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インタビュー

人口カバー率99.9%以上を目指す 矢澤俊介副社長に聞く、楽天モバイルのエリア戦略(2/2 ページ)

夏には4Gの人口カバー率96%を達成する見込みの楽天モバイル。人口カバー率96%達成後もエリア拡大は続け、99%超を目指していくという。4Gだけでなく、5Gのエリアも徐々に拡大する方針だ。そんな楽天モバイルのエリア戦略を、矢澤俊介副社長に聞いた。

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KDDIのローミングが切れるのと同時にエリアが拡大する

―― エリアが拡大すると、auローミングが打ち切られることになります。この影響はどの程度ありますか。

矢澤氏 KDDIとは何度もミーティングし、コミュニケーションを取らせていただきながら、どこをどうするかを話し合いながら決めていきました。KDDIのスケジュールになるので分からない部分はありますが、4月1日以降、自社エリアのカバレッジが進んだところは、徐々にローミングが終了します。4月中もかなり開局が進んでいるので、KDDIのローミングが切れるのと同時にエリアが拡大していくイメージですね。ただし、スイッチのタイミングで一部ご迷惑をおかけしてしまうユーザーがいるかもしれないので、そういったユーザーには適切にご連絡して、説明していきます。

楽天モバイル
auのローミングは東京都では一部を除いて終了しており、千葉県と神奈川県は2022年3月末に終了する予定

―― ローミングで使っている周波数帯(800MHz帯)と、楽天モバイルの自社回線の周波数帯(1.7GHz帯)は、屋内浸透などの周波数特性が異なります。ローミングから切り替わることで、屋内が圏外になってしまうといった心配はないのでしょうか。

矢澤氏 オフィスビルやショッピングモール、地下鉄など、さまざまな構造物がありますが、それに応じた屋内対策は逐次進めています。ただし、ビル内の対策はどうしても時間がかかります。そのため、東京23区でも引き続きKDDIからお借りしているところもありますが、順次建設が進んでいけばローミングは終了していきます。

 楽天モバイルにはAIチームがあり、置局の場所を提案してくれます。ここに置くとどのぐらいカバーできるというのを、普通は歩きながら見つけていくのですが、AIチームが活躍してくれるので助かっています。技術も上がり、ビル内にも建てるのがいいのか、外から電波を吹くのがいいのかといったノウハウもたまってきました。ローミングでエリアをお借りすれば、確かにカバレッジはよくなりますが、サービス面を考えると、やはり楽天のカバレッジを増やしていくことに尽きます。3278円で使い放題になるので、楽天エリアは広げていかなければなりません。

4Gの基地局に5Gの機材をつけるだけでカバーできる

―― 今までのお話は4Gのエリアについてでしたが、5Gに関してはいかがでしょうか。

矢澤氏 まずは4Gのカバーを優先して進めてきました。夏の96%は1つのマイルストーンで、まずはそれを実現させたい。ただし、先ほどお話しした15mのポールは、ほとんどの局が5Gの機材を併設できます。他社だと4Gと5Gで仕様が異なるため、新しく置局を進めていますが、われわれは96%をカバーする4Gの基地局に5Gの機材をつけるだけでカバレッジが作れてしまいます。夏以降は、5Gも並行して進めていこうと思っています。今年後半からは、ユーザー側にも5G対応の端末がどんどん広がっていきます。そのタイミングに合わせて、カバーを広げていければと考えています。

―― ただ、5Gに割り当てられている周波数だと、4G用の1.7GHz帯より飛距離が稼げないと思います。より密度は上げていく必要があるのではないでしょうか。

矢澤氏 確かに4Gとは届く距離が全然違います。4Gの基地局につけるのでエリアは広がりますが、5Gは4G以上に密度を濃くしなければいけないので、単独の設置も進めていきます。

【更新:2021年4月22日13時50分 「4Gのアンテナ」を「4Gの基地局」に修正しました。】

―― ちなみに、世田谷区の一部がミリ波でカバーされているのが話題になりましたが、あれは何か目的があるのでしょうか。

矢澤氏 世田谷周辺は楽天本社もあるので、まずはなるべく広い範囲でということでカバーエリアを作っていきました。

―― 他社の場合、4Gからの周波数転用が始まっていますが、楽天モバイルはいかがでしょうか。

矢澤氏 周波数の有効活用は議論していますが、基本的には(Sub-6やミリ波とは)別でと考えています。

基地局が建たなければビジネスも進まない

―― 矢澤さんは楽天モバイルで基地局建設を担当する前に、楽天市場を担当されていたと伺いました。ある意味、経歴としては異色だと思いますが、それがエリア拡大に生かせていたりするのでしょうか。

矢澤氏 全くの畑違いで、経験も知識も違うため、リセットして一からやらせていただいています。自分から立候補したわけでもないので(笑)。

―― えっ。志願したわけじゃなかったんですね(笑)。

矢澤氏 ある日、辞令が来ました。ただ、三木谷とも話しましたが、携帯電話事業は楽天グループの勝負になります。基地局が建たなければビジネスも進まないので、ある意味、(エリア拡大が)一番重要です。

 おっしゃるように、もともとはネット通販の担当で、楽天市場には5万社を超える出店事業者がいます。出店事業者の皆さまと膝を付き合わせたお付き合いが大事というのは、楽天のカルチャーです。同じように通建業者1社1社とも、「ぶっちゃけどう思いますか」という向き合い方をしてきましたが、それは通建業者からも驚かれました。普通だと発注主と受注側の立場になりますが、そのおかげで、上下ではなく、横並びの関係性ができたと思っています。

取材を終えて:数値に表れない“隠れ圏外”との戦いに

 急ピッチでエリア拡大を進めている楽天モバイルだが、夏の人口カバー率96%達成は現実味を帯びてきた。少なくとも屋外であれば、つながらない場所は少なくなりそうだ。一方で、携帯電話のエリアは99%以降のコンマ数%を上げていくのに、膨大な時間とコストがかかるといわれている。屋内対策などはその一例だ。こうした細かな評価の積み重ねで、つながる、つながらないの評判が作られていくため、人口カバー率96%を達成しても油断はできない。夏以降の楽天モバイルは、数値に表れない“隠れ圏外”との戦いになりそうだ。

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