「Xperia PRO」は約25万円の価値あり! 5Gミリ波通信からHDMIライブ配信まで徹底検証(4/4 ページ)
ソニーモバイルから、映像制作者向けのAndroidスマートフォン「Xperia PRO」が発売された。この記事では最初にXperia PROの概要を紹介し、後半で5Gミリ波の速度測定や、“Pro”らしいHDMI入力やライブ配信用途を紹介する。
HDMI接続したカメラ映像をYouTubeライブで配信
一番Xperia PROらしい機能が、HDMI端子に接続したムービーカメラでのライブ配信だ。ただし、利用にはちょっとした知識が必要となる。
「YouTubeライブ」や「ニコニコ生放送」「ツイキャス」など、各種動画配信サービスやクラウドに高画質な映像を配信する場合、Google Playストアで公開されているRTMP(ライブ配信プロトコル)に対応したライブ配信アプリが必要だ。ライブ配信各社の標準アプリではXperia PROのHDMI入力や細かい設定を利用できないことが多い。特にYouTubeはチャンネル登録数1000人を超えないと標準アプリのライブ配信を利用できないので、お試し配信にはRTMP対応のライブ配信アプリが必須となる。
Xperia PROのHDMI入力を詳しく説明すると、Androidアプリにとっては複数搭載されているカメラの1つという扱いになっている。このため、全カメラを扱えるアプリでしか
HDMI入力を利用できない。例えば、「LINE」や「Zoom」のビデオ通話は標準カメラとインカメラしか選べずHDMI入力を利用できない。
その上で、動作を確認できたRTMP対応のライブ配信アプリが「Streamlabs」や「Larix Broadcaster」「Astra Streaming」などだ。映像入力は前述の通り4K 60pまで可能で音声入力にも対応しているが、実際の配信サイズやフレームレートはアプリやライブ配信サービス次第となる。また、アプリ側もXperia PROのHDMI入力を想定していないからか、表示の上下の向きが固定されるなどの挙動が見られた。今後の双方の対応に期待したい。
この中だと、配信に慣れた人ならLarix BroadcasterがHDMI入力の指定をしやすく、音声のレベルメーターもあり素直に利用できた。初心者がYouTubeライブを配信するならログインが楽なStreamlabsで、VideoSetteings→Switch beeteen all cameraをオンにして使うことをお勧めする。
外出先でのモバイルライブ配信だが、現状大半の通信エリアは4G止まりだ。期待できる上り速度は50〜10Mbpsあたりなので、コマ落ちを極力減らした安定配信を実現するにはビットレート10〜5Mbpsあたりの設定が無難だ。これだけのビットレートがあれば、フルHD 1080pやHD 720pで見栄えのする映像を配信できる。ライブ配信時のバッテリー消費は1時間で23%だったので、単純計算で4時間ほど持つことになる。
この他、アプリによってはより深い活用もできる。より圧縮効率の高いHEVC(H.265)をSRTやHEVC over RTMPで配信する実験にも便利だ。宅内など同一ネットワーク内なら「NDI HX Camera」アプリを使い、PCのビデオミキサーアプリ「OBS」や仮想Webカメラへ簡単に映像を配信できる。外出先からVPN越しに配信できれば便利に使えそうだ。
映像機器としては薄型軽量かつ高性能、比較対象のないモデル
映像機器としてXperia PROに注目している人向けに補足すると、製品としての立ち位置は下記のようになる。バッテリー内蔵の薄型軽量ボディーに、マスターモニターに沿った品質の外部モニターと、自由にカスタムできるライブ配信用エンコーダー、最新の5G/4G通信モジュールを一体化した製品だ。高性能な上に、従来の機器と少し離れたジャンルの製品なので、直接競合する機器は他にない。
だが、映像機器としての不満点もいくつかある。純正リグ(補助機材を取り付けるための機器)がなくmicroHDMIケーブルを本体に固定できないので、端子の破損や接触不良の不安がつきまとう。汎用(はんよう)のスマホ向けリグを介して固定することもできるが、可能なら樹脂製でもいいので専用のリグが欲しい。また、RTMPでのライブ配信が他社アプリ頼りなのも不満だ。HDMIだけでなく、内蔵トリプルカメラや、電話通話・IP通話を活用できるRTMP対応ライブ配信アプリが欲しかった。
プロユースなら実売25万円も妥当
Xperia PROの魅力は、1台で「5Gミリ波に対応」「マスターモニターに沿った高性能かつ薄型軽量の外部モニター」「HDMIにビデオカメラを接続して即ライブ配信」の全てを利用できる点だ。携帯型の映像機器としてここまで薄型軽量で高性能な機器は他にない。全ての機能を必要とする人なら、実売価格25万円前後も納得できる。要素を分ければある程度は似た機能を安く実現できるが、そうすると業務機としての可用性や携帯性、品質を損なうことになる。
予算に余裕のある業務用途で小型のマスターモニターや、屋外にて最小構成でライブ配信が必要になった場合、Xperia PROが“一番いい装備”なのは間違いない。また、5Gを活用した映像伝送や中継システムの実験にも活用しやすい機器といえる。
Xperia PROをお勧めできるユーザー層はユーチューバーや、映像制作者、報道関係者だ。1台持っておけば国内外どこでも、手持ちのムービーカメラやデジタルカメラで高画質配信や、撮影した写真や動画の配信がすぐにできる。もちろん、5Gミリ波やSub-6のスピードテスト好きのスマホマニアが購入するのもアリだろう。スタジオ撮影のお供や、小型のディレクターズカメラやカスタム前提のシネマカメラと組み合わせて利用したい。
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