子どもが持ってうれしくなるモノを Hameeがキッズ向けスマホを開発する理由(1/3 ページ)
見守り機能を備えた子ども向けのケータイやスマホは、SIMロックフリースマホやMVNOではまだ珍しい。そんな中、「iFace」などのスマートフォン向けケースでおなじみのHameeが、小学生をターゲットにしたスマートフォンを開発。OSにAndroid 9 Go Editionを採用していたり、組み込み型のチップSIMを採用していたりと、技術的にもチャレンジングな取り組みが多い。
見守り機能を備えた子ども向けのケータイやスマホは、大手3キャリアには“定番”としてそろっている。一方で、SIMロックフリースマートフォンやMVNOなどでは、まだまだ珍しい存在だ。そんな中、「プレスマホ」のコンセプトを掲げ、小学生をターゲットにしたスマートフォンが2021年2月下旬〜3月上旬に発売される。それが、Hameeの開発した「Hamic POCKET」だ。
Hameeは、「iFace」などのスマートフォン向けケースでおなじみのメーカー。携帯電話やスマートフォンの周辺機器は、早くから手掛けていた一方で、スマートフォンそのものの開発は初になる。メーカーが独自に販売するモデルだが、いわゆるSIMロックフリー端末ではなく、IIJの通信を組み込んだ形で出荷。端末と通信、さらにサービスを一体にしたビジネスモデルを採用する。本体価格は1万5000円(税別、以下同)で、月額料金は1GBのデータ容量付きで1000円。
技術的にも、OSにAndroid 9 Go Editionを採用していたり、組み込み型のチップSIMを採用していたりと、チャレンジングな取り組みが多く、注目しておきたい製品の1つだ。では、なぜ周辺機器を開発していたHameeが、小学生向けのHamic POCKETを開発したのか。同モデルを企画した経緯や、開発の背景などを、Hamic事業のプロジェクトマネージャー藤澤利之氏と、同事業のアンバサダー河合成樹氏にうかがった。
キャリアとケンカしても、後発では勝てない
―― Hameeは、スマートフォン向けのアクセサリーや、ECなどが主力事業です。なぜ、スマートフォン、それも子ども向けの端末を手掛けようと思ったのでしょうか。
藤澤氏 スマートフォンという問いかけですが、実は私たちはスマートフォンを作っているつもりはありません。サービスを提供したいというところから始まっているからです。Hamicとは「Happy Mobile IoT Communication」の略で、コミュニケーションを通じて幸せにつながるような形でIoT機器を使っていただくというのが名前の由来です。どうやってHappy Mobileにするか。その1つとして、社長に自分の子どもが生まれ、子どもたちを見ている中で、彼らを見守りながらサービスができないかと考えたところが出発点です。Hamic POCKETは、その手段としてできたものです。
Hamic POCKETは、スマートフォンを使う前に、子どもたちがインターネットの世界に慣れるためのものです。インターネットを教えることができ、かつ親が見守っている中で提供できるサービスになります。その手段として、スマートフォンの形になっています。それを、安く、早く作るためにAndroidが選択されました。安く作るためには、ハードウェアのリソースを絞らなければならず、その結果としてAndroid 9 Goが選択されています。
―― 子ども向けの端末という意味だと、キャリアにも多くのモデルがあります。独自にやろうと思った理由や勝算を教えてください。
藤澤氏 そこは、最初に議論しました。キャリアとケンカしても、後発では勝てないですから(笑)。彼らと競争できるところもあります。キャリアのサービスは、どうしても縦割りになってしまうからです。例えば親がD社を使っていると、D社のキッズケータイだと安くなりますが、他のキャリアだと使えなかったり、高くなったりします。MVNOが出て、格安SIMを使う人が増えている中、子ども向けだけをなぜキャリアのキッズケータイにするのか。そこはぶつかっていけるところです。私たちは3キャリアのSIMカードではなく、IIJの回線を使っています。そこは競争力があるところです。
子どもは子ども用の携帯電話が欲しいわけじゃない
―― 子どものネットリテラシー形成を主眼に置いているところも、キャリアの子ども向け端末と同じようで違うところかと思います。
藤澤氏 親が見守りながら、子どものネットリテラシーを上げていくことをターゲットにしています。親が見守りに介在するというイメージですね。例えば友達を増やすにしても、親が見て「彼なら大丈夫」という形で承認する仕組みにしています。親の目が届くところでネットワークを形成できるのは、違うところです。当然、GPSは付いていますし、位置情報も取れます。いざというときには、SOSアラームを引っ張って鳴らすこともできます。
違いはもう1つあって、子どもは、持ってうれしくなるようなものでないと、使ってくれません。実は、私は30年以上、携帯ビジネスでモノ作りをしてきてHameeに合流しましたが、そこでも子ども向けの携帯電話を作ってくれと言われたことがあります。大人の考える子ども向けは、やはり「子ども子どもしたもの」になってしまいます。そうではなく、子どもは大人の使っている携帯が欲しい。デザインだけでなく、機能も含めて子ども向けにシュリンクして、そこに見守りをつけたところにプレスマホの意義があります。
Androidを使い、Google Playを入れた理由もそこにあります。子どもが楽しめなければ、使ってもらえないからです。使ってもらってこそ、安心して見守りもできます。
―― Google Playには、子ども向けにアウトなアプリも多いと思います。この点はどう管理するのでしょうか。
藤澤氏 2つ手段があります。1つは(Androidの)ファミリーリンクで、13歳以下の子どもだと、年齢に合わせたアプリやコンテンツしかダウンロードできないようになります。もう1つ、その範ちゅうのアプリであっても、親が認めないとインストールできない機能があります。それがあると、親が子どもとちゃんとコミュニケーションを取り、面倒を見ます。ダウンロードできないから何とかしてほしいというのも、1つのコミュニケーションです。そういったものを、家庭の中で持っていただければ、うまく行くようになります。
―― 子どもが持ちたいという意味では、本体のデザインがiFaceに近いのも、大人が使っているスマートフォンに見えることを狙ったのでしょうか。
藤澤氏 近いというか、そのままですね(笑)。子どもは子ども用の携帯電話が欲しいのではなく、親と同じようなものを持ちたい。であれば、親と同じようなケースを提供した方がいい。ポシェットみたいなものを出すのは違うところですが、持ってかわいいと思い、気に入ってもらえるようなデザインにしています。子ども向けは子ども向けですが、子どもが欲しがる方向性でモノ作りをしています。
河合氏 補足すると、最近ではママがiFaceを持っていることも多く、ファッション的な側面で持たせたいと思うこともあるようです。リンクコーデのように、親子でそろえて使うこともできます。
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