「0円」で集めたユーザーを手放した楽天モバイル プラン改定の功罪を読み解く:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
0円からスタートする「Rakuten UN-LIMIT VI」の廃止により、楽天モバイルからユーザーが大量に流出していることが明らかになった。解約数は新規加入者数を大きく上回っており、四半期ごとの契約者数は、MVNOも合わせると22万の純減だが、楽天モバイルにとっては、これは必ずしも悪い話ではない。料金を毎月払うユーザーの比率が高まり、経営状況が大きく改善するからだ。
大手キャリアのオンライン専用プラン/ブランドやMVNOが狙う“ヤメ楽天”
中でも、同じ0円スタートを売りにしていたKDDIのpovo2.0に、ユーザーが殺到した模様だ。楽天モバイルの発表直後からpovo2.0の申し込み件数は2.5倍に伸び、無料で回線を維持したいユーザーの受け皿になった。7月に発生した通信障害で、「一時期の勢いからは落ちている」(KDDI 代表取締役社長 高橋誠氏)というものの、7月末時点でも「うちから出ていく数より、入ってくる数の方がまだ多い」という。
月額990円の「ミニプラン」を用意するソフトバンクのLINEMOも、楽天モバイルの影響で加入者を伸ばした。ソフトバンクの代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏は、「今までのLINEMOの純増より、角度が高く増え始めている」と語る。LINEMOは、他社のオンライン専用プラン/ブランドと比べ、やや勢いに欠けていたところはあったが、低料金を求めるユーザーの流動性が高まり、伸びが顕著になった。
とはいえ、オンライン専用プラン/ブランドは、楽天モバイルの0円プランと比べれば割高だ。基本料無料のpovo2.0ですら、3GBのトッピングを購入すると990円の料金がかかり、楽天モバイルの3GB以下とほぼ横並びになる。より料金を抑えたいユーザーが注目しているのは、“格安スマホ”として以前から定着していたMVNOだ。実際、MVNO各社も、楽天モバイルの新料金発表を機に、契約者獲得に弾みをつけている。
MVNOトップシェアのIIJmioを率いる代表取締役社長の勝栄二郎氏は、第1四半期(4月から6月)の「獲得ペースが明らかに強まっている」と語り、その影響の1つとして楽天モバイルの料金プラン改定を挙げた。同社がMVNEとして支援する、他のMVNOも楽天モバイルから流出するユーザーを獲得できているという。同社の第1四半期は、IIJmioだけで3.6万回線の純増を記録。前四半期の1.7万回線、前々四半期の1000回線から、純増数を大きく伸ばすことに成功した。
IIJmio以外では、やはり低料金を強く打ち出しているMVNOが強い。1GB、290円の「合理的シンプル290プラン」を展開する日本通信は、楽天モバイルの発表後に、最大で10倍程度、新規契約者が増えたという。同社の代表取締役社長、福田尚久氏は「楽天モバイルの基地局整備が完了してくればどこかで影響は出ると思っていたが、今は逆にポジティブな影響として出ている」と語る。維持費を抑えたいユーザーにとって、290円という価格は魅力的だったことがうかがえる。
他社にとっては“棚ぼた”ともいえる楽天モバイルの料金改定だが、獲得合戦はまだまだ続く見込みだ。緩和措置として、Rakuten UN-LIMIT VIユーザーのデータ使用量が1GB以下の場合、7月〜8月は無料、9月〜10月は1078円がポイント還元されるからだ。もともとUN-LIMIT VIを契約していたユーザーは、現時点でも“0円プラン”が継続していることになる。これが楽天ポイントでの還元に切り替わるのが、9月だ。三木谷氏は「今はかなり落ち着いてきている」と語っていたが、8月末に向け、再び流動性が高まると見ていいだろう。ポイント付与が終了する10月末も、大きな山になる可能性が高い。
【更新:2022年8月17日14時00分 初出時、Rakuten UN-LIMIT VIから移行する場合、7〜8月は返金する旨の記載がありましたが、正しくは無料です。おわびして訂正いたします。】
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