2021年のモバイル業界を占う 「携帯料金値下げ」と「5Gの拡充」はどこまで進む?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
料金値下げや5Gのスタートに沸いた2020年だが、どちらも道のりは半ばだ。ドコモのahamoや、ソフトバンクのSoftBank on LINEがスタートするのは3月で、大容量プランの値下げもまだ発表されただけの段階。一方で、5Gのエリアも、まだ十分とはいえない。エリアの広がりとともに、端末のバリエーションも今以上に広げる必要がある。
料金値下げや5Gのスタートに沸いた2020年だが、どちらも道のりは半ばだ。ドコモのahamoや、ソフトバンクのSoftBank on LINEがスタートするのは3月で、大容量プランの値下げもまだ発表されただけの段階。KDDIの対抗策も、現時点では打ち出されていない。第4のキャリアである楽天モバイルや、MNOとの料金差が縮まりつつあるMVNOがどう対抗するのかも、気になるポイントといえる。
一方で、5Gのエリアも、まだ十分とはいえない。2020年末から、KDDIが4Gの周波数転用を開始するなど、エリア拡大の兆しは見えるものの、ユーザーが本格的に活用できるようになるには、まだ時間がかかる。2021年には“真の5G”とも呼ばれるSA(スタンドアロン)方式の5Gが開始されるなど、今後も進化は続いていく。エリアの広がりとともに、端末のバリエーションも今以上に広げる必要がある。2021年は、2020年に積み残された課題を解決する年になるかもしれない。新年最初の連載では、そんな1年を展望していきたい。
4月ごろまで続く料金値下げ合戦、KDDIの対抗策にも注目
2020年は政府主導の料金値下げが大きな話題を呼んだ1年だったが、各社のサービスがスタートするのは2月ごろから。少なくとも4月ごろまでは、料金値下げや新料金プランの話題が尽きることはなさそうだ。時系列に見ていくと、現時点では、まずソフトバンクのY!mobileが2月に4G、5Gに両対応した新料金プランを開始することが判明している他、3月にはソフトバンクブランドにデータ容量無制限の「メリハリ無制限」を導入する。これに対し、ドコモは4月に「5Gギガホ」や「ギガホ」を改定し、「5Gギガホ プレミア」「ギガホ プレミア」を開始する。
3月には、ドコモとソフトバンクの2社が、オンラインに特化した新料金プラン、新ブランドをスタートさせる。ドコモのahamo、ソフトバンクのSoftBank on LINEは、いずれも料金は2980円(税別、以下同)で、データ容量は20GB。音声通話が5分間無料になる点も同じだ。どちらも原則として店舗では受け付けず、サポートもサイトやアプリを通して行う。ドコモはahamo用の専用アプリ、ソフトバンクはLINEという違いはあるが、店舗維持やサポートにかかるコストを圧縮して、低価格な中容量プランを提供するところが共通点といえる。
一方で、大手3社の中では、KDDIがahamo対抗策やデータ無制限プランの値下げなどを発表していない。現時点では、UQ mobileが20GBプランの「スマホプランV」を2月に導入する予定だが、料金は3980円で音声通話定額はオプションの扱いになっているため、別途料金がかかる。ahamoやSoftBank on LINEの水準には達していない上に、2月に導入されるY!mobileの「シンプルL」の3780円よりも割高になっている。KDDIもオンライン専用ブランドを導入することになりそうだが、UQ mobile側の料金プランも再整理する必要がありそうだ。
もともとKDDIは、オンラインに特化したMVNOを2021年春ごろに立ち上げる予定だった。シンガポールに拠点を構えるCircles.Lifeとの協業で、KDDI Digital Lifeを設立。eSIMを武器に、デジタルネイティブ世代と相性のいい新ブランドを展開する。ただ、ahamoやSoftBank on LINEは、どちらもMNOとしてドコモやソフトバンクが直接運営する体制を取る。MNOとして展開した方が、相互接続による帯域不足などを心配する必要がなく、混雑時のスループットが安定するからだ。KDDIだけがMVNOになると、少々分が悪くなってしまうため、この方針を変更する可能性もある。いずれにせよ3月以降、MNO間のオンラインでの競争は激化しそうだ。
ただ、小容量プランは3社とも手つかずのままだ。ドコモはahamo発表時に、小容量プランをMVNOとの協業含めて拡充していくとしていたが、現状の「ギガライト」とは別の枠組みで値下げに打って出る可能性もある。鍵になりそうなのが、NTTコミュニケーションズやNTTコムウェアとドコモの統合だ。NTTは、統合の「STEP1」として、2021年夏ごろに2社をドコモの子会社化する検討を進めている。MVNOのOCN モバイル ONEは、NTTレゾナントが中心になって運営しつつ、NTTコミュニケーションズがMVNEとしてその支援を行う形を検討しているようだ。
関連記事
- 政府主導で進んだ料金値下げ/静かな船出も普及の兆しを見せた5G――2020年のモバイル業界を総括
コロナ以上にモバイル業界を振り回したのが、政府主導の「官製値下げ」だ。2020年は1年を通じて料金が話題を集めた。3月にMNOが3社そろって5Gのサービスを開始したのも、モバイル業界にとって大きな転換点だった。AndroidのミドルレンジモデルやiPhone 12シリーズの登場を機に、普及の勢いに弾みをつけている。 - ドコモの激安「ahamo」で携帯業界に激震も、“料金プラン”扱いには疑問
ドコモは若者をメインターゲットに据えた「ahamo(アハモ)」を発表。料金は、20GBのデータ容量に5分間の通話定額が付いて月額2980円(税別)と、他社より低い水準の料金を打ち出した。同じ2980円の楽天モバイルよりも優位性は高い。一方、既存ドコモユーザーの移行は限定的とみられる。 - ソフトバンクは3ブランドでドコモとUQ mobileに対抗 新料金プランは「安く」「分かりやすい」
NTTドコモの料金値下げに即対抗したのはソフトバンクだった。同社はソフトバンクとY!mobile(Y!mobile)の双方を値下げすると同時に、LINEと共同運営の形を取るLINEモバイルを完全子会社化。第3のブランドとして、「SoftBank on LINE」をコンセプトにしたオンライン専用のブランドを立ち上げる。 - ドコモ新料金プランの狙いを解説 「5Gは容量無制限」「正価の安さ」が強み
ahamoの発表に続き、NTTドコモは、予告していた「ギガホ」の値下げに踏み切った。5G用の「5Gギガホ」と、4G用のギガホを共に値下げしつつ、データ容量も改定。合わせて、フィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換えたユーザーを対象したキャンペーンも、正式料金化した。それぞれの新料金の狙いを読み解いていきたい。 - 「エリア拡大」「ZERO宣言」でユーザー増も、課題山積の楽天モバイル 有料化までに解消できるか
楽天モバイルの申し込み件数が160万を突破し、徐々にユーザー数が拡大している。自社回線エリアの拡大と各種手数料を無料化した「ZERO宣言」がじわじわと効いている印象だ。エリアについても前倒しで進めているが、不安がゼロになったわけではない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.