「BALMUDA Phoneはやって良かった」「Y!mobileが爆発している」 ソフトバンク宮川社長が語ったこと(2/3 ページ)
ソフトバンクの決算会見で、宮川潤一社長が5G、通信サービス、モバイル決済などの戦略を語った。通信サービスは「Y!mobileが爆発している」と好調ぶりをアピールした。PayPayの投資については「もうひと暴れさせてもらいたい」と話した。
5Gはあと2〜3年でキャリアごとのカラーが出てくる
決算の説明後、質疑応答が行われた。主なやりとりは以下の通りだ。
―― 5Gについて、今後IoTデバイスや新しいコンテンツが出てくると思う。稼ぐという観点で、どういった分野で、どのくらいの成長を見込んでいるか。有望な分野はどこか。
宮川氏 4Gのスマホと5Gのスマホで見比べると、大きな差異は正直ないと思う。5Gの通信スピードが速い分だけ、トラフィックが若干伸びているが、びっくりするような伸びではない。次はAR、VRなどに期待をしながら、その後のメタバースなどにつながっていくといいなと思っているが、大きなキラーアプリがあるかというと、今はそうではない時期。ネットワーク作りを急いでやっているが、それが完成されてきてSA化が進むと、デバイス側でサービスが作りやすくなる。その後、2年、3年かけて5Gサービスが成熟すると考えている。
―― 楽天モバイルは後発ということで、5Gにも柔軟な基地局で整備が進んでいる。MNO3社から5Gの進展とともに4社に変わっていくところで、競争環境の変化はどう見通しているか。
宮川氏 スマホの通信という面では、4G時代と5G時代でさほど変わらないかと思う。ネットワークの安定性や接続性で、より良い方の人気が出るということだと思う。今の4Gのインフラは日本の人口カバー率99.9%に及ぶが、5Gでここまでやるのには、正直もう少しかかると思う。5Gの周波数の特性もあるが、面を展開するのはなかなか難しい。時間とともに成熟してくると思うが、5Gが出来上がってきて、そこでまたキャリアの(通信)スピードが違うとか、レイテンシが違うとか、いろんな角度でキャリアの違いが出てくるかもしれないが、スマホの時代においては、そんなに今の環境と変わらないだろうと思う。
価格帯としては、4Gから5Gに移り変わるところで価格が下がった。この価格が下がった形で、5Gを新たなインフラとして作ろうとすると、キャリア側の負担が今まで以上に大きくなる。いろんな戦略がこれから出てくると思うので、あと2、3年たつと、キャリアごとのカラーが出てきて、そこで生み出して使えるサービスのある/なしが出てくるのではないか。
―― 先ほどの質問の回答で、2、3年たったときに各キャリアのカラーが出たサービスが展開されるのではないかという回答があった。説明会の冒頭で、中長期のプランニングを考える時間を割いていると話していたが、宮川社長が今思い描いている、ソフトバンクのカラーを持った戦略はどういうものなのか。
宮川氏 今までの3G、4Gの頃は、電話が中心のインフラだった。電話がつながらないことが致命傷だったので、3G、4Gだと家の中、地下までカバレッジをどうつなげるかというインフラの作り方だった。最近はWi-Fi 6、2023年ぐらいになるとWi-Fi 7という規格が誕生して、チップセットも出てくる。今はYouTubeなどの動画が中心の時代だが、Wi-Fiは非常によくできており、動画が家のWi-Fiでも十分見られる時代。5GはSA化して、コアの設備が5G専用になってくると、いろいろなことがやれるようになる。
ここ数年間だけでいくと、インドアの莫大なトラフィックを、5G側に寄せるのかWi-Fi側に寄せるのかで、いろいろな戦略があるかと思う。われわれがやりたいサービス、作りたいネットワークは何かを議論している。
もし今のARPUのまま、料金が値下げしたままの状態で、日本だけが4G時代のように、しゃかりきになってインフラを作り続けると、恐らく収益効率の悪い国の代表例になると思う。そうすると日本に新しい技術があまり寄ってこなくなる危険性もある。われわれはどれぐらいのマージン率で5Gを作るべきなのか、本当にスクラッチで議論して、10年後の通信をやる際にどんな都市計画をすべきかを、収益性も議論しながら、中長期戦略の中で今一番取り組んでいる。
―― 国内でコロナウイルスの感染がまた拡大しているが、5Gの展開に影響はないか。
宮川氏 今、85%の人口カバー率だが、それで基地局の数は2万3000局。春に人口カバー率90%まで立ち上げるということで、今、急加速でやっている。今、5Gと4Gでつながりにくい問題がよくネットで言われていると思うが、ある程度、5Gで面を作らないと、4Gと5Gを行ったり来たりするドライブがうまくいかない時がある。だからまずは面を、ある程度のボリューム感で仕上げることが必要で、これは2022年、2023年と手を抜くことなく作り上げていきたい。
―― 2022年度の設備投資の規模感についてどう考えているか。また原材料高や半導体不足といった要因を、設備投資計画にどのように取り込んでいくか。
宮川氏 設備投資計画は、2021年度とさほどと変わらないぐらいを見込みたい。5Gの基礎を作る基地局数は、日本全国で最低5万局ぐらい必要じゃないかなという試算をしている。今現在で2万3000局ぐらいなので、数年間かけてまず面を作り上げる。それから5Gのトラフィック増加に合わせて、トラフィック分散という形で、基地局を増設する場合があり得る。
ただ、今、ARPUが少しずつ下がっている。この下がった中で、同じCAPEXの計画をし、同じ運用コストをかけるということを続ければ、当然収益は崩れてくるので、そのバランスをしっかりと見極めていきたい。5Gの投資の方が4G時代よりも減るということはあり得る。
半導体については、われわれの方も少しだけ影響がある。思った以上にハードウェアが入らず、少し工事のやりくりをしたというケースが出ている。ただ大きくブレーキになる要素が今のところないのは、前もってこの状況を鑑みて、少し前倒しの発注をして調整していたため。これが2023年度、同じような環境になるかどうかは、まだ分からない。これからの発注になるので、来期の予算が確定次第、来期の部材の確保に入りたい。
Y!mobileとLINEMOの違いは「正直ない」
―― モバイル契約者数の純増が好調で、特にY!mobileがけん引したとのことだったが、この理由を知りたい。Y!mobile以外はどうだったのか。
宮川氏 Y!mobileは、990円からの低料金のサービスを行っている。CMなども好調で、来店者も増えてきた。Y!mobileの魅力は、他キャリアさんの商品と見比べても見劣りしないということが1つ。それからY!mobileは今、MNPで他キャリアから移る先に選ばれやすい環境にある。価格だけだとLINEMOの方(が安い)じゃないか思われるかもしれない。われわれは低料金サービスとしてLINEMOとY!mobileの2本柱でやっているが、Y!mobileの方に、より集中しやすい環境があると思う。これはやはり店舗。ソフトバンクとY!mobileが併設された店舗で、お客さまが相談しながら加入していただくという環境が整っていることだと思う。
他のブランドについては、LINEMOが伸びているというよりは、Y!mobileが爆発している。ソフトバンクブランドについては、今まで相当、MNPで安いブランドの方に流れる傾向があったが、これが止まった。ソフトバンクからY!mobileに移動するユーザーさんも、かなりの数がある。ソフトバンクが下げ止まったことと、Y!mobileが好調だということで純増につながった。
―― LINEMOの単独での契約数は、足元でどこまで伸びているのか。LINEMOの今後については、どのような方針なのか。
宮川氏 LINEMOについては、毎月減ってはいないが、そんなに爆発的に増えてないというぐらいの回答にさせてほしい。われわれが胸を張って言えるくらいの数字ではない。ただ、Y!mobileとLINEMOの違いが今、正直ないと思っている。ネットを触れる人であれば、LINEMOであろうがY!mobileであろうが、同じ入会の手続きで、それほどの差異はないと感じている。もう少し差別化をやっていこうとは、常々考えている。その時期が来たら、形として示したい。
関連記事
- 決算で判明、明暗分かれたpovoとLINEMO “オンライン”以外での差別化がカギに
鳴り物入りで登場した大手キャリアのオンライン専用料金ブランド/プランだが、開始から1年たたずに、サービスの姿を変えつつある。LINEMOは3GBプランを追加し、povoは月額0円からの「povo2.0」にリニューアル。特に支持されているのはpovo2.0のようだ。 - 「0円プランには踏み込まない」「半導体不足の影響はiPad」 ソフトバンク決算会見で宮川社長が語ったこと
ソフトバンクが2022年3月期 第2四半期の決算説明会を行った。売上高は2兆7242億円で12%増収、半期ベースでは過去最高だった。LINEの子会社化や、携帯端末の販売がコロナ禍で大幅に減った2020年度よりも回復したことが要因だ。質疑応答では料金プランの在り方や半導体不足の影響、ドコモの通信障害などについて挙がった。 - ソフトバンクとドコモの決算を振り返る ahamoやLINEMOなど新料金の影響は?
ソフトバンクは8月4日、ドコモは8月6日に第1四半期の決算を発表した。業績自体は好調ながら、どちらも2月、3月以降の料金値下げや新料金プランの導入が響き、通信料収入は減収に見舞われている。一方で、ソフトバンクとドコモを比較すると、中身には少々違いがある。 - 「LINEMOの契約数は?」「プラチナバンド再割り当てはどう思う?」――ソフトバンク決算説明会一問一答(2021年8月編)
ソフトバンクが2021年度第1四半期の決算を発表した。この記事では、決算説明会における記者と宮川潤一社長との質疑応答の中で、特に注目すべきやりとりを紹介する。 - 携帯料金値下げで−700億円の影響も、増益を目指すソフトバンク PayPayの収益化も近い?
ソフトバンクが5月11日、2021年3月期の決算説明会を開催した。今回は宮川潤一氏が4月1日に社長に就任してから初の決算会見となり、同氏が今後10年の中長期ビジョンを語った。2021年度は携帯料金値下げの影響で約700億円の減益も、他の領域でカバーして増益を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.