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スマホカメラとデジタルカメラの融合 シャープが「AQUOS R6」で目指したもの(1/2 ページ)

シャープの「AQUOS R6」は、ライカとカメラを共同で開発し、1型という大きなセンサーを搭載しているのが大きな特徴だ。スマホカメラの在り方そのものを見直し、デジタルカメラを融合させたというAQUOS R6。シャープはカメラメーカーではないため、独自のノウハウを持つライカとの協業に至った。

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 シャープが5月17日に発表したフラグシップスマートフォン「AQUOS R6」は、ライカ(Leica)とカメラを共同で開発し、1型という大きなセンサーを搭載しているのが大きな特徴だ。

 1型といえば、高性能デジタルカメラと同等のサイズであり、スマートフォンでここまで大きなセンサーを搭載することは異例といえる。ライカと協業したスマートフォンはHuaweiのP/Mateシリーズや、パナソニックが2015年に発売した「LUMIX DMC-CM1」もあるが、現行スマートフォンでは唯一無二の特徴を持つと言っても過言ではない。

AQUOS R6
6月中旬以降に発売される「AQUOS R6」。1型センサーカメラの存在感が際立っている

 なぜ、シャープはスマホカメラにここまで大きなセンサーを採用し、ライカとの協業を決めたのか。

1型センサーと、スマホに収まる薄型レンズの開発に挑戦

 シャープがこれまで投入してきた「AQUOS R」シリーズでは、カメラやディスプレイを中心に「究極のリアリティー」と「究極のレスポンス」を追求してきた。そんな同社が次に送り出すAQUOS R6は、「今あるスマートフォンの価値観で語れないような挑戦的な進化を遂げた」と、通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏は言う。その筆頭がカメラであり、「スマホカメラの在り方そのものを見直した」という。

AQUOS R6
AQUOS R6全体のコンセプトについて説明する小林氏

 スマートフォンのカメラは、ソフトウェアによる高度な演算処理を得意とする一方で、大きなセンサーやレンズを持つデジタルカメラには、ハードウェア面ではかなわない。「デジタルカメラのセンサーは圧倒的に大きくたくさんの光を取り込める」と小林氏が言う通り、この制約をスマホカメラは超えられなかった。

AQUOS R6
デジタルカメラとスマホカメラは、異なる方向性で進化してきた

 そこで、高性能デジタルカメラ向けのセンサーをそのままスマートフォンに搭載することで、スマートフォンのカメラとデジタルカメラの融合に挑戦した。それが、スマートフォンではLUMIX DMC-CM1と並んで最大級となる1型センサーの採用だ。そのサイズは、1/2.55型だった先代の「AQUOS R5G」と比べて実に5倍大きくなり、暗所でのノイズを40%低減できるという。

AQUOS R6
スマホカメラのソフトウェアに、優れたハードウェアを持つデジタルカメラを融合させた
AQUOS R6
AQUOS R5Gより5倍大きなセンサーを搭載した

 一方で、このセンサーのパフォーマンスを最大限発揮させるためには、「高い屈折率とスマートフォンに収まる薄さを両立させたレンズが必要だった」と、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 課長の楠田晃嗣氏は振り返る。ライカと共同で膨大な光学シミュレーションを繰り返し、「F1.9、焦点距離19mmの、理想的な7枚のレンズを設計できた」と同氏。ナノオーダーの精度で加工することで、AQUOS R5Gと比較して解像性能は15%アップし、ひずみ量を10分の1に抑えることができた。

AQUOS R6
明るく、ひずみ量の少ないレンズをスマホに載せることができた

10秒で魅せる写真と、10年後も残る写真を撮れる

 1型センサーとSummicronレンズの組み合わせによって、従来のスマートフォンよりも浅い被写界深度を実現し、一眼レフのような自然なボケ味で仕上げられる。スーパーナイトモードでは、「複数枚の画像を重ね合わせ、暗い場所を明るく処理しながら、夜空だけは見たままの自然な暗闇に仕上げられる」と楠田氏。マルチフレームノイズリダクションでは、解像感を損なわずに的確にノイズだけを除去できるという。iToFセンサーを用いたレーザーAFでは、374点までの被写体の距離を瞬時算出することで、暗いシーンでも正確に被写体を捉えられるとしている。

AQUOS R6
ソフトウェア処理に頼らないボケ味を得られるようになった

 このように、カメラのハードウェア性能を底上げすることで、AQUOS R6のカメラは「雰囲気や空気感も残せる」と楠田氏は胸を張る。例えば、薄暗い水族館で水の透明感を表現したり、逆光のシーンでも人物の表情を表現したりといった具合だ。

AQUOS R6
AQUOS R6
AQUOS R6の作例。薄暗い水族館や逆光でのポートレートなど、スマホ泣かせのシーンでも鮮明に記録できる

 そんなAQUOS R6のカメラで目指したのは、手軽に共有できる「10秒で魅せる映え写真」と、高性能カメラで記録した「10年後も残る記憶写真」だとした。

AQUOS R6
カメラ機能の詳細について説明する楠田氏

なぜライカとの協業を決めたのか

 AQUOS R6のカメラは、センサーやレンズの設計から画質調整まで、ライカが監修している。このライカとの協業を決めた理由について小林氏は「ライカは小さなレンズ、画質調整で非常に高い技術力を持っている。1型でスマートフォンに入る大きさのレンズを設計するには、ライカのような、光学的な部分に長い歴史と知見を持たれた企業との協業が必要だった」と話す。シャープはカメラメーカーではないため、「独自の技術だけではなし得ない高い設計、シャープが賄いきれないノウハウがたくさんある」(小林氏)というわけだ。

 ライカ側にとっても、長年のパートナーだったHuaweiが新たなスマートフォンを投入しにくくなっている中、新たなパートナーを探そうとしていたのかもしれない。

 「人々がカメラを使う最初の体験がスマートフォンだが、撮影体験そのものを文化にしていきたい、大局的に見ると、(ライカは)スマートフォンは重要だと考えていると聞いている」(小林氏)といい、スマートフォンで10年残せる写真をというシャープと思いが一致して、パートナーシップを結ぶことになったそうだ。

 ライカとは2020年3月に協業をスタートさせたが、シャープ側は、ライカが求める品質を実現させるべく、「従来やらなかったレベルの画質調整をやっており、従来ないレベルの苦労があった」と小林氏は話す。

AQUOS R6
AQUOS R6は「co-engineered with Leica」の称号を持つ
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