2020年の5G動向を振り返る コロナ禍で“最悪のスタート”も、2021年の本格始動に期待:5Gビジネスの神髄に迫る(2/3 ページ)
日本の5G元年となった2020年だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を強く受け、5Gをアピールするイベントが中止・延期になるなどして低迷。技術や周波数の影響もありローカル5Gを主体とした法人向けの利活用も大きくは広がっていない。唯一の救いといえるのは、コロナ禍でも携帯各社の5G整備スケジュールにあまり大きな影響が出なかったことだろう。
NSA運用下ではビジネス活用も本格化せず
では、5Gのビジネス活用に関する取り組みはどうだろうか。5Gはもともと、企業や自治体などのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進める上で重要な役割を果たすとして、コンシューマー向けよりも大きな注目を集めていた。
実際、携帯各社も2020年、5Gを活用した法人向けの取り組みを積極化している。ドコモは2020年3月のサービス発表当初より、パートナー企業と22の5Gソリューションを創出したことをアピールしており、2020年9月には新たな5Gソリューション創出のため「docomo 5G DX AWARDS」も実施し、5Gを活用したソリューション開拓に積極的に動いている。
KDDIも法人事業強化のため、5GやIoTなどを活用した新規ビジネス創出の拠点「KDDI DIGITAL GATE」のある東京・虎ノ門に、法人部門の新拠点を移設。さらに2020年12月には、ニューノーマル時代のライフスタイル提案に向けた調査・応用研究の拠点「KDDI research atelier」を設置するなど、5Gを基盤として新技術を生かしたビジネス開発に積極的な取り組みを見せている。
KDDIは2020年10月9日に「KDDI research atelier」の設立を発表、「KDDI DIGITAL GATE」や法人部門の新拠点とともに東京・虎ノ門に法人事業を集約させ、5G時代のビジネス開発に向けた取り組みを強化している
また法人向けの取り組みとしては、携帯電話会社以外の企業などが、エリアを限定した5Gネットワークを構築できる「ローカル5G」も注目を集めている。事実、2019年末にローカル5G向けの28GHz帯の免許割り当てが実施された際には、ネットワーク関連の企業を中心として多くの企業や自治体が免許を申請、実用化に向けた準備を進めてきた。
だがそうした積極的な取り組みとは裏腹に、5Gを活用した具体的なソリューションが本格的に稼働したというケースはあまり見られず、多くは実証実験レベルにとどまっているのが現状だ。その主因はノンスタンドアロン(NSA)運用にある。
現状は携帯電話会社の5Gも、ローカル5Gもともに4Gと5Gを一体で運用するNSAでのネットワーク構築が求められ、5Gの特徴の1つである高速大容量通信しか実現できない。ビジネス用途では低遅延を実現する「マルチアクセス・エッジコンピューティング」(MEC)やネットワークを仮想的に分割して用途ごとに割り当てる「ネットワークスライシング」への注目度が高いが、これらの技術を本格導入するには5G単体構築されたスタンドアロン(SA)運用への移行が求められる。
それゆえ、5Gのビジネス活用を本格化するには、SAが必須と考えている事業者が多いのだ。実際ソフトバンクは自社の5Gネットワークを、ローカル5Gのように特定の場所に限定して提供する、企業向けの「プライベート5G」を2020年5月20日に発表しているが、その実現にはSAへの移行が必要なことから2022年度の提供予定だとしている。
またローカル5G事業者にとっても、NSA運用では5Gに加え4Gの基地局整備が必要なことから、整備コストが高く運用が複雑になってしまう。それに加えて免許獲得できる周波数が非常に高く、広範囲のカバーに向かず活用しづらい28GHz帯ということもあり、2020年中にローカル5Gによるビジネスを本格化する企業はあまり見られなかった。
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