盛り上げ役がちょっと違う? 熱気が戻った2022年の「スマホ春商戦」:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(1/2 ページ)
「春商戦」と呼ばれる1〜5月(特に3月と4月)は、携帯電話の契約や端末販売が一番多くなる時期……ですが、ここ2年は新型コロナウイルス感染症の影響でそうでもありませんでした。今年(2022年)は賑わいをある程度取り戻したものの、ちょっと今までとは様子が異なるようです。携帯電話ショップのスタッフから話を聞いてみましょう。
1年を通して携帯電話が一番売れる時期――それが“春商戦”です。最近はiPhoneの最新モデルが発売になる秋頃も大きな商戦期の1つとなっていますが、春商戦は特定の機種に限らずさまざまな機種の販売や、各種サービスの申し込みでごった返します。
しかし、ここ2年ほどの春商戦はそうでもありませんでした。2020年は、改正電気通信事業法の影響で携帯電話端末の値引きが制限された影響で売り上げが減った所に、新型コロナウイルス感染症の影響で来客が減ってしまうという“ダブルパンチ”を受けてしまいました。2021年は2020年ほどではなかったものの、売り上げや来客という面では厳しいという販売店も少なくなかったようです。
では2022年の春商戦はどんな様子なのでしょうか。関東地方において新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」が適用されていた1〜3月の様子を中心に、販売店のスタッフから話を聞きました。
客が戻ってきた携帯電話売り場
おととしや去年と比べたら、売り上げは好調です。販売台数も多くなっています。
ある家電量販店の携帯電話コーナーに勤務するスタッフはこう語ります。他の量販店やキャリアショップに勤めるスタッフに聞いてみても、一部の店頭を除くと2020年や2021年よりはマシになったという共通認識があるようです。
となると、その「売り上げ」は何が支えているのでしょうか。もうちょっと詳しく聞いてみると、客足が戻ったことが何より大きいようです。
もう、(お客さまは)新型コロナに慣れてしまったのかもしれません。ワクチン接種が進んで、感染対策としてのマスク着用なども当たり前になりました。スーパーマーケットに行くのと同じような感覚で、携帯電話ショップに寄る人は増えているんじゃないでしょうか。
おととし、去年と「自粛だ!」ということで端末を買い控えた人も少なからずいるようです。実際、ここ最近スマホを買っていったお客さまのことを思い返してみると、3年以上同じ機種を使っている人が多かったです。
話を聞くと「『外出を控えないと』っていう気持ちもあって、今の機種が使えるので買い替えを見送った」なんていう人もいらっしゃいました。
確かに2020年春や2021年春の店舗の様子を思い返してみると、春商戦とは思えないほどに“ガラガラ”な状況が珍しくありませんでした。かといって、大手キャリアのオンラインショップで機種変更する人は、読者の皆さんが思うほどには多くありません。
外出自粛を含めて「買い替えを控える理由」があって、おおむねそれを“解消”できる状況になったために、買い替えにやって来る人が増えた――話をしてくれたスタッフが言うような状況は確かにあるのです。
新たな“特価商材”が売場を盛り上げる
販売台数が回復したのは、単に客が戻ってきたことだけが理由ではないようだ。とある「キャンペーン」の効果が少なからず出た結果なのだという。
iPhoneシリーズを中心に、この春は本体価格が安くなるキャンペーンを実施しています。旧モデルの一括特価販売だけではなく、残価設定型の分割払い限定ですが、最新のiPhone 13シリーズも条件を満たすと23回の分割払いを大幅に値引く取り組みもやっています。
残価の支払いを始める前のタイミングで端末を返却するかどうかの選択を迫られますが、2年間は本体代金の負担がほぼゼロになるケースもあります。「2年で返却すれば支払いはほとんどないですよ」とお客さまには話しています。2年以上使う場合でも、通常価格よりも大きく値引きされていることには変わりないので、さまざまなお客さまにお勧めしやすいです。
特価キャンペーンを実施すると、機種変更をする予定のなかったお客さまも“おっ”と気が付いて売り場にやってきます。売り場ににぎわいが生まれて、雰囲気もあってか「じゃあ買うか」と買って帰るお客さまも少なくないです。
春商戦といえば、子どもとご両親が一緒に店へとやってくる光景もよく見かけます。子どもにスマホを買うためにやって来るわけなのですが、特価商品を見たご両親が「ついでに買うか」と機種変更していくということも久しぶりに多くなっています。
買い替えるタイミングを逃して「使えるからしばらくこれでいいや」と思っていたお客さまが、子どもやご家族の付き添いで来店した際に特価端末を見て急きょご購入、というケースが今年は多いです。
この連載を毎回読んでいる人なら察するかもしれませんが、この「キャンペーン」は、iPone SE(第2世代)など特定の機種を対象にしている値引きのことです。
よくよく話を聞くと、転売目的など「自分で使うわけでもないのに買っていくお客さまの対応が大変だ」という声も結構ありました。ただ、ハイエンドスマホや定番ブランドのスマホを手頃な価格で買える「キャンペーン」は、春商戦の“盛り上がり”に大きくプラスに働いたことも事実ではあるようです。
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