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MVNOと「+メッセージ」の関係 当初は3キャリア限定→MVNO開放の背景は?MVNOの深イイ話(1/2 ページ)

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社から提供されている+メッセージでは、SMSのように相手先の電話番号を指定してメッセージを送ることができます。2021年9月から、これまでは使えなかったMVNOにも開放されました。MVNOやサブブランドのユーザーも、無料で高度なメッセージングが可能となり、アプリの利便性がより高まることになります。

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 皆さんは「+メッセージ」をお使いでしょうか?

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社から提供されているスマートフォン向けアプリで、SMSのように相手先の電話番号を指定してメッセージを送ることができます。送信文字数も2730文字までとSMSより大きく、さらには画像や音声も送ることができ、相手先(受信側)が「+メッセージ」アプリを使っている場合は無料で送信、受信側が「+メッセージ」アプリを使っていない場合は自動的にSMSで送信できる(Android版のみ。その場合は文字のみ送信可能で、かつSMS送信料金が発生)という便利なメッセージングアプリです。

 2018年5月に「+メッセージ」がMNO3社から提供開始になった際には、同年6月に開かれた世界的な携帯電話業界の展示会「Mobile World Congress Shanghai」で世界的に注目を集めました。しかしその後は次第に話題になることも減り、再び大きな話題を集めたのが2021年となります。今回はこの+メッセージを、MNO3社とは違ったMVNOの目線からご紹介しましょう。

+メッセージ
MVNOと+メッセージの関係について解説する

+メッセージと他のメッセージサービスの違い

 この+メッセージは、LINEや、Appleの「メッセージ」といった他のメッセージングアプリとどう異なるのでしょうか?

 ここで+メッセージを紹介する前に、他のメッセージングアプリの特徴をおさらいしておきましょう。日本で一番広く普及しているメッセージングアプリと言えばLINEですが、LINEでメッセージを送るためには、相手もLINEを使っていて(アカウントを作成していて)、かつ相手先のアカウントとの間で事前に「友だち」になっている必要があります。そのため、LINEを最も有効に使えるのは、家族や、職場や学校のグループなど、リアルでも親しい間柄となるでしょう。

 これに対し、Appleの「メッセージ」は電話番号でもメッセージを送れるため、相手の電話番号を知っているだけ、という程度の間柄でもメッセージを送れます。相手先が「メッセージ」に対応しているAppleの端末(iPhone, iPadなど)であれば、メッセージ送信は無料、相手先がメッセージに対応していないAndroid端末の場合はSMSを使う(そして有料になる)点で+メッセージと似ています。

 このように、メッセージングアプリは「アプリの利用者間のみメッセージの送受信ができるタイプ」、そして「相手先がアプリの利用者でない場合にSMSでメッセージを送信できるタイプ」の2種類に大きく分類できます。+メッセージは前述の通り後者です。この+メッセージがAppleのメッセージに比べ優れているのは、MNO3社がiOS版、Android版の両方のアプリを提供していること(さらに2018年夏以降のキャリアモデルのAndroid端末にはアプリをプリインストール)、すなわち、画像や音声を含むSMSより高度なメッセージングを、より広範な利用者(※1)が無料で利用可能である点となります。

(※1)なお、「+メッセージ」の利用は国内に閉じているため、世界的に見れば、Apple端末の利用者に対し無料で高度なメッセージの送れるAppleの「メッセージ」の方が広範となります。

+メッセージ
LINE、iOSのメッセージ、+メッセージの違い

+メッセージで採用されたRCSとは?

 この+メッセージが通信業界で話題となったのは、+メッセージを実現するためにMNO3社がRCSと呼ばれる技術を採用したためです。RCSはRich Communication Servicesの略であり、通信事業者や通信機器ベンダーにより開発された、高度なコミュニケーションを支える技術標準となります。

 SMSは世界的には2G(第2世代携帯電話)であるGSMで実現したサービスですが、日本では遅れて3Gでの採用となり、しかも事業者の垣根を超えてメッセージのやりとりができるようになったのはようやく2011年のことです。

 しかし、その頃には既に技術の陳腐化が避けられないとして後継技術の開発が進められていました。それがRCSであり、メッセージの伝送にIP(インターネットプロトコル)とその上で動作するIMS(IP Multimedia Subsystem)を使うことで、携帯電話の世代を超えて利用可能となるよう開発されたものです。また、利用者のID(アカウント)としてSMS同様に電話番号を使うことで、利用者から見てSMSと同じ感覚で利用可能であることも企図されました。

 しかし、2Gがまだ現役で使われている国も多い中、SMSからRCSへの置き換えは順調に進んだとはとてもいえない状況でした。そんな中、2018年に世界に先駆けて国内全てのMNOが同時にRCSに対応し(※4)、事業者の垣根を超えて携帯電話の利用者に高度なメッセージングサービスを提供した国が日本というわけです

(※4)なお、2018年当時、楽天MNOはまだサービスを開始していません。

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