決算で判明、明暗分かれたpovoとLINEMO “オンライン”以外での差別化がカギに:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
鳴り物入りで登場した大手キャリアのオンライン専用料金ブランド/プランだが、開始から1年たたずに、サービスの姿を変えつつある。LINEMOは3GBプランを追加し、povoは月額0円からの「povo2.0」にリニューアル。特に支持されているのはpovo2.0のようだ。
鳴り物入りで登場した大手キャリアのオンライン専用料金ブランド/プランだが、開始から1年たたずに、サービスの姿を変えつつある。もともとは3社とも割安な20GBプランとして開始したが、7月にはソフトバンクがLINEMOに3GBの「ミニプラン」を追加。9月にはKDDIがpovoを「povo2.0」へとリニューアルし、月額0円でトッピングを使ってデータ容量を自由に足していく方式を導入した。開始からサービス内容を変えていないのは、ドコモのahamoだけだ。
では、LINEMOやpovoのプラン追加やリニューアルは、どのような成果が出たのか。10月29日と11月4日に開催されたKDDI、ソフトバンクの第2四半期決算説明会で、それぞれのブランドの現状が明らかになった。ここでは、2社の社長のコメントを引きつつ、リニューアルを果たしたオンライン専用ブランド/プランの実態を解説していきたい。
楽天モバイル対抗だったpovo2.0、トッピングが当たり利用者は急増
「開始から1カ月で10万以上の契約者が増え、非常に順調に立ち上がっている」――KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏はpovo2.0の好調な滑り出しをこう評した。povoは9月27日にpovo2.0にリニューアルして、月額制の料金プランを廃止。基本料0円で、高速データ通信を使いたいときだけ、トッピングでデータ容量を購入していくプリペイドに近い仕組みを導入した。利用者が急増しているのは、このリニューアルが当たったからだ。
維持費を一切取らず、月額0円からスタートにしたのは、楽天モバイルの「UN-LIMIT VI」に対抗する狙いがあったという。高橋氏は「0円から始まる段階型料金の影響があったことは間違いない」と語る。これに対し、KDDIは「UQ mobileの強化によって一段階(流出を)止め、それでも止めきれない部分があったのでいろいろと考え、povo2.0のやり方で0円を意識してもらった」(同)。この戦術が奏功し、KDDIから楽天モバイルへの流出は「だいぶ減った」(同)という。
povo2.0は、トッピングを付けなければ1円も料金が発生せず、KDDIにとっての負担が増してしまうようにも見えるが、実際に0円で維持しているユーザーはそれほど多くない。高橋氏によると、トッピングを購入するユーザーの割合は3分の2から4分の3程度とのこと。0円のまま維持しようとすると、128Kbpsの低速通信で使うか、キャンペーンの「ギガ活」で継続的にデータ容量を集める必要があり、少々ハードルが高い。そのため、まずは有料でトッピングをつけてみるユーザーが多いことがうかがえる。
結果として、1ユーザーあたりからの平均収入(ARPU)も高くなっている。高橋氏によると、ARPUは「UQ mobileより高いぐらい」だといい、多くのユーザーが比較的データ容量の大きなトッピングを購入していることが分かる。UQ mobileのユーザー数は、3GBの「くりこしプランS」の比率が高く、次の山が15GBの「くりこしプランM」になる。割引も加味すると、ARPUは990円から2728円の間にあると見ていいだろう。これよりARPUが高いということは、20GB以上のプランを購入しているユーザーが多い証拠だ。
協業先であるCircles Asiaが運営するCircles.Lifeは、MVNOでありながらMNOよりARPUが高くなるケースもあるというが、同様のことがpovo2.0でも起こっているようだ。0円スタートでハードルを下げつつ、「お客さまがどういう方を一生懸命知り、継続的にアプローチしてトッピングしていただく」(同)コンセプトがうまくユーザーにフィットした格好だ。成否を判断するのは時期尚早かもしれないが、少なくとも、auやUQ mobileとのすみ分けには成功したといえる。KDDIは「11月からpovo2.0の拡販に努めていく」(同)といい、この勢いがさらに増す可能性も高い。
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