iPhone 12シリーズは5G普及の起爆剤になるか 日本市場へのインパクトを読み解く:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
iPhone 12シリーズは、「iPhone X」の登場以降、初めてベースのデザインを大きく変えたフルモデルチェンジの端末になる。特に大きなトピックが、5Gへの対応だ。AppleのCEO、ティム・クック氏が「新しい時代のiPhoneの幕開け」と語っていたことが、その期待感の大きさを表している。
例年より、約1カ月遅れで開催されたAppleのスペシャルイベント。ここでは、新たにiPhone 12シリーズが発表された。ど真ん中のモデルである「iPhone 12」の上に、“プロ用”のカテゴリーを設け、「iPhone 12 Pro」やその大画面版にあたる「iPhone 12 Pro Max」を用意したのは2019年と同じ。一方で、2020年は、iPhone 12の下によりサイズの小さな「iPhone 12 mini」も新たに投入し、全4モデル構成になった。
iPhone 12シリーズは、「iPhone X」の登場以降、初めてベースのデザインを大きく変えたフルモデルチェンジの端末になる。特に大きなトピックが、5Gへの対応だ。AppleのCEO、ティム・クック氏が「新しい時代のiPhoneの幕開け」と語っていたことが、その期待感の大きさを表している。イベントに登壇した米キャリアVerizonのCEO、ハンス・ベストベリ氏が「これで5Gの全てのピースがそろった」と語ったように、業界では5Gの普及を加速させるとの見方も強い。
ついに登場した5G対応iPhone、垂直統合型のモノ作りを生かす
事前の予想では見方が分かれていたがiPhone 12シリーズの5G対応状況だが、ふたを開けてみると、機種間に通信方式の差はなかった。コンパクトなiPhone 12 miniも含む全機種が5Gをサポート。日本版は、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が利用するSub-6の周波数にフル対応する。米国版のみ、全機種でミリ波を利用できるのも大きなサプライズだったといえる。
もともと、Appleは5Gに対応するため、モデムの製造をIntelに依頼していた。スマートフォン向けプロセッサで高いシェアを誇るQualcommとは、ライセンス料などを巡り、法廷闘争を繰り広げていたからだ。ところが、Intelは5Gモデムの開発に後れを取り、iPhoneへの搭載が難航していた。結果として、AppleはQualcommとの和解を選びつつ、Intelのスマートフォン向けモデム事業を買収。iPhone 12シリーズからの5Gモデムは、Qualcommが供給する運びとなった。
イベントでも語られていたように、Appleの強みは、端末の製造からソフトウェアまでをシームレスに統合できるところにある。垂直統合のビジネスモデルと言い換えることも可能だ。また、5G対応にあたっては、世界各国のキャリアとの協業も強化しつつ、「世界で最も多い5Gのバンドに対応した」(ワイヤレステクノロジー&エコシステム担当上級副社長 アルン・マシアス氏)。単にモデムを搭載しただけでなく、iOSのフレームワークを最適化することで、高速化を図っているのが特徴だ。
iOSそのものを5Gに最適化した結果、動画のストリーミングやFaceTimeを5G接続時に高速化できる他、5Gのスピードが必要ないときに自動でLTEに接続を切り替え、バッテリーを節約する「スマートデータモード」にも対応。先に挙げたように、米国のみだが全機種でミリ波をサポートしたインパクトも大きい。ミリ波は、周波数が非常に高いことから、アンテナの実装などの難易度が一気に上がるからだ。
他社を見ると、比較的大型の端末だけがミリ波対応になっているケースも多い。例えば、サムスン電子はフラグシップモデルの大画面版「Galaxy S20+ 5G」や上位版の「Galaxy S20 Ultra 5G」はミリ波とSub-6の両対応なのに対し、ややサイズの小さな「Galaxy S20 5G」はSub-6のみ。米国では、ミリ波対応を必須にしているVerizon向けに、特別仕様の「Galaxy S20 5G UW」を発売している。5G端末では新参者になるAppleだが、この点では競合との差を一気に詰めたといえる。
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