iPhoneとMacの“いいとこ取り”をした「iPadOS 16」 iPadは2つの方向に進化する:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
WWDCで発表されたものの中で最も大きなアップデートといえそうなのが、基調講演のトリを飾ったiPadOS 16だ。複数のアプリをウィンドウで開ける「Stage Manager」や外部ディスプレイなど、PC化がますます進んでいる。それでも、macOSとは明確なすみ分けが図られている。
Appleは、6月7日(日本時間)にWWDCを開催。基調講演では、iOS 16、iPadOS 16、watchOS 9、macOS Venturaといった最新OSやそのAPIを紹介した。処理能力を高めたチップセットの「M2」や、それを搭載するMacBookも2モデル発表されている。開発者向けイベントで、Appleの製品群の全てを対象にしているため、その内容は多岐にわたるが、最も大きなアップデートといえそうなのが、基調講演のトリを飾ったiPadOS 16だ。
iPadOSは、iOSから“独立”する形で、2019年9月にリリースされた。iOSとベースは共通だが、iPadやiPad Proといったデバイスの特徴を生かした機能が盛り込まれている。Apple Pencilへの対応や、トラックパッド対応は、その一例だ。iPad専用の機能として、マルチタスキングも強化されてきた。一方で、MacをはじめとするPCと比較すると、マルチタスキングはやや中途半端だった印象も否めない。iPadOS 16では、こうした点が大きく改善される。
マルチウィンドウ的な機能がついにiPadで実現、その名はStage Manager
その象徴といえるのが、複数のアプリを同時に開き、その組み合わせを管理するための「Stage Manager(ステージマネージャ)」だ。これまでのiPadOSにも2つのアプリで画面を分割する「Split View」や、メインで開いているアプリの上に小さな画面を重ねる「Slide Over」といったマルチタスキングの機能はあり、バージョンアップを重ねるたびに使い勝手には改善が加えられてきた。ただ、マルチウィンドウが大前提のPCと比べると、やはり制約が多かったのは事実だ。
これに対し、Stage Managerが導入されたiPadOS 16では、複数のアプリをウィンドウとして開いておくことができる。メインで使っているアプリの背後に別のアプリをスタンバイさせておき、それらを切り替えたり、背後に配置したアプリの内容を参照しながらメインのアプリで作業をしたりといった使い方も可能。ウィンドウの配置を自由に行えるため、左右のスペースしか調整ができなかったSplit ViewやSlide Overよりも、自由度が増すといえる。
現行のiPadOS 15でも、Split Viewで画面を分割しつつ、Slide Overなりピクチャ・イン・ピクチャを利用すれば3つのアプリを同時に表示できるが、この自由度がなかったため、現実的な利用スタイルにはなっていなかった。特に11型のiPad Proや10.9型のiPad Airでは、ディスプレイサイズも相まって、同時利用は2つのアプリが限界。これに対し、Stage Managerでは4つのアプリを開いている様子が確認できる。画面内で自由にウィンドウを動かせるため、アプリを同時に開いておきやすくなったというわけだ。
また、それぞれのウィンドウのサイズや比率を変更することが可能になる。Split Viewでも近いことはできたが、こちらの場合、変えられるのはあくまで横の長さのみ。アプリのウィンドウ1つ1つの大きさに強弱がつけられるのは、Stage Managerならではだ。iPadOSゆえに、PCのように、ファイルやフォルダを置いておけるデスクトップは存在しないため、操作のフローは変わってしまうが、ことアプリのウィンドウに関しては、かなり近い感覚で利用できるようになりそうだ。
さらに、iPadOS 16では、外部ディスプレイをサポート。Stage Managerを使って、それぞれの画面に異なるアプリを表示できるようになる。これまでのiPadOSでも、HDMIケーブルで接続した外部モニターへの出力はできたが、機能はミラーリングにとどまっていた。プレゼンや動画視聴の際に、iPadで表示したコンテンツをより大きな画面に映し出すには便利だった一方で、作業スペースでもある画面を拡張することはできなかった。マルチディスプレイ環境下でも、先に挙げたStage Managerに対応する。
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