新しいIoTデバイスの実用化のためにバッテリーの開発を加速――ソフトバンクが「次世代電池Lab.」を公開(2/4 ページ)
ソフトバンクが、6月に栃木県宇都宮市内に開設した「次世代電池Lab.」を報道関係者に公開した。そもそもなぜ、ソフトバンクはバッテリー(充電池)の開発に注力するのだろうか。そしてどのようなバッテリーを作ろうとしているのだろうか。その辺りの事情もチェックしてみよう。
今回開発された新技術は4つ
今回、ソフトバンクが開発に成功したのは以下の3つの技術。いずれも、リチウム空気電池の実用化に欠かせないものだ。
- 全固体電池用正極材料
- MI(マテリアルズ・インフォマティクス)を活用した有機正極材料の性能モデル
- 質量エネルギー密度「520Wh/kg」セルの試作と実証
加えて、軽量の集電体である「次世代樹脂箔」の開発にも成功している。
ソフトバンクはバッテリーの「高密度化」を優先
現在の技術では、バッテリーの質量エネルギー密度は「350Wh/kg」が最大となっている。ソフトバンクによると、今回開発された技術を順次適用することで、エネルギー密度を「400〜500カテゴリー(最大550Wh/kg)」、「600〜1000カテゴリー(最大1000Wh/kg)」と引き上げられるという。
端的にいえば、同社はバッテリーの密度を高めることを優先しているのだ。
現状のバッテリーには課題がいくつかある。例えば空中に“常駐”し続けるHAPS用の飛行機や人を乗せて飛ぶ「ドローンタクシー」では、バッテリーの出力が重要となる。
高密度なバッテリーが欠かせないのだが、現状では出力を上げようとするとバッテリーはどうしても重たくかさばってしまう。なぜかというと、現在の一般的なバッテリーはエネルギー密度よりも“寿命”(サイクル回数)を重視しているからだという。
ソフトバンクでは、まずはサイクル回数が200〜400回程度でも1000Wh/kgクラスのエネルギー密度のバッテリーを開発することで、HAPSなどの実現を実現した上で、そこから長寿命化を進めていく方針を示している。
バッテリーの高密度化は、HAPS用飛行機やドローンタクシーのような出力の大きさを求められるデバイスを早期実現だけでなく、街中で電気を“ストック”しておくスタイルにもピッタリだという。
関連記事
- ソフトバンクが“次世代電池”を開発 配送ドローンやHAPSでの実用化を目指す
ソフトバンクが、次世代電池の研究開発と早期実用化を推進するために次世代電池の評価・検証施設「ソフトバンク次世代電池Lab.(ラボ)」を6月に設立する。次世代電池は世界各国で開発競争が進んでおり、今後の次世代デバイスの登場には不可欠とされている。同社は高密度化を進めることで、次世代デバイスへ適用していくことを目指す。 - 2025年に「リチウム空気電池」の実用化へ ソフトバンクと物質・材料研究機構が連携
ソフトバンクは、4月11日に物質・材料研究機構と「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」の設置に関する覚書を締結。両者はセンターでの共同研究を通し、次世代の電池である「リチウム空気電池」の実用化に向けて連携を開始する。 - 「株式上場」「LINEモバイル提携」――ソフトバンクのこれから
- モバイルネットワークを活用した「ドローン配送」は、いつ実現されるのか?
上空からユーザーの元へ直接荷物が配送される――。そんな未来が「ドローン」によって近づきつつある。その鍵を握るのがモバイルネットワーク。NTTドコモとKDDIに、ドローン配送への取り組みを聞いた。 - ドコモ、基地局の長期停電対策で燃料電池を使用――遠隔操作による省電力化も
ドコモが、災害時などで長期停電となった際の、基地局における新たな対策を発表した。従来の鉛蓄電池よりも軽くて小型の燃料電池を運用するほか、停電などで基地局装置が非常用電源で運用された場合、遠隔操作で省電力化を図る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.