「Pixel 5a(5G)」はなぜ日米限定? 半導体不足だけじゃない、Googleの戦略を読み解く:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
Googleのミドルレンジスマートフォン「Pixel 5a(5G)」が8月26日に発売される。発売する国を日本と米国に限定しているのは、半導体不足が大きいという。日米ともにiPhoneのシェアがグローバル平均より高いことも関係しているのだろう。
Googleは、自社ブランドのミドルレンジスマートフォン「Pixel 5a(5G)」を8月18日に発表した。現在、事前予約を受け付けており、発売は8月26日を予定する。価格はGoogleの直販であるGoogle Storeが5万1700円(税込み、以下同)。取り扱うキャリアはソフトバンクだけで、価格は6万4800円とGoogleよりやや高めだが、「トクするサポート+」を適用して26カ月目で機種変更すると、実質価格は3万2400円になる。
例年、GoogleはフラグシップモデルのPixelを投入した翌年に、スペックと価格のバランスを取ったaシリーズを発売している。一方で、Pixel 5a(5G)は当初、半導体不足などを理由に見送られるのではという観測もあった。こうした見方に対し、Googleは4月に日本と米国限定でPixel 5a(5G)を発売すると声明を出し、うわさを否定。18日の発表に至っている。実際、発表されたPixel 5a(5G)は、日本と米国のみで展開される。
驚いたのは、欧州やアジアではなく、日本が含まれていたことだ。Googleのお膝元である米国を除くと、日本は唯一の海外市場ともいえる。しかも、過去のaシリーズと同様、FeliCaを搭載する専用のカスタマイズまで行っている。では、なぜGoogleはここまで日本市場を優遇しているのか。その理由に迫った。
コストパフォーマンスの高さは健在のPixel 5a(5G)、アップデート保証も魅力
aシリーズのPixelは、コストパフォーマンスの高い廉価版Pixelとして人気が高い。廉価版といってもカメラ機能については上位モデルとの差がほとんどなく、ソフトウェアも共通。ミドルレンジモデルながら、Googleの目指す「ハードウェアとソフトウェアとAI」を融合させた体験は、フラグシップモデルとそん色ないレベルに仕上げられている。Pixel 5aにもそのコンセプトは踏襲されており、5万1700円という価格ながらも、機能は限りなく近い。
例えば、プロセッサは「Pixel 5」や「Pixel 4a(5G)」と同じ「Snapdragon 765G」で、本体には金属素材を採用。防水仕様もPixel 5から受け継いでいる。ワイヤレス充電に非対応だったり、メモリ(RAM)のサイズが6GBだったりといった点はPixel 4a(5G)と同じだが、それ以外の機能や外観の質感をPixel 5に近い。Pixel 4a(5G)が、5Gに対応する必要もあって例外的に機能が高かったため、焼き直しに見えてしまう面があることは否めないが、Pixel 5a(5G)はaシリーズを正統進化させた端末といえそうだ。
ハイエンド端末ほどではないが端末のレスポンスは非常によく、普段使いには十分。GoogleのAIを駆使したカメラの画質は非常に高い。定評のある「夜景モード」での仕上がりや、明るい場所、暗い場所それぞれの露出を補正できる「デュアル露出補正」といった機能がそのまま使えて5万円台前半なのは、破格の安さといえる。コストパフォーマンスのよさが評価されていたPixel 4a(5G)より安く、高機能で質感も上がっているため、ヒットが期待できる。
また、PixelシリーズはAndroidを手掛けるGoogle自身が投入する端末で、3年間のOSアップデートが保証されている点は購入する上で安心材料になる。発売時のOSバージョンはAndroid 11だが、8月以降の配信を予定しているAndroid 12や、まだその姿すら見えていないAndroid 13にも対応する。特にミドルレンジモデルの場合、コストのかかるアップデートに消極的なメーカーもあり、差別化のポイントになる。
ただ、その販路は従来のaシリーズより狭くなっている。例えば、「Pixel 4a」は、オーストラリアやカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、台湾など、幅広い国や地域で展開されていた。フラグシップモデルのPixel 5も、9カ国で販売している。SamsungやXiaomi、OPPOといったメーカーに比べると取り扱っている地域は少ないが、グローバルな端末といえる。これに対し、Pixel 5a(5G)は、当面、日本と米国での限定販売になる。
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