政府主導で進んだ料金値下げ/静かな船出も普及の兆しを見せた5G――2020年のモバイル業界を総括:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
コロナ以上にモバイル業界を振り回したのが、政府主導の「官製値下げ」だ。2020年は1年を通じて料金が話題を集めた。3月にMNOが3社そろって5Gのサービスを開始したのも、モバイル業界にとって大きな転換点だった。AndroidのミドルレンジモデルやiPhone 12シリーズの登場を機に、普及の勢いに弾みをつけている。
5Gはデータ容量無制限が主流に、エリアも年末から拡大傾向に
料金値下げに注目が集まった1年だったが、3月にはドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が5Gを導入。KDDIはauでデータ容量無制限の「データMAX」を導入済みだったが、ドコモも「5Gギガホ」でこれに対抗。終了期間を定めないキャンペーンで、データ容量無制限を打ち出している。サービス開始から約9カ月後の12月には、5Gギガホをさらに改定すると発表。2021年4月には、料金を1000円値下げしつつ、正式にデータ容量を無制限に上げた「5Gギガホ プレミア」を導入する。
無制限化の流れはソフトバンクにも波及した。ソフトバンクも12月22日に「メリハリプラン」の改定を発表。料金水準をドコモと同等に合わせつつ、データ容量を無制限にした「メリハリ無制限」を3月にスタートさせる。高速・大容量が売りの5Gを訴求する手段として、データ容量無制限が定着していった格好だ。とはいえ、各社の持つ電波は有限だ。そのため、各社ともデータ容量無制限の打ち出しには慎重な姿勢を示していた。
ドコモがキャンペーンでデータ容量無制限を導入したのも、そのためだ。当時、代表取締役社長を務めていた吉澤和弘氏(現・取締役 特命担当)は「ネットワーク設備等への影響を見定める必要があり、まずはキャンペーンでの提供にした」と語っている。ソフトバンクも、メリハリ無制限の導入にあたっては、動画やSNSなどにゼロレーティングを導入し「ユーザーのビヘイビアー(行動)を見て、気を付けなければいけない項目は何なのかを実地で勉強していた」(代表取締役副社長 執行役員兼COOの榛葉淳氏)という。
ただ、5Gの普及は当初想定していた以上のスローペースだった。サービスイン直後に緊急事態宣言が発令され、ユーザーがショップで機種変更しづらい状況だったことや、エリアが狭く、あえて機種変更するようなメリットが少なかったことなどが、その理由だ。端末のラインアップも、サービスイン直後は10万円以上するハイエンドモデルが中心で、端末購入補助に厳しい制限がかかってしまった中、気軽に機種変更できなかった。
こうした状況が徐々に変わり始めたのは、秋ごろのことだ。エリアに関してはKDDIやソフトバンクが、4Gの周波数の一部を5Gに転用する計画を明かし、総務省も開設計画を許可した。KDDIは12月に、3.5GHz帯での5Gを開始した他、エリアカバーがしやすい700MHz帯も5Gに転用していく。ソフトバンクも同様で、2022年3月までに人口カバー率90%を達成する計画を打ち出している。対するドコモは「瞬速5G」と銘打ち、5G用に割り当てられた新周波数での展開を強化。マクロ局などを活用することで、高速通信可能なエリアを広げていく方針を打ち出している。まだまだエリアは限定的ながら、拡大に向け、一歩前進した格好だ。
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