米国5Gスマホ市場の台風の目になるか? TCLが低価格機を続々と投入:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
米国市場で、TCLが勢力を広げている。低価格市場での参入を本格化させ、MVNOのプランとして「毎月T-Mobileを使っているだけで5Gスマホが無料でもらえる」という施策を行っているからだ。TCLの低価格5Gスマートフォンは他国におけるXiaomiやOPPOのような5G入門機として、米国市場でしっかりと受け入れられるだろう。
T-Mobileを使っているだけで5Gスマホが無料に
一方、スマートフォンメーカー側も低価格5Gスマートフォンの投入に前向きだ。TCLはAlcatel(アルカテル)ブランドでこれまでプリペイド向けの低価格スマートフォンを多数展開してきたが、グローバル市場に合わせて近年はTCLブランドのスマートフォンを投入している。そのTCLブランドで低価格な5Gスマートフォンを米国市場に次々と投入しているのだ。
現在販売中の「TCL 4X 5G」は、MVNO向けとなるSnapdragon 480搭載のエントリー5Gスマートフォン。価格はMVNOの1社、Straight talkで199ドルだ。4Gのプリペイドスマートフォンなら50ドル程度で買えるものもあるが、TCL 4X 5Gは何といっても高速な5G回線が利用できる。また代理店によっては割引販売も行われており、より安く買えるという。キャリアブランドのスマートフォンは消費者にはなじみがないが、TCLならTVメーカーとして米国でも名前が知れているだけに、安心して購入もできるだろう。
1月に発表されたTCL 30 V 5GとTCL 30 XE 5Gは、TCLが大手キャリアに初めて投入する低価格5Gスマートフォンとなる。T-Mobileは現在自社ブランドモデルの最新5G機として「REVVL V+ 5G」を199ドルで出しているが、プリペイドの契約内容によっては無料で提供されており、同社のプリペイドユーザーは「毎月T-Mobileを使っているだけで5Gスマホが無料でもらえる」。TCL 30 XE 5Gも同等またはそれ以下の価格での販売が期待されており、T-Mobileの5Gユーザー増に大きく寄与するだろう。
Verizonはインド製となるOrbitの「Myra 5G」を349ドルで販売中だが、格安とはいえない価格だ。TCL 30 V 5Gは大手メーカー品ながらそれよりも安い価格で投入される予定であり、こちらも5Gユーザーを増やす起爆剤になるだろう。他社の低価格5Gスマートフォンでは対応しないミリ波にも対応しており、今後他国でミリ波が広がったときにキャリアからの引き合いもあるだろう。
残された米国市場を強化するTCL
TCLは2020年に「TCL 10」シリーズを発表し、日本を含む世界各国に展開していった。しかしXiaomiなど中国メーカーの低価格モデルが増加したことで劣勢に立たされている。日本でも後継となる「TCL 20」シリーズは投入されていない。今やどの国でも中国大手勢が存在感を高める中、米国市場はTCLが参入済みな上に、中国勢の影響を一切受けない。TCLが米国市場を強化するのは世界の中でも「残された市場」であり、ミリ波モデルを出すことで、他メーカーより技術的に優位に立てるというメリットもあるのだ。
5Gの普及はまだ始まったばかりだ。TCLの低価格5Gスマートフォンは他国におけるXiaomiやOPPOのような5G入門機として、米国市場でしっかりと受け入れられるだろう。TCLは子会社にディスプレイメーカーも持っており、折りたたみ型や巻取り式ディスプレイも開発中だ。低価格5G機が成功すれば、いずれはローラブルスマートフォンなど最新技術を搭載したモデルを米国で出し、存在感をさらに高めるかもしれない。米国におけるTCLの動きは注視したいものだ。
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