「携帯電話ショップ」の20年を振り返る 2000年代に最盛期も“冬の時代”を迎えた理由:ITmedia Mobile 20周年特別企画(3/4 ページ)
携帯電話を購入際に欠かせない存在だった「携帯電話販売店」ですが、昔はいろいろな意味で“大盛況”でした。過去に複数の携帯電話販売店で店員をしていた筆者が、この約20年間のショップの変化を振り返っていきます。
2010年代後半:高額な還元/割引が厳しく規制される
MNP契約(一部は純粋な新規契約)における“過激な”還元競争も手伝って、スマホの販売台数や携帯電話の契約件数は大きく伸長しました。その反動で、同じキャリアを使い続けているユーザーは冷遇され続けました。
たまに機種(契約)変更を対象とする端末の割引セールをやるものの、その割引額はMNP契約時はもちろん、純粋な新規契約時にも及ばないことがほとんどでした。継続利用による月額料金の値引き率アップやポイント還元率アップなど、使い続けることで得られるメリットもありますが、MNP契約時に得られる各種還元を目の前にすると微々たるものです。
そんなこともあり、MNP契約を過剰に優遇するキャリアや販売店の販売方針に対する疑問の声が徐々に挙がり始めました。そんなこともあり、携帯電話を含む通信を所管する総務省は、2010年代中盤から過剰な還元を規制することで、全てのユーザーを極力公平に扱う方針を掲げ、有識者会議などを通して実現を目指しました。
その集大成が、一部を除き2019年10月から施行された改正電気通信事業法なのですが、大手キャリアは2015年頃から少しずつ、販売施策に「自主規制」を行うようになりました。例えば、キャリアショップだけでなく専売店、併売店や家電量販店でも以下のような規制が行われるようになりました。
- 端末価格の表示フォーマット(様式)の統一
- 店舗独自の掲示物(ポスターなど)の掲示に事前承認が必要に
- 作成する場合も、キャリアが用意したテンプレートの利用を強く推奨
- 店舗独自のSNS(Twitter、Facebook、LINEなど)を利用した発信の制限
具体的な取り組みは、キャリアや店舗形態によって微妙な差分はありますが、おおむねどのキャリアも同じような自主規制を進めました。
2010年代半ばから、大手キャリアは販売面の規制の一環として店舗掲示物のフォーマット統一を進めました。店舗独自の掲示物を作成する場合は、作成後にキャリアの営業部門から承認を得て初めて掲示できるように改められました
当初は不具合の多かったスマホも、ハードウェアとソフトウェアの改善が進んだことでクレームを受けることはめっきり減りました。最新OSへのバージョンアップをしっかりとやるモデルも増えたので、1つのスマホをより長い期間使いやすくなりました。ユーザーは新機種に買い換えなくても、ある程度の期間は新機能を利用できるようになったのです。
店舗にとって、端末の頻繁な買い換えがなくなることは「食いぶち」を失うことになります。少しでも買い換え需要を喚起すべくキャンペーンやキャッシュバックをしようにも、2019年10月以降は法規制によって困難になりました。
端末の販売台数や回線契約の獲得数が減ると、店舗に入るインセンティブも減ります。先述の通り、携帯電話販売店にとってインセンティブは重要な収益源の1つです。インセンティブが減ると、賃料や人件費といった店舗の運営資金をまかなうことも厳しくなります。ある意味での「負のスパイラル」によって、赤字運営を強いられる店舗も徐々に増えていきました。
その結果、専売店や併売店を中心に閉店が相次ぎ、家電量販店では携帯電話コーナーの面積削減が進み始めました。それと比べると、キャリアショップはそれほど影響を受けていないように思えるかもしれませんが、よくよく見てみると店舗の統廃合が進められたり、存続した店舗でも運営企業の変更が行われたりします。
法規制の強化によって、携帯電話販売店はさらなる「冬の時代」に入ってしまったのです。
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