汎用PCで5G基地局を構築 docomo Open House 2021で語られた、ローカル5Gの可能性:docomo Open House 2021(1/3 ページ)
ドコモの最新技術とサービスに関する数多くの展示、講演がオンラインで配信された「docomo Open House 2021」で東京大学大学院 情報学環・学際情報学府の教授で、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF) ネットワーク委員会委員長なども務める中尾彰宏氏が「Beyond 5G/6Gに向けた研究開発」というタイトルで講演した。その内容についてご紹介しよう。
ドコモの最新技術とサービスに関する数多くの展示、講演がオンラインで配信された「docomo Open House 2021」(2月4日から2月7日開催)。東京大学大学院 情報学環・学際情報学府の教授で、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF) ネットワーク委員会委員長なども務める中尾彰宏氏が「Beyond 5G/6Gに向けた研究開発」というタイトルで講演し、同氏の研究内容を交えながらローカル5Gの現状と次の6Gに向けた取り組みを紹介した。
広がりつつあるローカル5G
5Gと同時に、一般の事業者や自治体、大学などが、自分たちの建物や敷地内で構築する5Gシステム「ローカル5G」も広がりつつある。2019年12月に総務省から「ローカル5G導入に関するガイドライン」が公表されて制度化。建設現場や農場などで5Gを自営網として使う活用例が出てきている。
中尾氏は、こうした流れを「情報通信の民主化」と呼んでいる。情報通信の民主化により、一般事業者、自治体、大学などが最新の情報通信である5Gと6Gの運用主体となり、彼らのユースケースから革新が生まれることを期待。「一般事業者でも免許制の電波利用が可能になったことに大きな意義がある」と評価している。
その一方で、「大手通信事業者が持つ技術を、普遍的なサービスに転換する必要がある」とも中尾氏は考えており、一般事業者と通信事業者の連携の重要性を説く。例えば、東京大学はNTTドコモと、臨場感ある遠隔教育通信を6Gに向けて広域に展開する「広域臨場感通信」に進化させる研究開発を共同で行っている。5Gの超大容量、超低遅延通信をドコモの「超カバレッジ」によって、誰でもどこでも使えるサービスに進化させる取り組みが必要だと語った。
また、東京大学と東京都、NTT東日本は、産学官の連携でローカル5G推進を目指す連携協定を2019年10月に締結。翌2020年には都立産業技術センター内に、ローカル5Gの実証拠点である「DX推進センター」を開設した。都内の中小企業が利用でき、研究成果の報道発表も行っている。
コストをはじめとするローカル5Gの課題
ローカル5Gを普及させていこうとしている現在、最も懸念されているのがコストの問題だ。中尾氏が委員長を務めるローカル5Gの普及研究会でも、「一番多く質問されるのは、コストがどれくらいかかるか」だという。
コストは機器の低廉化やオープン化とも深く関わってくる。さらにコストだけでなく、カスタマイズの要望に応えられる柔軟性、運用の容易化、大手キャリアが提供する公衆5Gと組み合わせることによるセキュリティの高度化、有線ネットワークを含めた展開など、ローカル5Gにはまだ多くの解決すべき課題がある。
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