必要としている人は確実にいる 無理やり売りつけることはない――携帯ショップの現役店員に聞く「オプション品販売」:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/3 ページ)
携帯電話ショップでは、携帯電話本体だけではなくオプション品やセキュリティソフトウェアも販売しています。しかし、SNSそれに伴うトラブルも散見されます。店頭スタッフにとって、オプション品の販売はどのような位置付けなのでしょうか。話を聞いてみました。
必要な人がいる 無理やり売ることはない
携帯電話ショップにおけるオプション品の販売を巡っては、SNSにおいて「使い方を考えたら必要ない」「価格が適正ではない(高すぎる)」といった意見を散見します。「自分に必要かどうか判断できない人を狙って売りつけているのではないか」と疑いの目を向ける人すらいます。
このような声について、店舗スタッフはどう思っているのでしょうか。話を聞いてみました。
SNSでよく批判を見かける、ショップにおけるmicroSDの販売については言いたいことがたくさんあります。
microSDメモリーカードは、Androidスマホ同士の機種変更であれば、一部の機種を除いてデータ移行などにも利用できます。データの移行後は、写真の保存先としても活用できます。“詳しい人”は「クラウドサービスでバックアップや同期が行える」と言いますが、ご自宅にWi-Fi(無線LAN)がないお客さまも少なからずいます。「だったら容量無制限のプランを」と言いたくなるかもしれませんが、節約目的で段階制のプランを契約しているお客さまもいらっしゃいます。
もちろん、自宅にWi-Fiのあるお客さま、あるいは容量無制限プランを契約しているお客さまには「クラウドサービスでデータの保存やバックアップができますよ」と提案します。しかし、Wi-Fiの整備やプラン変更にはそれなりにコストが掛かることもあり、このような提案に抵抗感を覚えるお客さまもいらっしゃいます。microSDを買って頂いた方が、トータルコストでは有利になるケースもあるのです。
「キャリアショップで販売されるmicroSDは価格が高すぎる」という指摘もあります。確かに、Amazonなどで販売されている「並行輸入品」と比べると高すぎることは間違いありません。しかし、大手量販店で売っている国内の正規販売品と比べると、価格の差は言われるほどにはありません。容量が大きくなるほど、価格差は小さくなる傾向にあります。
「オプション品を分割払いで売るのはどうなんだ?」という人もいらっしゃいますが、「容量の大きいmicroSDが欲しいけれど、一括払いで購入するのは厳しい」というお客さまも、一定数いらっしゃいます。お客さまの選択肢を増やす観点で、分割払いのオプションはそれなりに有効なのです。
お客さまによっては、クラウドサービスを使いこなせない人もいらっしゃいます。「それならスマホを勧めるな」と言うかもしれませんが、スマホを前提としたコミュニケーションサービスが増えている現状を踏まえると、ケータイ(フィーチャーフォン)を勧めることは徐々に難しくなっています。
microSDをお勧めすることも、お勧めしないことも、お客さまのメリットを考えて判断しています。このことは、もっと知られてほしいです。
microSDメモリーカードをショップで販売すること、それを分割払いで販売することには批判も少なからずあります。しかし、このスタッフが話す通り、ユーザー側にも一定のニーズがあります。ユーザーが要否を自ら判断できることが前提ではありますが、店頭スタッフがニーズを踏まえた提案をすることは、ユーザーが現在、あるいは将来抱えるであろう不満を取り除く上で重要な行動でもあります。
「ユーザーのことを考えた上で示した提案まで批判されてしまったら……」という思いが、このコメントからはにじみ出てきているような気がします。
KDDIが「au +1 collection」の1つとして取りそろえている512GBのmicroSDXCメモリーカード(画像)の税込み直販価格は4万3780円です。それに対して、ベースモデルである「SanDisk Extreme microSDXC」の512GBモデルの国内正規品の税込み実売価格は4万円弱です
「自分に必要かどうか判断できない人を狙って売りつけている」という指摘、とりわけ高齢ユーザーに対するオプション品の販売に対する批判について、店頭スタッフはどう考えているのでしょうか。先ほどのスタッフに続けて聞いてみました。
高齢者など、契約への理解がどうしても難しいお客さまについては、ご家族を同伴して再度来店するようにお願いをしています。それがどうしても難しい場合には、契約手続きを確定する直前に、ご家族に電話を差し上げて最終確認するようにしています。大手キャリアも高齢ユーザーの契約行為については注意を強く喚起していて、たまに業務連絡(指導)も入ります。
お客さまを選ぶようなお願いとなるので大変心苦しいのですが、重要事項説明の説明を聞いている際の様子を拝見して、高齢の方に限らず、リスクを覚えたお客さまには、高額なオプション品をお勧めしないようにもしています。
別の店頭スタッフからは、このような話もありました。
法令上の定めもあるので、以前と比べると携帯電話の契約や購入に際して説明すべき事項は増えました。「事前説明の徹底」を求められていることもあり、「プラン変更」や「機種変更」といった比較的簡単な手続きであっても、時間はどうしてもかかってしまいます。なるべく一発で理解してもらえるように工夫を凝らしています。
とはいえ、聞くべき説明は多い上に長いので、お客さまは当然疲れてしまいます。お客さまの時間を余計に取ってしまうことにもなるので、オプション品を勧めるのはやめておこうと判断することも少なからずあります。
オプション品をだまして売っているかのように言われるのは、率直にいって心外です。
このように、「クレームを言いそうなお客さま」に対して、自ら予防線を引いて対応するスタッフもいます。
こんな声もあります。
多くのお客さまは、自宅の近くにあるキャリアショップなり量販店なりで携帯電話を購入されます。幾つもある販売店から選んでもらったからには、店員である私たちが誠意のある対応を行うことは当然です。
普通に考えると、地元のお客さまに嫌われるようなことをすれば、それが“評判”となります。それが原因となり、店舗やコーナーが“消滅”することも考えられます。
結果的に、お客さまへの説明不足となるケースはあるとは思いますが、だます意図をもって、不必要なお客さまにオプションを「売りつける」ことは、どの販売店もスタッフもしていないはずです。
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