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ドコモ、KDDI、ソフトバンクの年頭所感 激変する通信業界でどう攻める?

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの社長が2021年の年頭所感を発表した。生活環境が一変した2020年には、5Gの商用サービスや楽天モバイルの本格サービスがスタートした一方で、政府の強い要請によって各キャリアは料金値下げも敢行。こうした大きな動きの中、各キャリアはどのような戦略で2021年に通信サービスを展開していくのか。

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 2021年を迎え、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの社長が年頭所感を発表した。

 2020年は新型コロナウイルス感染症が日本全土で拡大し、モバイル業界ではショップが営業停止を余儀なくされたり、始まったばかりの5Gの契約が伸び悩んだりする影響はあったが、在宅での生活やリモートでの活動が増えたことで、モバイルネットワークの重要性が改めて見直された1年でもあった。

 5Gの商用サービスや楽天モバイルの本格サービスがスタートした一方で、政府の強い要請によって3キャリアが料金値下げも敢行。NTT持株によるドコモの完全子会社化により、業界の構図も変わろうとしている。こうした大きな動きの中、各キャリアはどのような戦略で2021年に通信サービスを展開していくのか。

NTTドコモ:「新しいドコモ」に挑戦する

 ドコモは2020年12月に、吉澤和弘氏から井伊基之氏に社長が交代。井伊氏は2020年を「新時代の成長に向けたスタートの年」と位置付け、5Gのサービス開始を契機に新たな価値創造と社会課題解決を加速させたと振り返る。

 そして2021年は「『新しいドコモ』への挑戦の年」と位置付ける。NTTによる子会社化の際に宣言した通り、モバイルを中心とした事業から領域を拡大し、NTTグループとの連携強化によって変革を目指す。これは「今後5年、10年後を見据えてドコモが成長するための決断だ」とした。

井伊基之
ドコモの井伊基之社長

 具体的な注力分野は通信、スマートライフ、法人、国際、R&Dの5つ。通信事業では、2020年12月にahamoを発表、既存プランを値下げしたことにも触れつつ、「今後もユーザーのニーズに合った料金やサービスによって顧客基盤を強化していく」と宣言。ネットワークは、5G向け新周波数を用いた「瞬速5G」エリアを拡大し、「NTTコミュニケーションズと連携して移動と固定を融合させたネットワークの実現を目指す」とした。

 スマートライフ事業では、「dポイントとd払いを、毎日の生活の中でもっと使ってもらえるサービスになるよう進化させていく」と同氏。また、これら会員基盤から生まれるさまざまなデータを活用したマーケティング施策も拡大していく。2020年の「ドコモ口座」不正利用の反省を生かし、「徹底的にセキュリティ対策を施して失った信頼回復に取り組む」ことも約束。サービス面では5GやXRの映像配信やエンタメで新たなライフスタイルを提案するサービスやデバイスを投入していく。

 法人事業では、主にNTTコミュニケーションズと連携して、モバイルと固定を融合させたソリューション提供を目指す。2021年4月に提供開始する「ビジネスdアカウント」も活用して、企業のDXを支援していく。国際事業では、5GやIoTなどのソリューションの海外販売にもチャレンジ。R&Dでは、6GやIOWNといった次世代ネットワークで国際競争力を発揮できるよう、ドコモの無線技術とNTTグループの技術力を組み合わせて研究開発を推進する。

KDDI:5Gエリアを早急に拡大する

 KDDIの高橋誠社長は2020年について、2つの大きな出来事があったと振り返る。

 1つが新型コロナウイルス。「人と人との接触が制限される事態が続く中、さまざまな領域で急速なデジタルシフトを模索した1年だった」と同氏。もう1つが国内通信業界の激変。MNPでは楽天モバイルが参入して4社体制になり、コロナ禍で国民の生活防衛意識が高まる中、「携帯電話料金の低廉化や透明性に対する要請・期待がかつてなく強まっている」との所感も述べる。

高橋誠
KDDIの高橋誠社長

 そんな中で迎えた2021年、KDDIは「お客さま本位」の原点に立ち返ることに注力する。「お客さまに一番身近に感じてもらえる会社」を目指し、「当社の営みを細部に至るまでしっかりと振り返り、いま一度進むべき方向を見定め、真にお客さま本位の姿勢を貫く」とした。

 具体的には、政府の推進する「Society5.0」を5Gで加速させて日本経済の活性化を目指すビジョン「KDDI Accelerate5.0」を推進する。その第一歩として5Gの通信エリアを早急に拡大し、2021年3月には1万局、2022年3月末までには5万局の基地局を建設する見込み。

 サービス面では5Gならではの体験価値を実感してもらえるよう、OTTプレイヤーとの連携による動画配信サービスやau PAYの普及促進、法人ユーザーのリモートワーク支援などに取り組んでいく。

ソフトバンク:3ブランドで多様なニーズに応える

 ソフトバンクの宮内謙社長は、2020年は社会全体が大きな変化に迫られたが、ソフトバンクにとっても事業環境が大きく変化したと振り返る。同社はこのような状況下でもオンラインでのスマホ教室開催や、法人営業でもオンライン化を進めた結果、顧客とのコンタクト数が約5倍になったという。

宮内謙
ソフトバンクの宮内謙社長

 ニューノーマル時代にデジタル化を推進する上では5Gが必要不可欠になることから、これから5年間で約20万の基地局を整備し、国内ナンバーワンの5Gネットワーク構築を目指すと宣言。6Gも含めた次世代ネットワーク構築に向けて、今後10年間で2.2兆円を投資する。

 2021年3月には子会社のZホールディングスとLINEの経営統合を予定しており、「グループとして大きな飛躍を遂げる年」と意気込む。同時期に「SoftBank on LINE」をコンセプトとする新ブランドを立ち上げ、大容量のソフトバンク、中容量のY!mobile、オンライン専用のSoftBank on LINEという3つのブランドで多様なニーズに応えるとしている。

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