2021年のモバイル業界を占う 「携帯料金値下げ」と「5Gの拡充」はどこまで進む?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
料金値下げや5Gのスタートに沸いた2020年だが、どちらも道のりは半ばだ。ドコモのahamoや、ソフトバンクのSoftBank on LINEがスタートするのは3月で、大容量プランの値下げもまだ発表されただけの段階。一方で、5Gのエリアも、まだ十分とはいえない。エリアの広がりとともに、端末のバリエーションも今以上に広げる必要がある。
5Gのエリア拡大が大きく進む1年、ミドルレンジのバリエーションも広がる
2020年は日本の5G元年だったが、2021年はエリアの拡大も進んでいきそうだ。KDDIは、2020年12月から、4G用に割り当てられていた3.5GHz帯の一部を5Gに転用すると発表した。3.5GHz帯は、5G用に新たに割り当てられた3.7GHz帯に近い周波数のため、これでエリアが一気に広がるわけではないが、今後は700MHz帯や1.7Ghz帯の5G化も計画している。特に700MHz帯は、いわゆる“プラチナバンド”と呼ばれる浸透率の高い周波数帯で、エリアの拡大に貢献する可能性が高い。
周波数転用を駆使することで、KDDIやソフトバンクは、2022年3月までに、人口カバー率90%を達成する予定。ここに向け、2021年中にエリアが急速に広がっていくことになる。各社とも、その過程でどの程度の人口カバー率になるのかは明かしていないが、KDDIの代表取締役社長 高橋誠氏は、2020年10月のインタビューで、東名阪の昼間人口カバー率で半分(50%)ぐらい」と語っていた。2022年3月を待たずとも、オフィス街や繁華街などを中心に、5Gエリアの広がりを体感できるようになりそうだ。
対するドコモは、4Gの周波数転用には消極的だが、出力を上げたマクロ局を展開。2022年3月末には55%の人口カバー率を実現する。KDDIやソフトバンクの90%と比べるとエリアは狭いが、この55%は全て5G用に割り当てられた新周波数を使う。そのため、5G接続時のスピードについては、2社を上回ることになる。マクロ局の展開で、面的なカバーも進んでいくようだ。ドコモが公開しているエリアマップでは、2021年3月末と2021年夏の予定を確認できるが、スポット的にしかつながらない12月27日時点と比べ、面としてエリアが広がることが分かる。
こうしたエリアの広がりに呼応するように、端末のバリエーションも広がる。2020年秋以降、「Snapdragon 765G」などを搭載するミドルレンジモデルのラインアップが拡大していたが、価格レンジはどちらかと言うと、ハイエンドモデルのそれに近く、7万円前後が主流だ。こうした中、間もなく登場する「AQUOS sense5G」は、5Gモデルを購入するためのハードルをさらに下げる可能性がある。同機の価格は4万円前後で、まさに“格安5Gスマホ”。日本市場で初めて「Snapdragon 690」を搭載したモデルで、5Gスマートフォンの普及に弾みをつける可能性がある。
日本市場ではシャープが先行した格好だが、こうした価格帯の端末は、他のメーカーからも登場するはずだ。さらに、Qualcommは1月5日に、Snapdragon 4シリーズで初の5G対応プロセッサとなるSnapdragon 480を発表。Snapdragon 480はエントリーモデル向けのプロセッサで、120Hzのリフレッシュレートや各1300万画素のトリプルカメラなどをサポート。これを搭載した端末は、2021年早期に発売されるという。2019年10月の電気通信事業法改正以降、ハイエンドモデルの売れ行きにブレーキがかかっているなか、いかにミドルレンジモデルのラインアップを厚くするか、各社の腕の見せ所になりそうだ。
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