5万円台でも性能はハイエンド機並みの「Pixel 6a」 Googleが廉価スマホの位置付けを変えた理由:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
Googleは、Pixel aシリーズの最新モデルとなる「Pixel 6a」を7月28日に発売する。上位モデルと同じプロセッサを搭載しており、Googleが廉価モデルの位置付けを変えようとしていることがうかがえる。欠点もあるが、それが気にならいほど、日本のPixel 6aは安い。
円安ドル高を吹き飛ばす価格設定で、シェア拡大の可能性も
ただし、ハイエンドモデル、特に120Hzなどのリフレッシュレートが高いディスプレイを採用した端末と比べると、スクロール時の動作に少し不満を覚えるかもしれない。事前にスペックを頭に入れずに試用した際にも、Pixel 6、Pixel 6 Proとのリフレッシュレートの差分には気付いた。ミドルレンジモデルでも90Hz程度までリフレッシュレートを上げているモデルは多く、この点はPixel 6aの弱点といえる。
カメラの差分も大きい。Pixel 6やPixel 6 Proは、メインの広角カメラに5000万画素のセンサーを採用していた。5000万画素をそのまま使うのではなく、ピクセルビニングで画素を結合して、受光面積を大きくしている。これに対し、Pixel 6aのカメラは1220万画素でピクセルビニングは利用できない。この違いは、暗所撮影時の仕上がりにも出ており、明かりがほぼない場所で撮影した際の写りは、やはりPixel 6/6 Proに軍配が上がる。
とはいえだ。こうした欠点がささいなことに思えるほど、Pixel 6aの販売価格は安い。冒頭で述べた通り、Googleの直販価格は5万3900円。円安・ドル高傾向が続き、iPhoneが値上げされた直後に発表されただけに、そのインパクトは大きい。Tensorによるユーザー体験だけでなく、為替レートまでフラグシップモデルのPixel 6/6 Proと同水準を維持してしまったというわけだ。Googleのお膝元である米国と比べると、その安さが際立つ。
同国での価格は449ドル。7月22日12時台のレートで日本円にすると、約6万1800円だ。この時点で7900円ほど安い。加えて、米国は州によって税率が異なるため、基本的に価格は“税別”表記になる。例えば、カリフォルニア州の場合、6.5%から10.75%のセールスタックスがかかる。6万1800円に最大で6600円程度、税金が上乗せになるというわけだ。税込みで5万3900円の日本版は、1万5000円程度安く設定されていることが分かる。
Google日本法人の広報担当者によると、「価格はそのときの情報に鑑み、戦略的に設定している」といい、同社が意図して円安・ドル高が進行する前の為替レートを採用した可能性が高い。特にPixelシリーズは、諸外国と比べると、日本での売れ行きがいい。Google自身のブランド力の高さに加えて、ソフトバンクが戦略的にAndroidの代表的な端末として推していることも大きく影響しているとみていい。拡大期に、主戦場である日本市場で売れ行きにブレーキがかかる値上げは避けたかったのかもしれない。
こうした価格戦略も相まって、Pixel 6aは非常に魅力的な端末に仕上がっている。処理能力が向上した上にデザインのプレミアム感も増し、その上で円建ての価格が据え置かれているため、持ち前のコストパフォーマンスの高さがさらに際立った。Googleは第1四半期の決算で、Pixel 6が歴代最高の売れ行きであることを明かしていたが、Pixel 6aの投入により、その傾向には拍車が掛かることになりそうだ。
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