2020年の5G動向を振り返る コロナ禍で“最悪のスタート”も、2021年の本格始動に期待:5Gビジネスの神髄に迫る(3/3 ページ)
日本の5G元年となった2020年だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を強く受け、5Gをアピールするイベントが中止・延期になるなどして低迷。技術や周波数の影響もありローカル5Gを主体とした法人向けの利活用も大きくは広がっていない。唯一の救いといえるのは、コロナ禍でも携帯各社の5G整備スケジュールにあまり大きな影響が出なかったことだろう。
エリア整備に事業者間で差 5G元年は2021年に延期か
コンシューマー向けはコロナ禍に阻まれ、法人向けもうまく立ち上がっていない。ある意味で5Gは最悪のスタートを切ってしまったといえ、海外からの出遅れ感がいっそう際立つ結果になってしまったのは非常に残念なことだ。
唯一の救いといえるのは、コロナ禍でも携帯各社の5G整備スケジュールにあまり大きな影響が出なかったことだろう。2020年6月の商用サービス開始を予定していた楽天モバイルは、海外でのコロナ禍によるロックダウンの影響を受けて開始時期を3カ月遅らせたものの、他の3社はほぼ計画通りにエリア整備を進めているようだ。
ただ、エリア整備の戦略には違いも出てきている。ドコモは当面、5G向けに割り当てられた周波数帯だけを用いて全国のエリア整備を進めるとしているが、KDDIとソフトバンクはダイナミックスペクトラムシェアリング(DSS)などの技術を用い、4G向けの周波数帯を5Gでも活用することで、ドコモよりも早期に全国のエリアカバーを進めようとしているのだ。
KDDIは当初、2022年3月末までに全国2万局超の5G基地局を整備するとしていたが、4G周波数帯の活用によるエリア拡大を優先して同時期までに約5万局を整備する方針に変更。2020年12月中には4G向けに割り当てられた3.5GHz帯の利用を開始するとしている
4G向けの周波数帯は、確かに周波数が低く広範囲のカバーに適しているが、一方で帯域幅が狭く5Gらしい高速大容量通信は実現できない。それゆえドコモは「瞬速5G」というブランディングで高速通信ができることをアピールし、2社をけん制している。2021年には5Gの面展開が本格化するだけに、どちらの5Gネットワークが高い支持を得られるかが注目されることになりそうだ。
ドコモは5G向けの周波数帯で全国エリア整備することにこだわり、「瞬速5G」として優位性をアピール。それゆえエリア展開は大手2社より遅くなるようで、2022年3月末時点で5G向け周波数帯を用いた基地局数の整備は2万局にとどまる
また端末に関しても、日本で圧倒的人気を誇るAppleのiPhone新機種「iPhone 12」シリーズが全機種5Gに対応したこと、さらにはミドルクラスよりやや上のスマートフォンに向けたプロセッサ「Snapdragon 765」を搭載したスマートフォンが増えたことなどで、5Gスマートフォンの利用者は順調に増えているようだ。2021年にはより低価格帯向けの5Gプロセッサを搭載したスマートフォンが増えることから、今後、5Gスマートフォンへの買い替えは急速に進むといえそうだ。
そして法人向けの施策に関しても、2020年12月中にローカル5G向けとして、SA運用ができる4.7GHz帯の免許割り当てがなされるとみられており、最大の課題であった周波数帯とNSAの問題が解消されることから、いよいよ本格的な活用が進むフェーズに入ることとなりそうだ。実際、4.7GHz帯の割り当てを見越し、富士通やNECなどがローカル5Gの商用サービスの本格提供を相次いで打ち出している。
そうした一連の動向を見るに、日本の5G元年は東京五輪と同様、2021年に延期されたともいえるかもしれない。2021年こそは5Gによる先進技術や未来が注目される1年になってほしいものだ。
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