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人口カバー率99.9%以上を目指す 矢澤俊介副社長に聞く、楽天モバイルのエリア戦略(1/2 ページ)

夏には4Gの人口カバー率96%を達成する見込みの楽天モバイル。人口カバー率96%達成後もエリア拡大は続け、99%超を目指していくという。4Gだけでなく、5Gのエリアも徐々に拡大する方針だ。そんな楽天モバイルのエリア戦略を、矢澤俊介副社長に聞いた。

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 楽天モバイルのエリア拡大が、急ピッチで進められている。夏には4Gの人口カバー率96%を達成する見込み。無料サポータープログラムのときから続いていたauのローミングエリアは、順次縮小しているところだ。人口カバー率96%達成後もエリア拡大は続け、99%超を目指していくという。同時に、4Gだけでなく、5Gのエリアも徐々に拡大する方針。衛星との直接通信で、普段人のいない場所までエリア化する「スペースモバイル計画」も、2023年度をめどにサービスインの準備を進めている。

 急ピッチでエリアを広げる楽天モバイルだが、その基地局設置を指揮しているのが、2020年10月に同社の副社長に就任した矢澤俊介氏だ。同氏は、楽天市場の事業営業統括や執行役員を歴任。2019年11月には、畑違いともいえそうな楽天モバイルに参画し、基地局建設を担当した。そんな矢澤氏に、楽天モバイルのエリアの現状と今後の展開を聞いた。

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楽天モバイル 代表取締役副社長の矢澤俊介氏(写真提供:楽天モバイル)

人口カバー率96%に向けて順調に進んでいる

―― まず、夏の人口カバー率96%ですが、達成の見込みはいかがでしょうか。

矢澤氏 順調に進んでいます。用地確定、用地確保をしてから建設が始まり、回線をつなげて電波を発射するというのが一連の流れですが、用地確保や建設のめどがつき、96%は射程圏内に入っています。建設やバックホールの準備には時間がかかりますが、おおむね巡航速度で夏までには96%を達成できます。

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約5年前倒しで、2021年夏頃に4Gで人口カバー率96%を達成する見込み

―― 現時点では、どの程度なのでしょうか。

矢澤氏 3月末でちょうど80%ぐらいですね。

―― 当初から見ると、人口カバー率の拡大ペースが上がっている印象があります。何をすると、ここまでペースが上がるのでしょうか。

矢澤氏 工事会社に多大なるご協力をいただいています。通常であれば、通建業者(基地局の工事を行う会社のこと)にお願いし、通信会社はそこに入り込まず、完成した後に引き継ぎます。これに対し、われわれはプロセスにまでかなり入らせていただきました。参入したときには、通建業者にお任せしていましたが、楽天モバイルが第4のキャリアとして参入した意味や、日本で成功したら、このモデルを海外に持っていきたいことなどを丁寧に説明しました。単に基地局を建てるのではなく、通信業界を変えるための一歩だという話を丁寧にして、進捗(しんちょく)管理を一緒にやらせていただいただ。

 逆に通建業者からも、それならこうした方がいいというアドバイスをもらうことができ、改善につながっています。また、楽天社員もかなり頑張ってくれています。数百人単位の楽天市場や楽天カードで働いていた人たちが、社内異動で基地局の建設に来てくれました。使命感を持って頑張ってくれています。

地上局とスペースモバイルでカバー率99.9%以上を目指す

―― 夏の96%以降の予定が発表されていませんが、ここで打ち止めというわけではないですよね。

矢澤氏 楽天モバイルは、日本で一番の携帯電話事業者になろうと思っています。ですから、日本で一番のカバレッジと使いやすさを目指しています。96%は1つのマイルストーンではありますが、99.999%になるまでを目指していきたいと考えています。実現する時期は2つあります。1つが地上局で、そちらの基地局は夏に96%を達成した後、さらに加速させていきます。もう1つがスペースモバイルで、こちらも今年(2021年)の夏から順次実験が始まり、2023年度をめどにサービスインする計画で準備しています。ただし、(エリアの拡大を)人工衛星に頼るわけではなく、地上局は地上局として、われわれの部隊が整備していきます。

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衛星から電波を飛ばす「スペースモバイル」を併用して99.9%以上のカバー率を目指す

―― スペースモバイルですが、1つの衛星に対して大量の端末がつながってしまう可能性があると思いますが、十分なスピードは出るのでしょうか。

矢澤氏 やはりキャパシティーには一定の限界がありますし、1つの衛星だけで日本全国をカバーできるわけでもありません。ただし、登山コースでもない、普通だったらつながらない山間部でも、カバーができるようになります。日本は国土の7割以上が山なので、既存のキャリアでも一部圏外の場所があります。そういう部分をスペースモバイルでやろうと思っています。台風で基地局が機能しなくなったときでも、人工衛星が出せます。逆に人が住んでいるような場所や、郊外のゴルフ場のような場所は、地上局でカバーしていきます。

―― なるほど。やはりどちらかというと、緊急時のためのものという色合いが濃いわけですね。キャパシティーの話でいうと、地上局の方はいかがでしょうか。ユーザーが増えてくると、エリアの広さだけでなく、密度も重要になってくると思います。

矢澤氏 東京23区、名古屋、大阪は先行して進んでいるので、面的なカバーは広がっています。400万弱のお申し込みをいただいている中で、シミュレーションだけでは分からなかった人が集中するところや、移動で通るところなどが分かってきました。そういったところは、都内も含め、順次基地局を増やしています。先ほど申し上げたように、楽天モバイルを(4キャリアで)一番にしたいと思っているので、容量やキャパシティーも担保しなければなりません。スループットが遅いと一番とはいえないので、ユーザー数を見ながら十分な容量にしていきます。

―― 地方を見ると、他社は鉄塔を立ててカバー範囲を広げています。楽天モバイルも、そういった形になるのでしょうか。

矢澤氏 楽天モバイルは、15mのコンクリート柱を中心にデザインしています。人があまり住んでいないところや、高層部、新幹線などは30m、40mの鉄塔タイプも使っていこうとは思っていますが、基本は15mのコンクリート柱です。最新の機材でやっている分、他社と比べても機材が少なくて済み、15mのポールで十分なところは多い。鋼材にもお金がかかるので、コンクリートポールを建てた方がスピードでも、コストでもメリットが出ます。

―― 基地局投資が膨らんでいますが、これはなぜでしょうか。

矢澤氏 当初決めた予算内でどんどんやっていましたが、想定より建設のスピードが上がってしまいました。償却をグッと圧縮したので、決算上は赤字が大きくなります。トータルの金額(が上がったの)は基地局の密度を増やすためですが、その範囲内でやっています。

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