「BALMUDA Phone」に落胆の声が多かった理由 “スマートフォンの本質”を改めて考える:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
高級家電メーカーとして知られるバルミューダが初めて開発したスマートフォン「BALMUDA Phone」が登場。小型のボディーに直線のないデザインを採用したが、発売後には否定的な意見が多くを占めた。こうしたリアクションからは、スマートフォンという製品を開発する難しさも浮き彫りになる。
高級家電メーカーとして知られるバルミューダが初めて開発したスマートフォンが、11月16日に発表された。発売は11月26日を予定。同社自身でメーカーモデルを販売する他、キャリアではソフトバンクが独占的に取り扱う。インテリアに調和する優れたデザインや、一点突破的に磨きをかけた機能を備えた家電を投入して知名度を上げてきたバルミューダだが、スマートフォンでも大手メーカーの端末に対してアンチテーゼを投げかけた。
大型化する端末に対し、あえて4.9型のディスプレイを採用。ボディーも直線的なデザインが多い昨今のトレンドとは異なり、曲線のみで構成した。ところが、端末発表直後からネットでは賛否両論が噴出。肯定的に捉える向きもあったが、どちらかというと否定的な意見の方が多かった印象だ。こうしたリアクションからは、スマートフォンという製品を開発する難しさも浮き彫りになる。
既存のスマートフォンに対するアンチテーゼとして開発されたBALMUDA Phone
「今の世の中のスマートフォンは、あまりにも画一的になってしまった」――バルミューダの代表取締役社長、寺尾玄氏はこう語りながらBALMUDA Phoneを紹介した。寺尾氏の言葉に代表されるように、同モデルは既存のスマートフォンにアンチテーゼを投げかけた1台だ。ディスプレイサイズを拡大するため、スマートフォン全体が大型化している中、BALMUDA Phoneは4.9型と小型のディスプレイを採用。トレンドである直線的なデザインも採用せず、「河原に落ちている石」(同)をほうふつとさせる、丸みを帯びた形状に仕上げた。
寺尾氏が「どこにも直線がない唯一のスマートフォン」と言うように、背面だけでなく、ディスプレイ側にもわずかながら膨らみを持たせた。金属やガラスといった硬質感のある素材についても、「全てピカピカで、半年、1年使っていくとどんどん劣化していく」と一蹴。革製品や木材、デニムといった味の出る天然素材の質感を目指し、背面には特殊な塗料で加工を施している。こうした仕上げから、見た目や手触りは確かに既存のスマートフォンとは一線を画している。
ハードウェアだけでなく、ソフトウェアにも独自の工夫を施した。「普段使いの基本アプリを全部作り直した」(同)というように、スケジューラーや電卓、時計、メモ帳などは、全てオリジナル。OSにはAndroid 11を採用しているものの、Androidに含まれる基本アプリは使用せず、独自の使い勝手を目指した。Androidスマートフォンの中には、開発コストとの兼ね合いもあり、独自アプリを縮小しているものもある中(特に日本メーカーに多い)、新規参入のメーカーが細部にわたって作り込んでいる姿勢は評価できる。
一方で、それがゆえに価格が上がってしまったのも事実だ。バルミューダ自身が販売するメーカー版は10万4800円(税込み、以下同)。ソフトバンク版は、「新トクするサポート」の利用を前提にしている節もあり、本体価格は14万3280円とさらに高額だ。もちろん、このぐらいの価格は、各社のフラグシップモデルでは一般的で、特筆するような価格ではない。ただし、10万円を超える端末は、あくまでハイエンドであることが条件だ。
これに対し、BALMUDA Phoneはいわゆるミッドハイのスマートフォンになる。プロセッサにはQualcommのSnapdragon 765を採用し、6GBのメモリと128GBのストレージを内蔵。カメラは4800万画素と画素数こそ高いが、シングルカメラで超広角カメラや望遠カメラ、マクロカメラなどには非対応だ。カテゴリーとしては、OPPOの「Reno5 A」やXiaomiの「Mi 11 Lite 5G」に近いといえる。これらの競合となる端末が4万円前後で販売されていることを踏まえると、率直に言って「高い」と評さざるを得ない。
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