「GalaxyのSIMフリースマホ」投入のワケ、Amazonの強い後押しで実現(1/2 ページ)
国内初となるGalaxy Mシリーズは「Amazon専用で開発した」という。フラグシップスマホのSIMフリー展開は継続して検討する。最上位タブレットTab S8 Ultra「ファンの声」受けて、急きょ追加で投入することが決まった。
4月8日発表されたGalaxyブランドの新製品、オープン市場向けスマホ「Galaxy M23 5G」と数年ぶりのAndroid タブレット「Galaxy Tab S8+/S8 Ultra」が含まれる。
世界最大のスマホブランドで、国内でも人気が高いGalaxy。日本では携帯キャリアでの販売のみとなっていたが、初(※Thom Browne Editionを除く)のオープンマーケット向けモデル、いわゆる「SIMロックフリーモデル」の投入を発表した。導入の背景にはAmazon Japanの強い後押しが存在するようだ。
4月8日に開催されたGalaxy 新製品発表会後の囲み取材と個別取材にて、サムスン電子ジャパンの小林謙一CMOに国内SIMフリー市場進出の狙いを聞いた。
SIMフリーの選択肢を用意してGalaxyファンをもっと増やしたい
―― これまでGalaxyは日本国内ではキャリア向けモデルに特化していましたが、今回、SIMフリー(オープンマーケット向けモデル)として「Galaxy M23 5G」を発表しました。このタイミングで投入を決断した理由をお聞かせください。
小林氏 お客さまのライフスタイルにおける、スマホとの関わり方の変化です。Galaxyは、スマホやスマートウォッチ、タブレットなどさまざまなガジェットを通して、お客さまの生活をアップデートするお手伝いをしたいと考えています。
国内市場ではここ最近、お客さまのスマホとの関わり方に変化が起きていると認識しています。これまでの国内市場ではスマホの端末と回線をセットで購入して、通信とハードというのが一体化した形で使うというお客さまが多かったと思います。
一方で、これからのお客さまのスマホとの関わり方を考えると、スマホと通信のそれぞれを好みでチョイスして選ぶという、海外では当たり前となっている利用スタイルがより広まっていく可能性もあります。
お客さまとのスマホとの関わり方が多様化する中で、SIMフリーモデルという選択肢を用意することで、Galaxyファンをもっと増やしていきたいと考えています。
Amazonが販売パートナーに決まった背景
―― 国内市場では「SIMフリースマホ」は2年ほど前から浸透しつつありますが、他社よりやや遅れたこのタイミングでの投入となったのはなぜでしょうか。
小林氏 SIMフリーモデルの投入については、お客さまと接点拡大の一環として、以前からさまざまな形での市場調査を行い、投入の可能性を検討していました。
日本市場でのGalaxyは、通信事業者向けに製品を納入するOEMモデルを主力として展開してきました。通信事業者さんとのビジネスしか知らないわれわれにとって、自社で在庫を持って、サポートプログラムを提供するSIMフリーモデル(オープンマーケット版)の投入は、全てが新しいトライでした。一歩一歩、勉強しながら準備しています。
こうした中で、SIMフリーモデルを販売する販売パートナーさんの獲得は大きな課題でした。今回、Amazonさんを始めとする強力なパートナーシップを得られたことで、そこに踏み出すことができました。
―― SIMフリーモデル初号機として「Galaxy M23 5G」を選んだのはどのような理由でしょうか。
小林氏 日本市場でのGalaxyブランドはプレミアムモデルでお客さまの支持を得ています。SIMフリー市場でもやはりプレミアムモデルを重視したいと考えています。そうした理由から、ミドルレンジの中でも性能が高めで、約4万円というGalaxy M23 5Gを選定しました。
―― Mシリーズはグローバルではどういった位置付けのモデルでしょうか。
小林氏 「M」の示す通り、まさにミドルレンジのモデルですが、実は今回販売パートナーとなっているAmazonさんとも関わりが深いモデルです。サムスンは海外市場でAmazonさんと深い協力関係にありまして、Mシリーズのグローバルモデルは“Amazon専用モデル”として開発された製品ラインアップです。
日本市場でもAmazonさんとは単なるメーカーと販売チャネルという関係ではなく、完全に「パートナーシップ」として、当初の準備段階から連携しています。そこに関してはAmazonさんとも強い期待をしておりますし、家電量販店さんとも同じようにやっていきたいと思っています。製品選定にあたっても協議を重ねており、今回、Amazon.co.jpのSIMフリースマホのポートフォリオ(製品ラインアップ)を補う製品となっています。家電量販店様とも今後、同じように強い協力関係を築いて、製品展開を進めていきたいと考えています。
発表会ではアマゾンジャパンでSIMフリースマホを担当する平山文洋氏(エレクトロニクス&ITソリューション事業本部 ワイヤレス事業部 事業部長)がビデオメッセージを寄せた。Amazonとサムスン電子の協力関係の強さが推察できる
―― 今回のSIMフリー投入に際しては、Amazonさんの強い後押しがあったものと推察しますが、一方でGalaxy M23 5Gは「家電量販店でのオンラインショップ」での販売も予定しています。将来的な販路拡大についてどのように考えていますか。
販路拡大を検討する際も、お客さまのニーズを重視して進めていきたいというのが基本的な考えです。Galaxy M23 5Gの当初はほぼオンライン限定での販売となりますが、お客さまの中には実際に手に取って、大きさや手触り、動作性などを確認してから購入したいという方もいらっしゃいます。家電量販店での店頭展示は、そのタッチポイントになると考えています。
サポート体制も整備
―― オープンマーケット版の展開にあたっては、流通体制とともにサポート体制の整備も課題となったかと思います。
小林氏 はい。お客さまがスマホをお選びいただく上で、しっかりとしたサポート体制が用意しなければ、購入までには至らないだろうと認識しております。Galaxy M23 5Gでは本社の事例を参考として、「Galaxy Care」というサポートプログラムを設定しました。
―― 今回のGalaxy M23 5Gでは、国内向けのGalaxyブランドとして初めてデュアルSIMをサポートしています。デュアルSIM対応は、ユーザーからの要望を受けてのものでしょうか。
小林氏 お客さまからデュアルSIMを望まれる声が大きかったのも事実ですし、海外市場ではデュアルSIM対応のスマートフォンは大きな市場になっています。一方で、日本ではこれまでシングルSIMで統一していたため、デュアルSIM対応もトライだと位置付けています。
Galaxy Sシリーズのオープン市場向けモデルは?
国内市場では携帯キャリア向けのビジネスを中心に進めてきたサムスン電子にとって、SIMロックフリーモデルの投入の際にも国内キャリアへの配慮が必要だったようだ。一方で、小林CMOはGalaxy Sシリーズなどのフラグシップモデルをオープン市場に投入する可能性については否定しなかった。
―― 今回、大手キャリア向けに投入しているフラグシップモデル「Galaxy S」シリーズはSIMフリー向けには投入していません。今後、投入する可能性はあるのでしょうか。
小林氏 フラグシップモデルをSIMフリー版で出さないというわけでなく「機をうかがっている」という状況です。お取引のある通信事業者(携帯キャリア)さんとの関係や、競合メーカーの状況を踏まえて、今回はミドルレンジのMシリーズを投入しました。
Galaxy M23 5Gでまずはトライして、販売実績や、ご購入いただいたお客さまのフィードバック、販路をとって一緒にビジネスパートナーとなる各社さまの声をしっかりと分析して、今後の製品ラインアップの拡充を検討していきます。
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