なぜ撤退した「G'zOne」が復活したのか KDDIとカシオに聞く「G'zOne TYPE-XX」誕生秘話(3/5 ページ)
カシオ計算機がデザインを担当、京セラが製造する4G LTEケータイ「G'zOne Type-XX」。さらにauが販売する3社のコラボによって生まれた「異例」のケータイは、いかにして発売にこぎ着けたのか。KDDIの企画担当者と、カシオ計算機のデザイナーに開発秘話を聞いた。
京セラとのタッグでデザインを改良
―― 京セラとのやりとりの中で、磨き上げていったのですね
近藤氏 コンセプトデザインにはなかった形状の変更や機能を追加もありました。京セラの設計チームと密に連携してデアインしました。
例えば、前面の「プロテクター」と呼ぶ6箇所の突起を付けています。これを付けることで、落下した際に金属の部品に直接衝撃が伝わらず、ダメージが与えられないようになっています。
井戸氏 これは京セラさんから「サブ液晶の上にさらに高い場所に、別の部品を付けてほしい」というリクエストがあり、カシオ側でデザインを改良した部分です。見た目を損ねずにブラッシュアップさせるのはなかなか難しい試みでした。
近藤氏 また、背面にはダクト風に空気が抜けるデザインにしていますが、ここも京セラの設計チームに頑張ってもらったところです。実はこのダクト、単なるダミーではなく、空気の通り穴として機能しています。ダクトの奥には気温計用の温度センサーが入っていて、外気温を表示できるようになっています。
井戸氏 G'zOneシリーズはモータースポーツをモチーフとしていますが、ここはスポーツカーのミッドシップエンジンのようなイメージでこのダクトを付けました。このデザインを見た京セラの設計の方から「このダクトを何かに使えないでしょうか」と提案をいただきまして、改良した部分になります。
他にも、背面の円形ディスプレイのリングに時計のインデックスのような刻みを付けたり、随所に三次曲線を取り入れ、滑らかな形状にしたりと、量産設計に移行する前の段階で時間があったもので、細かい部分でいじり倒しています。
―― サブ液晶に時計やコンパスを表示できるのはG'zOneらしいところですね。
近藤氏 サブディスプレイではG'zOneとして初めて完全な円形のディスプレイを搭載しています。背面には時計やコンパス、気圧、高度などの情報を表示できます。
井戸氏 ディスプレイを照らすように通知LEDを仕込んでいまして、充電時や着信時に光ります。暗い中で見るとカッコイイんですよね。
―― テンキーは丸形で押す時に指が迷わない印象を受けました。
近藤氏 今回、初号機「303CA」のエッセンスを取り入れて、丸型のキーを採用しています。隣のキーと誤操作しづらく、軍手をつけていても押しやすいという、タフネスモデルにすごく向いているデザインになりました。
井戸氏 丸形のキーを単純に配置すると、見た目がパラパラとばらけてしまうような印象になってしまいます。そこで、各キーにキリッとエッジを効かせて、見た目の凝縮感を出すようにしています。
こういうデザインは以前からやりたかったのですが、当時のカシオの設計ではできなかったんです。G'zOne TYPE-Xの頃は、防水エリアを確保するためにキーピッチを狭める必要がありました。京セラさんの設計は、キーピッチが広く、デザインのしがいがある素材でした。
ソリッドブラックには「12色の黒」を使い分け
―― カラーバリエーションは「リキッドグリーン」と「ソリッドブラック」の2色ですね
井戸氏 グリーン系色の「リキッドグリーン」は、10年前の「G'zOne TYPE-X」を継承する色として、カシオから強く要望して、カラーラインアップに追加しました。この外装の緑色は発色が難しい色でした。10年間の技術の進化によって、ようやくこの明るい色が実現できるようになりました。
旧世代のG'zOne TYPE-Xでは緑がかったシルバーに薄い緑色にコーティングしているのですが、今回のTYPE-XXでは、薄い緑色の生地に2種類のパール塗装を重ね合わせて、光が透き通るような緑色にしています。下地に使っている生地の改良が進んで、良く発色するようになったために、この色味を実現できました。
近藤氏 もう1色は「ソリッドブラック」です。タフネス系ではやはり黒も根強い人気がありまして、定番としてやはり入れておきたい、と選びました。
井戸氏 見た目のインパクトはグリーンですが、人によっては使っているうちに飽きてしまうかもしれません。飽きが来ない定番色として黒は捨てがたいですね。
ただし、普通の黒を作っても面白くないので、今回のソリッドブラックはかなりのこだわりを詰め込んでいます。外装のパネルで使っている黒塗料は色選定の担当者に言わせると「日本で初めて使う塗料」だそうで、細かな粒子が入っていて、さらっとした手触りに仕上がっています。差し色にはカッパー(銅色)を入れて、ただ単に黒に沈めず、ラグジュアリーな雰囲気を出しています。
よく見ていただくと、黒は黒でも光沢の黒があり、シボの黒があり、ザラザラの黒がありと、パーツによって質感が違うのが分かると思います。実はソリッドブラックでは、「黒」と名の付く色を12色も使い分けているんです。デザインを磨きあげる時間はたっぷりあったので、こだわりました。
これまでのG'zOneでは、黒系色を使うのはせいぜい3〜4色ですから、12色も黒を使うのはほぼ前例がないと思います。京セラの設計担当の方も「ここまで使い分けるのか」と驚いていました(笑)。
近藤氏 つやの見せ方などを変えるために黒を使い分けるというのはよくある使い方ですが、12パターンの黒を使うというのは異例ですね……。
―― 真ん中のリングが引き立つような黒使いになっていますね。
近藤氏 黒としての塊感もあるのですが、立体感もきちんと感じられますし。
井戸氏 ただの真っ黒じゃないんですよね。
―― G'zOneシリーズではグリーンと並んで赤色も印象的なカラーですが、今回のラインアップでは含まれていませんね。
井戸氏 そうですね。「なぜ赤がないのか」というお声もかなりいただきました。
ここでちょっとした小ネタをお話すると、実は、この外装のパネルはただのカウル、つまり装飾部品なんです。この外装を引っぺがしても、防水性能もタフネス性能も確保されています。あくまで自己責任でと前置きしますが、カスタムの腕のある方は、パネルを外してお好みの色に塗装するような楽しみ方もできるかもしれません。ぱっと見、ビス留めしているように見えますが、このビスは装飾ビスで、実際には接着剤で止めつけられていますが、パネルを外すときに力を入れると割れてしまうこともあるので、気を付けて作業してください。
近藤氏 ただし、塗り替えは製品保証の対象外となりますし、auとしては推奨しませんので、ご容赦ください。
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