米国5Gスマホ市場の台風の目になるか? TCLが低価格機を続々と投入:山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)
米国市場で、TCLが勢力を広げている。低価格市場での参入を本格化させ、MVNOのプランとして「毎月T-Mobileを使っているだけで5Gスマホが無料でもらえる」という施策を行っているからだ。TCLの低価格5Gスマートフォンは他国におけるXiaomiやOPPOのような5G入門機として、米国市場でしっかりと受け入れられるだろう。
世界各国で中国メーカーの存在感が高まっているが、その姿がほとんど見えない市場も少なからず存在する。それは米国と韓国だ。韓国はサムスン、LGという2大メーカーがハイエンドからエントリーモデルまであらゆる製品を投入し、また端末販売は日本の一昔前のようにキャリア販売が主流であることから、数年前はHuawei、そして最近はXiaomiが参入したものの存在感は薄い。韓国ではiPhoneの人気も高いことから、中国メーカーはブランド力を高めなければ参入は難しい市場と言えそうだ。
一方、米国市場は数年前までZTEのエントリーモデルがプリペイド端末市場で強かったものの、2018年に輸出問題で米国政府の制裁を受けてから失速。前年には鳴り物入りで発表した2画面折りたたみ端末「AXON M」をAT&T向けに発売し技術面でも米国市場でアピールするはずだったが、最終的には市中在庫分を残して市場から撤退してしまった。なお米国ではLGがスマートフォンから撤退したことで、プリペイド向けスマートフォンのバリエーションがさらに減少してしまっている。
他の国ならばLGの穴を埋めるべくXiaomiやReamleなどが製品投入ペースを加速化していくのだが、米国に両社はまだ参入していない。今から参入することも社会情勢を考えると難しいだろう。そうなるとサムスンのGalaxy Aシリーズやモトローラの低価格機に注目が集まるが、実はTCLが低価格端末市場での展開を本格化させているのだ。しかも4G機ではなく5Gスマートフォンの普及モデルを次々と投入している。
5Gの普及で後れを取っている米国
TCLは1月にラスベガスで開催されたCES 2022で米国向けとなるスマートフォン「TCL 30」シリーズを発表した。Verizon向けとなる「TCL 30 V 5G」と、T-Mobile向けとなる「TCL 30 XE 5G」の2機種で、前者がSnapdragon 480に5000万画素カメラ、後者はDimensity 700に1300万画素カメラを搭載する普及モデルとなる。価格は未定だが2022年第1四半期には発売される予定である。
米国では2019年4月にVerizonが5Gサービスを開始して以降、AT&T、旧Sprint、T-Mobileの大手キャリアも順次追従。2020年4月にはSprintがT-Mobileに吸収された一方で、旧Sprint系のMVNOだったBoostmobileをDishが買収するなど、5G開始の動きと共にキャリア再編も進んでいる。そして2022年1月現在、各キャリアの回線を利用するMVNOの多くも5Gサービスを展開中だ。
世界の5Gサービスでは中国の加入者数が圧倒的に多く、エリクソンのレポートによると2021年の全世界の5G加入者数6億6000万のうち、中国は7割にあたる4億6000万に達している。中国の5G加入者数は既に日本の人口を超えているのだ。また日本や韓国など北東アジアは1億1700万とのこと。そしてこれら地域に次ぐのが米国(北米)で、その数は8000万。人口3億を超える米国の5G普及率はまだ4分の1にも達していない。
米キャリアが100ドル台の低価格な5Gスマホを投入
米国のキャリア各社は今後も5Gの投資が必要であり、そのためには5G利用者を増やす必要がある。4G時代にはデータ定額プランなどを提供することで、より高い通信費を投入していったが、5Gでは家族で同じ回線を共有する「複数SIMカード」サービスを増やし、顧客の囲い込みも強化している。
米国はiPhoneの普及率も高いために、「iPhone 12」「iPhone 13」シリーズへの買い替えユーザーも多く5G端末への買い替えが進んでいるように見える。しかし米国でも約半数の国民はAndroid端末を使っており、低所得者を中心にプリペイドユーザーも多い。
iPhoneユーザーなら5Gプランへの移行も順調に進んでいるだろうが、プリペイド端末ユーザーの多くはミドルレンジ以下の製品を使っている。キャリアにとってはそれらユーザーをいかに5Gへ移行させるかを考えねばならないわけだ。
そこで各キャリアは5Gの低価格スマートフォンを積極的に投入している。特に自社専用販売の「キャリアブランド5G端末」に100ドル台の低価格な5Gスマートフォンを用意している。AT&Tの「RADIANT Max 5G」やT-Mobileの「REVVL 5G」など、ベトナムや中国のODMメーカー品の5Gスマートフォンが相次いで投入されており、大手メーカーの低価格5G機より安い値段で販売されている。
関連記事
- 目が疲れない次世代ディスプレイ搭載タブレット、TCL「NXTPAPER 10s」に触れる
TCLが2020年に発表したディスプレイ「NXTPAPER」を搭載したタブレット「NXTPAPER 10s」を紹介する。CES 2022のブースで実機に触れてきた。 - 10.1型タブレット「TCL TAB 10s」がau限定で発売 2万2720円のWi-Fiモデル
FOXが、TCL製のタブレット「TCL TAB 10s」を国内で投入する。au +1 collection専用のオリジナルモデルとして、全国のauショップやauオンラインショップで取り扱う。海外版よりスペックを抑えることで、2万2720円(税別)という価格を実現した。 - TCLが300ドル以下の5Gスマートフォン「TCL 20 5G」、新タブレット「TCL NXTPAPER」発表
TCLが1月11日(米国時間)、CES 2021に合わせてスマートフォンやタブレットの新製品を発表した。TCL 5Gは300ドル以下という安さを特徴としており、6.67型のフルHD+液晶や3眼カメラを備える。TCLが独自開発した液晶を備えるAndroidタブレットの新製品「TCL NXTPAPER」も発表した。 - ミッドレンジの5Gスマートフォン「TCL 10 5G」、税込み3万9800円で発売
FOXが11月10日、TCLの5Gスマートフォン「TCL 10 5G」の取り扱いを発表した。価格は3万9800円(税込み)。6.53型のフルHD+ディスプレイや4眼カメラを搭載する。 - Huaweiが脱落した中国市場で覇権を握るのは? 中国スマホメーカーの動向を占う
中国メーカーの2021年の動きを振り返りつつ、2022年の動向を占う。realmeは今後得意とする新興国市場で着々と販売数を高めていくだろう。中国市場ではHuaweiがかつて持っていたシェアを他社が分け合う状況になっている。 - 中国「独身の日」で最も売れたXiaomiスマホ 課題は「ハイエンド」にあり
中国では11月11日は「1」の数字が並ぶことから、「独身の日」として冬の消費喚起を兼ねた大きな販売競争が繰り広げられる。独身の日に最も売れたスマートフォンは、Xiaomiのミッドレンジ「Redmi K40」だった。一方でメインモデルやハイエンドをそろえる「Mi」「Xiaomi」シリーズが1機種も入っていない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.