au通信障害に異例の「総務省職員派遣」、総務大臣はKDDIの広報対応に苦言
KDDIと沖縄セルラーの携帯回線で7月2日〜3日にかけて発生した大規模な通信障害について、金子恭之総務大臣は「国民への周知が十分ではなかった」と苦言を呈した。異例となる総務省からの職員派遣については「総理の指示で行った」と明かした。
KDDIと沖縄セルラーの携帯回線で7月2日〜3日にかけて発生した大規模な通信障害について、金子恭之総務大臣は「国民への周知が十分ではなかった」と苦言を呈した。また、携帯電話キャリアの通信障害としては異例となる職員派遣について「総理の指示を受け行った」と説明した。
通信障害は7月2日の未明に発生し、au、UQ mobile、povoなどの携帯回線や、KDDIがネットワークを提供するMVNOの回線において通話やデータ通信が長時間利用できない、または利用しづらい状況が続いた。KDDIは段階的に復旧作業を実施しており、3日10時に西日本エリアでの復旧作業を完了。17時30分には東日本エリアでの復旧作業も完了した。
3日19時現在は、ネットワーク試験の検証のため、平常時よりも通信速度を落とすなど、通信の制御を適用した状況でサービスを提供している。
・KDDI“過去最大”の通信障害、発生の経緯は? 緊急会見で判明したこと→
総務省は7月3日土曜日の午前10時に臨時の大臣会見を実施。同日11時に開催されたKDDIの高橋社長による記者会見に先立ち、所管官庁としての認識を説明した。
金子大臣は会見において「KDDIと沖縄セルラーの報告を踏まえれば、今回の通信障害は電気通信事業法上の“重大な事故”に該当する」と指摘。2021年10月にNTTドコモで発生した大規模な通信障害と比較しても、「影響や規模はより大きいと思われる」という見解を示した。
大臣はまた、2021年10月にNTTドコモによる大規模な通信障害が発生したことを受け、総務省は外部の有識者が事故の内容を検証する電気通信事故検証会議を開催し、事故原因の分析や業界各社への情報共有を進めてきたと説明。その上で「再びこのような大規模な障害が発生したことは大変遺憾だ」と表明した。
KDDIと沖縄セルラーへの今後の対応については、電気通信事業法に基づく書面による正式な報告を受けた上で、「必要な対応をしっかりと講じていく」としている。
通信障害の現場に異例の職員派遣「総理の指示で」
今回の通信障害において、総務省は2日夜に同省職員をKDDIとの連絡役として送り込むという異例の対応を行っている。この対応について金子総務大臣は「KDDIが利用者に対して、きめ細かい情報の周知広報を丁寧に行うことを要請したが、事態の改善が見られなかったため、総理(岸田文雄首相)の指示を受け」て行った措置だと説明。
「障害発生から復旧までに1日以上を要しており、(KDDIのユーザーへの案内は)障害の大きさを踏まえれば、利用者目線で見れば十分ではなかったと考えている」と苦言を呈した。
KDDIの高橋誠社長はユーザーへの周知について「安易な表現で表に広報してしまうと、かえって混乱を与えると思い、慎重になっていたが、総務省からは『前向きに広報すべきである』とご指摘をいただいた」と説明。その結果、3日未明から障害の復旧見込み時間を含めた形で状況を1時間ごとにWebサイトで掲示する方式としたという。
また、総務省は台風4号の発生を受けて、KDDIに対して沖縄県と奄美諸島について優先して復旧対応を行うように要請した。要請を受け、KDDIでは障害発生エリアを西日本と東日本の2つのエリアに分割し、西日本エリアでの復旧作業を優先する措置を実施した。KDDI取締役執行役員の吉村和幸氏によると「今回の障害の性質上、地域を限定して復旧作業を優先することはできなかった。技術上可能だった西日本優先での対応を実施した」と説明している。
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