必要としている人は確実にいる 無理やり売りつけることはない――携帯ショップの現役店員に聞く「オプション品販売」:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(3/3 ページ)
携帯電話ショップでは、携帯電話本体だけではなくオプション品やセキュリティソフトウェアも販売しています。しかし、SNSそれに伴うトラブルも散見されます。店頭スタッフにとって、オプション品の販売はどのような位置付けなのでしょうか。話を聞いてみました。
「詳しい人」のアドバイスがトラブルにつながる?
先のスタッフのコメントにもある通り、悪評が立つことを承知でオプションサービスやオプション品を無理に勧めるスタッフ(あるいは販売店)が存在するとは、にわかには考えられません。いくらノルマがあるとはいえ、後々のトラブルにつながるような売り方をするものなのでしょうか……?
あくまでも筆者の経験を踏まえた私見ですが、この手のトラブルはスマホに詳しくないユーザーが、身近にいる「詳しい人」の意見を聞いた結果発生するケースも少なからずあります。ちょっと分かりづらいと思うので、実話を元にしたフィクションを見た上で、どういうことなのか解説します。
スマホに詳しくない「A子」さんは、あるキャリアショップでスマホを買うことにしました。A子さんから話を聞いたショップスタッフは、彼女のスキルからセキュリティソフトを使うことが適当であると判断し、セキュリティソフトをセットで購入することを提案。A子さんも納得し、スマホとセットにして分割払いで購入しました。
しかし、A子さんはセキュリティソフトをうまくセットアップできず、購入したショップで使い方を相談しようと考えました。しかし、相談しようにも来店予約の空き枠がないこと、予約なしで行くと数時間待たされる可能性もあること、何より日中にショップに行くことが困難で……。
そこで、A子さんはスマホに詳しい職場の同僚の「B男」さんに相談してみることにしました。Bさんは、スマホやPCといったIT機器に対する知識が豊富です。「より安いもの」「より便利なもの」に対するアンテナもあります。A子さんが買ったセキュリティソフトとその価格を聞いて「機能の割に高すぎる」「無料で同じことができるアプリもある」と考え、そのことをそのまま伝えました。
それを聞いたA子さんはショックを受け、買ったキャリアショップに対して返金を求めることになりました――。
B男さんのようにスマホやPCに詳しい人は、特に家電量販店で販売されている商品に対して「割高感」を覚える傾向にあります。そのような人は、最近であればWeb通販などで販売されている「並行輸入品」に手を出したり、無料で使えるアプリやサービスを駆使したりしています。
しかし、安いものには理由があります。並行輸入品であれば、一部を除いて国内におけるサポートは一切受けられません。無料のアプリやサービスについては、無料で使える代わりに広告表示が必要だったり、広告の表示をやめるには何らかの課金が必要だったり、有料版と比べると使える機能が少なかったりします。安い(無料)の選択肢は、ある程度の「トレードオフ」を受け入れざるを得ません。
にもかかわらず、B男さんのようなITに詳しい人は、相談相手(話し相手)が自分と同等のトレードオフを受け入れられるという前提に立ってしまうきらいがあります(筆者自身も気を付けないとそうなってしまいます……)。故に、A子さんのスキルを考えると必要(あった方が無難)なソフトであったとしても「高すぎる」といったような指摘をしてしまいがちです。
A子さんからしてみれば、ショップの店員さんよりも同僚のB男さんの言うことの方が“信頼”できるでしょう。ショップで買ったときは納得して買ったにもかかわらず、B男さんの言うことをうのみにしてしまい、結果として返金を求めることにしたのだと思われます。
ユーザーのスキルを見極めて適切なアドバイスをすることは、思っている以上に難しいことです。スマホに詳しくない知人から「ショップで○○をセットで買った」という話を聞いた場合、あるいは分割払いでオプション品を購入した形跡があった場合は、まずショップスタッフからどういう提案を受けて購入に至ったのか聞いた上で、そのオプション品が“自分”ではなく“購入者”にとって適切なものであるかを熟慮した上でアドバイスをするように心掛けたいです。
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