ドコモ、KDDI、ソフトバンクの決算を振り返る 非通信分野が収益回復のカギに:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの2020年度第3四半期決算が出そろった。コロナ禍で企業のデジタルシフトが進んだこともあり、非通信領域が各社とも好調だ。金融・決済関連のサービスも、順調に拡大している。ただし非通信分野の攻め方は3社3様だ。
料金値下げで伸びるユーザー数、ARPUの落ち込みをカバーできるか
新料金プランは値下げになる一方で、トータルで見ると、必ずしも通信料収入の減少につながるとは限らない。値下げによって、新規ユーザーを獲得でき、契約者数全体が増えるからだ。値下げ自体はこれからだが、その効果は既に一部出始めている。
例えば、ドコモは2020年12月にMNPが転入超過に転じて、1月もその傾向が続いているという。ドコモの井伊氏は「ahamoという商材ができたことで、流出がストップしている。ahamoは現在、事前エントリーを受け付けているが、2月5日時点で100万件を突破。他社が対抗プランを発表した後も「順調に伸びている」(同)という。
同時に、ahamo開始前からユーザー数も増加しているようだ。井伊氏は「12月に営業的な手を打ち、ドコモショップ、量販店での販売を強化した」と理由を語る。こうしたコメントからは、ahamoの宣伝効果の高さがうかがえる。料金プラン変更には手数料などは掛からないため、開始前にドコモショップや家電量販店に行き、事前にドコモの回線を契約するユーザーが増えているというわけだ。
同様に、KDDIもpovoを発表したことで、「非常にポジティブな動きを見せている」(高橋氏)という。高橋氏は、「昨年末に発表を1月と申し上げてから、若干流れが戻ってきた。1月13日に明確に発表して以降、モメンタムが戻ってきた」と語る。ドコモやKDDIと理由は少々異なるが、ソフトバンクも「1月の数字を見たら、新規契約者が前年対比で5割アップしている」(宮内氏)と好調だ。「学割が爆発し、新規ユーザーが増えている」(同)というのがその理由だという。
一方で、「値下げをすることになるので、来期は業績影響が少なからずある」(高橋氏)というのも、3社共通の課題だ。宮内氏は「一番大事なのは、ARPU(1利用者からの平均収入)×スマートフォン契約数の掛け算」と語るが、ARPUの低下を、契約者数の伸びで補いきれなければ、通信料収入は減少してしまう。大手3社とも、料金プランはほぼ横並びに近いため、流動性は低くなる。通信料収入自体を上げるには、より上位のプランを契約してもらえるような取り組みが必要になりそうだ。
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