新料金プランが好調も、値下げの影響をどうカバーする? 4キャリアの決算を振り返る:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの2020年度決算と、楽天の第1四半期決算が出そろい、新料金プラン導入後の状況が徐々に見えてきた。中でも、オンライン専用の料金プランは各社とも好調に推移していることがうかがえる。それに伴う減収影響も徐々に拡大していく見込みだが、非通信領域でカバーしていく。
非通信分野や法人事業で収益をカバーしつつ、反転攻勢を目指す
では、大手3社はこの減収や減益をどう補っていくのか。1つは、値下げによるユーザーの拡大だ。ARPUが減ってもユーザー数が増えれば、減収幅を抑えることができるからだ。ドコモの井伊氏は、「今までそのセグメント(中容量の料金プラン)がなかったがゆえに、他社に流出していたところが止まる。いったん流出した方が戻ってくる、プラスの効果もある」と語る。その意味で、同社の4月のMNPが転入超過になっていたのは、朗報といえる。
ユーザー数が拡大すれば、副次的な効果として「端末の販売のベースが増える」(同)。これも、売上高の拡大にはプラスに働く。ドコモの場合、中容量の料金プランがなかったため、「ギガホからのダウングレードと、ギガライトからのアップグレード、両方の動きが出て、最適な料金プランにリバランスする動きが起きている」(同)という。5Gの拡大などで、ユーザーのデータ利用量が増えれば、上位のプランにアップグレードする動きも徐々に増えてくるはずだ。
ただし、通信料収入の回復には時間がかかる。より短期的に効果が出ているのが、非通信分野だ。例えばドコモは、非通信の「スマートライフ領域」が大きく伸長しており、今期予想も営業収益1兆1400億円、営業利益2100億円と、通信事業の減益を補っている格好だ。KDDIも、非通信の「ライフデザイン領域」が成長。「お客さま還元をした分を、成長領域で伸ばしていく」(高橋氏)方針だ。
中でも、銀行や決済、クレジットカードなどの金融分野は、大手3社にとって重要度が高い。KDDIは、auじぶん銀行やauカブコム証券などを束ねたauフィナンシャルホールディングスが好調で、決済・金融取扱高は9兆円に達した。ドコモも、d払いやdカードの取扱高が7兆円まで急増。「決済を起点とした顧客接点の強化と、事業領域の拡大に向けた新たな金融サービス」(井伊氏)を立ち上げるため、三菱UFJと新たなデジタル金融サービスの開発に乗り出す。
ソフトバンクは、PayPayの流通取引総額が3.2兆円に拡大していることを初めて明かした。決済サービスでは、ソフトバンクペイメントサービスの取扱高も「大体4兆円ぐらいになり、今期も2桁代の成長は確実」(宮川氏)だという。一方で、同社が特に伸びているのは法人事業。ソフトバンクも「法人事業はソリューションが伸びているので、最低でも19%の増益。上方修正ができるぐらいの経営をやってみたい」(宮川氏)と強気だ。
ソリューションを含めた法人事業は、KDDIも注力している分野だ。KDDIはビジネスセグメントで「営業利益2桁の成長目指す」(高橋氏)。NTTの接待問題で待ったがかかり、スケジュールは「遅れる」(NTT澤田純社長)というが、ドコモもNTTコミュニケーションズ子会社で法人事業の強化を狙う。こうした収益構造の変化は、料金値下げ前から進んでいたものだが、そのスピードが加速していることがうかがえる。
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