シャープに聞く「AQUOS R6」開発の舞台裏 ライカとの協業から1型センサー搭載まで:開発陣に聞く(3/3 ページ)
シャープの「AQUOS R6」は、ライカと共同開発した1型センサーのカメラが話題を集めている。刷新されたカメラ機能を中心にシャープ開発陣に話を聞いた。特にライカが求めるレベルの画質実現に苦労したという。
超解像ズームで幅広いシーンをカバー
こうしたメリットの反面、像面位相差などの位相差AFセンサーを搭載していない点は弱点といえる。その課題を解決するために、AQUOS R6ではToFセンサーによるレーザーAFを採用。「正直に言うと、位相差AFより速度が速いとはいえない」と前田氏も認める。ただ、暗いシーンでのAF性能では有利になるため、「選択肢としてはベスト」(前田氏)と判断した。
小さなセンサーを複数搭載するより、1型センサーを1つ搭載することを選択したシャープだが、それによって複数の画角をカバーすることができなくなった。AQUOS R6に搭載されたレンズは35mm判19mmという超広角レンズで、幅広いシーンは撮影できるが、被写体にズームして近寄る、といった撮影はできない。
それに対する回答としてシャープは超解像ズームによって解決しようとしている。AQUOS R6は一般的なスマートフォンカメラがメインとして使う24mm付近の画角も実際はデジタルズームを使っている。それよりも「1型に一点集中」(前田氏)することで、画質重視を貫いたのがAQUOS R6だという。
OLEDにもIGZO技術、次期製品にも「こうご期待」
AQUOS R6の特徴の1つが、新たにOLED(有機EL)を採用したこと。しかもIGZO技術を搭載した「Pro IGZO OLED」を初搭載。10億色表示やHDR、コントラスト比2000万:1、ピーク輝度2000nitなどのOLEDならではの特徴を備えながら低消費電力を実現した。IGZO技術によって1〜240Hz(は120Hzに黒画面を挿入)のリフレッシュレートを変化させることで、消費電力が抑えられる。
液晶ディスプレイで培ったIGZO技術だが、液晶とOLEDの違いから、OLEDに搭載する際の難しさもあったという。OLEDの場合、液晶よりも1画素あたりのトランジスタ数が「オーダーが違う」(前田氏)ほど多く、AQUOS R6では「数千万個のトランジスタが入る集積度が必要」(同)だという。これが1つの難題だった。
さらに液晶とOLEDはバックライトと自発光という発光方式の違いがあり、これを液晶のIGZOと同じように制御するのが困難だったという。
この2つの課題も、自社内にディスプレイ部門があり、密接に協議して開発できたことでクリア。リボーンであるAQUOS R6に搭載できた。
「Pro IGZO OLED、カメラなど、新しいものをふんだんに入れている一方、ストレージは(AQUOS R5Gの)256GBから128GBにするなど、届けていくべき価格に対して機能を調整した」と小野氏。1型センサーを始めコストは上昇しつつ、抑えられる部分を抑えることで11万5632円(ドコモオンライショップの税込み価格)と、比較的抑えめの価格も実現した。
「高級コンパクトデジタルカメラとハイエンドスマートフォンを2台買うよりはるかに安くてお得。そう思ってもらいたい」と通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 主任の田中陽平氏は話し、単にコスト度外視の機能追求ではなく、バランスを取った製品であることをアピールする。
1型センサーやPro IGZO OLEDなど、今後他のシリーズにも広げ、Rシリーズで継続するかについては「決まっていない」というのが同社のスタンスだが、ライカとは長期間のパートナーシップを結んでいるため、今後どういった開発を進めていくかを協議しているところだという。「こうご期待」と楠田氏は話している。その宣言通り、今後のAQUOSシリーズに期待したい。
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