「不適切な販売どうして放置?」「5Gで特徴的なサービスがない」 KDDI株主総会で指摘、高橋社長の答えは?(1/3 ページ)
KDDIは5月22日、第38期定時株主総会を開催した。2022年から2024年は5Gを中核に据えて事業変革を推進する。新中期経営戦略では、事業戦略を「サテライトグロース戦略」と位置付け、本格化を迎える5Gを中心に置き、通信を核とした注力領域を拡大していく。株主からの質問では、不適切な販売や3G停波後の影響、5Gサービスの今後について指摘があった。
KDDIは5月22日、第38期定時株主総会を開催した。38期(2021年4月1日から2022年3月31日まで)の事業報告を行った他、2022年度から始動した新中期経営戦略、第39期の業績予想を高橋社長が説明。また、株主からの質問に担当役員が回答した。
新中期経営計画を説明
高橋社長は、2022年から2024年度の新中期経営戦略について説明。長期ビジョンとして策定した「KDDI VISION 2030」を紹介し、「2030年には、あらゆる産業や生活シーンで付加価値を提供できる存在、社会を支えるプラットフォーマーになることを目指す」とした。
2021年までの中期経営戦略では「通信とライフデザインの融合」を掲げてきたが、2022年から2024年は5Gを中核に据えて事業変革を推進する。「通信を核としたイノベーションの推進」「安全安心で豊かな社会の実現」といった重要課題を策定しており、それを踏まえた中期経営戦略では、パートナーとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指す「サステナビリティ経営」を根幹に据え、事業戦略と経営基盤の強化を進めるという。
新中期経営戦略では、事業戦略を「サテライトグロース戦略」と位置付け、本格化を迎える5Gを中心に置き、通信を核とした注力領域を拡大していく。注力領域は「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「金融」「エネルギー」「LX(ライフトランスフォーメーション)」「地域共創」の5つ。事業戦略を推進するにあたり、成長の鍵となるのは5Gだと高橋氏は述べている。「あらゆるシーンに通信が「溶け込む」ことで、多様なパートナーとともに、新たな価値が生まれる時代を目指す」と語った。
その5Gだが、KDDIは多くのユーザーが快適に利用できるように、商業地域、鉄道といった生活動線に沿ったエリアの拡大を強化している。また、利用目的に応じた高速大容量の通信環境を提供できる5G SAの展開も進めており、映像配信やゲーム産業で活用が始まっていることを紹介した。
携帯電話料金の値下げでARPU収入はキャリア各社の課題となっているが、KDDIは新中期経営戦略でARPUの最大化を目指している。5G契約者数の増加と、バンドルプランでYouTube Premium、Netflixなどの魅力的なサービスを提供することで5Gの利用を加速。2024年度のマルチブランド通信ARPU収入が、2021年度対比で増加することを目指す。
サテライトグロース戦略で注力領域とされる5つの事業についても説明した。
DXでは、コーポレートDX、ビジネスDX、事業基盤サービスの3領域で構成される「NEXTコア事業」の成長を加速させ、売上高、営業利益ともに年平均成長率の2桁成長を目指すとした。2021年度末で2400万回線を超えたIoT回線のさらなる拡大も目指す。
DXの具体的な事例として、JR東日本と行っている分散型まちづくり「空間自在プロジェクト」、三井物産と取り組んでいる人流シミュレーションを活用したスマートシティー開発、電源開発とのドローン点検を紹介した。
金融事業では、金融サービスを展開している各社の成長とサービス間の連携を推進。連携強化によって、ユーザーのエンゲージメント向上を狙う。また、住宅ローンやクレジットカード会員数を拡大させ、2024年度に向け、売上高、営業利益で年平均2桁成長を目指す。
エネルギー事業は、収益の安定化と顧客基盤拡大によって着実な成長、売上高の年平均2桁成長を目指す。最近、卸電力市場では価格高騰が問題になっているが、安定的な相対電源を確保し、収益の安定化を図るとした。
LXでは、5Gの浸透と最先端技術の活用を通じて生活体験・行動を革新する事業を創出するという。Web3.0を生かしたメタバースで誰もが自分を表現できる空間を創出し、新たな双方向コミュニケーションやデジタル経済圏の確立を推進していく。ドローンによる無人配送や新たな映像体験の提供などで、地域活性化や暮らしを豊かにするサービスを展開。さらに衛星通信によって、山間地や離島など全国隅々に都市水準の通信品質を提供するとした。
地域共創の取り組みとしては、スマートフォン教室や、WILLERと設立したCommunity Mobilityが展開しているちょいのりサービス「mobi」を取り上げた。中期累計で1500万の情報格差を解消し、地域共創を実現するという。
新中期経営戦略の1年目である39期(2022年度)は、売上高は5兆5600億円、営業利益は1兆1000億円を見込む。注力領域の法人事業や金融事業のさらなる成長を通じて増収増益を目指す。また、中期経営戦略期間において1.5兆円規模の株主還元を実施する予定。21期連続増配と、配当性向40%超の継続を目指し、第39期の年間配当金は135円を予定している。
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