スマホ決済は「付加価値サービス」に位置づけるのが勝ちか――スマホ決済で生き残るのは4キャリアのみ?:石川温のスマホ業界新聞
PayPayがコード掲示タイプの加盟店において「決済手数料」を徴収し始めることが大きなニュースとなっている。一部のメディアでは「消耗戦が限界」という論調が見られるが、それだけの理由で手数料の徴収に動いたのだろうか……?
PayPayの手数料有料化を受けて、一部メディアでは「消耗戦が限界」といった論調が目立つが、本当にそうだろうか。
確かに決済サービスのみを提供する事業者にとってみれば、これからますますつらくなるだろう。中途半端に決済サービスを提供しているだけでは他社に飲み込まれるのは目に見えている。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年8月21日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
すでにOrigamiはメルペイに救済されたし、そのメルペイもNTTドコモ・d払いとタッグを組んだ。pringもグーグルに買収されてしまった。
スマホ決済サービスはソフトバンク陣営、NTTドコモ、KDDI、楽天の4キャリアに集約されてくるのではないか。PayPayは圧倒的な規模と他社に大きく先行したアドバンテージを発揮していくことだろう。楽天に関しても、カードや金融、ポイントとの経済圏との連携で盤石な感じがする。
一方、NTTドコモとKDDIに関しては、そもそもスマホ決済サービスに対するスタンスが他社とは違う感がある。
NTTドコモとKDDIは確かに積極的にスマホ決済サービスを展開している。しかし、この2社に関しては、通信サービスを利用しているユーザーに対しての「付加価値サービス」という位置づけに過ぎない。既存ユーザーが支払う通信料金に対してポイントを付与し、そのポイントを原資に、街中でスマホ決済サービスを使ってもらうだけでいい。ユーザーが利便性を感じ、解約抑止につながれば、それで御の字のはずだ。
今回、PayPayが決済手数料を1.6%(マイストア機能契約時)、未加入の場合は1.98%に引き下げたが、NTTドコモやKDDIが決済サービスを「ユーザーへ付加価値サービス」として位置づけているのであれば、決済手数料で儲けようとは思っておらず、PayPayに対抗して同じ料率に合わせてくるのも不可能ではないはずだ。
そもそも、キャリアが決済サービスを手がけるのは、スマホ決済アプリを毎日のように起動してもらうことに意味がある。毎日、ユーザーが起動するアプリは、ユーザーとの接点としては重要であり、そこに様々な付加機能を載せ、スーパーアプリ化できれば、多様な収益化の可能性が広がる。
かつて、ケータイ時代にはiモードやezウェブといったポータルサイトがあり、そこがコンテンツサービスへの入り口になったように、決済アプリがスーパーアプリ化して、様々なサービスにアクセスしてくれれば、キャリアとしては万々歳だろう。
スマホ決済サービスは決済だけで事業を成り立てせようとすれば自滅する。店舗に対してはマイストアのような機能で収益化につなげる必要があるし、ユーザーに対しては、様々なサービスを提供して儲けなくてはならない。
決済手数料目当ての決済サービス事業者が生き残るのは不可能であるし、結果として、多様なサービスを持つ4つのキャリアしか生き残らないような気がしてならない。
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