NTTドコモに聞く「エコノミーMVNO」の勝算 収益性や参画のハードルはどう見る?(1/3 ページ)
NTTドコモの「エコノミーMVNO」が始動し、10月からはNTTコミュニケーションズのOCN モバイル ONEが、ドコモショップでの契約に対応。12月にはフリービットグループのトーンモバイルも、「トーンモバイル for docomo」の提供を開始する。そんなエコノミーMVNOの狙いをドコモに聞いた。
2020年12月に予告されていたドコモの「エコノミーMVNO」が、ついに始動した。10月からはNTTコミュニケーションズのOCN モバイル ONEが、ドコモショップでの契約に対応。12月にはフリービットグループのトーンモバイルも、「トーンモバイル for docomo」の提供を開始する。エコノミーMVNOは、あくまでドコモとは別会社のMVNOが展開するサービスだが、あたかもドコモのいち料金プランのように契約できるのが特徴。MVNOにとっては、ドコモショップを活用して販売やサポート体制を強化できるのが魅力だ。
ドコモにとっては低容量のユーザーが他社に流出するのを防げるのがメリットといえる。MVNO回線ではあるが、ドコモは接続料という形で間接的に収益を上げられるうえに、エコノミーMVNOとはdポイントを通じた連携もしているため、ドコモの経済圏の中にとどめておくことができる。大容量を担う「ギガホプレミア」や、中容量に特化した「ahamo」に加え、エコノミーMVNOがそろったことで、料金プランのピースが埋まった格好だ。
一方で、他社はサブブランドやオンライン専用ブランドを活用しつつ、低容量の料金プランを自ら展開している。ここに対抗するのがエコノミーMVNOの役割だが、収益性については疑問符もつく。ユーザーから直接料金を支払ってもらえなくなるからだ。参画するMVNOが増えてきた際に、MVNO同士やドコモとの差別化をどうするのかも、気になるところだ。こうした疑問を、ドコモでエコノミーMVNOを担当する営業本部 営業戦略部 モバイル事業戦略担当部長の蓑手康史氏にぶつけた。
当初は多少の混乱があったが、反響は大きい
―― 既にOCN モバイル ONEの取り扱いは始まっていますが、実際に始めてみていかがでしたか。
蓑手氏 10月21日に取り扱いを開始しましたが、反響が大きいと感じています。ドコモショップにおいて他社のシステムを使いながら手続きをするので、当初は多少の混乱があり、受付の時間がかかるという声は上がっていましたが、その辺は改善しながら進めています。料金をご説明すると、安いプランがあるということでお乗り換えいただけています。
一方で、全国的な認知はまだまだこれからです。ドコモでできることと、MVNO各社でできることがありますが、それぞれでプロモーションを考えていきながら、全体を盛り上げていければと考えています。
―― 確かに、テレビCMのような大規模なプロモーションをしている様子がないように見えます。
蓑手氏 11月から地方紙に広告を出したり、ラジオなどでも露出を増やしたりしています。店頭ツールはやりますし、ダイレクトメールも11月下旬からやっていきます。来月(12月)ぐらいには、さらに露出を上げるための仕掛けをしていく予定です。
―― それは、フリービットのサービス開始を待ってからということでしょうか。
蓑手氏 待ってというより、もともと12月に提供予定ということで一緒に準備をしていました。それぞれの準備が整った段階で開始していきます。テレビCMなどは準備に時間がかかるので、そういったタイムスケジュールも織り込みながらですね。先行して地方紙やラジオなどで露出を始めた形です。
シニア層はある程度狙い通りに取れている
―― 安いプランに乗り換えているユーザーがいるというお話でしたが、どういったユーザー層が乗り換えているのでしょうか。
蓑手氏 シニア層に関しては、ある程度狙い通りにいっています。(MVNOは)他社のことなので詳しくは申し上げられませんが、思った以上にビジネスマンの方にご契約いただけていることも分かっています。OCN モバイル ONEは取り扱うプランが幅広いので、店頭でご紹介した際に選んでもらえているのかもしれません。
―― 多いのは、やはりドコモからの移行でしょうか。
蓑手氏 3Gからの乗り換えはそういうご提案(ドコモからの移行)になっていることもあり、そういう場ではOCN モバイル ONEが出てきやすいですね。ただし、全体としてどうなのかという詳細についてはお答えを控えたいと思います。
―― ギガライトとOCN モバイル ONEを比べると、ギガライトの料金的な優位性がありません。その層のユーザーが減ってしまう恐れはないでしょうか。
蓑手氏 影響がないわけではありませんが、「それでもドコモがいい」とおっしゃってくださる方もいます。「はじめてスマホプラン」にするのか、ギガライトをご提案するのかは、お客さまのニーズを聞きながらですね。
関連記事
- ドコモの「エコノミーMVNO」で“弱点”解消なるか 対サブブランドでは収益性が課題
ドコモが2020年12月のahamo発表時にコンセプトを披露していた「エコノミーMVNO」の詳細が決まった。ドコモ自身が提供する料金プランではないが、あたかもドコモ内の料金プランかのように契約できる。ドコモの料金カテゴリーとはいえ、実態としてはユーザーを自らMVNOに送り出しているため、収益性が課題となる。 - “低廉な料金と多様なニーズ”に対応 ドコモ「エコノミーMVNO」の狙い
NTTドコモが10月7日、dアカウントやdポイントを活用した「エコノミーMVNO」について発表した。エコノミーMVNOは、低容量かつ低廉な料金サービスを利用したいユーザーのニーズに応えたもの。ドコモから移行したとしても、dアカウントを軸とした非通信分野での収益向上を図るという狙いもある。 - OCN モバイル ONEがドコモの「エコノミーMVNO」に参入し、500MBプランを提供する狙いは?
10月21日に、ドコモの「エコノミーMVNO」がスタートし、第1弾としてOCN モバイル ONEが参入した。550円で500MBのデータ通信と10分通話無料が付く新プランも提供開始した。MVNOではシェア2位のOCN モバイル ONEが、なぜエコノミーMVNOに参入したのか。 - dポイントで連携する「ドコモのエコノミーMVNO」が10月21日スタート ドコモショップでも契約可能
NTTドコモが「エコノミー(低価格/低容量)」を担う戦略として検討してきたMVNOとの連携。それが、ようやく結実する日が来た。10月21日からはNTTコミュニケーションズ、12月上旬からフリービット(トーンモバイル)のMVNOサービスをドコモショップで取り扱うことになる。 - IIJmio「ギガプラン」が好調で純増 ドコモのエコノミーMVNO参画は「問題点が2つある」と勝社長
IIJが2021年度上期の決算を発表。売上高は1090.5億円で前年比7.3%増、営業利益は93億円で前年比77.6%増となった。モバイルサービスは法人向けが堅調に契約数を伸ばし、IIJmioも「ギガプラン」が好調で純増となった。ドコモの「エコノミーMVNO」には現時点では参加する予定はないという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.