャリアを乗り換えたときにも確実につながるということで、ユーザーにとっても安心感があるだろう。楽天モバイルがおっしゃることは正論でしかないのだが、一方で、Rakuten Miniの周波数を世間に黙ってこっそりと変更し、他キャリアがメインで使っているBand1を無くした会社が、どの口で言っているのか。
確かにすべての周波数帯に対応しているのが理想なのは間違いないが、すべての周波数帯に対応しようと思えば、その分、本体設計や部材のコスト、さらには検証項目が増えるコストと時間に跳ね返ってくる。結果として、その分のコストは端末を購入するユーザーに跳ね返ってくるのではないか。
特に5Gに関しては、NTTドコモだけが4.5GHz帯を持っており、KDDIやソフトバンクがスマホを調達する際、4.5GHz帯に対応していなくてもいいはずだ。
楽天モバイルとしては他社からユーザーを奪うために、ユーザーの持つスマホがすべてのキャリアに対応しているのが望ましいのだろうが、現実問題としては、あまり筋のいい主張ではないように感じた。
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