KDDI、ソフトバンク、IIJが新規契約純増数好調――ゼロ円値上げを発表した楽天モバイルの受け皿か:石川温のスマホ業界新聞
KDDI、ソフトバンクとインターネットイニシアティブ(IIJ)が相次いで2022年度第1四半期決算を発表した。各社共に新規契約が好調な傾向にあるようだが、7月から「月額0円から」の料金プランを廃止した楽天モバイルからの“受け皿”になっている可能性がありそうである。
先週から今週にかけて、KDDI、ソフトバンク、インターネットイニシアティブが相次いで決算会見を開催している。各社に共通しているのが「新規契約者の獲得が好調」という点だ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年8月6日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
KDDIの高橋誠社長は「UQ mobileとpovoが好調で、2つのブランドの合計で約700万まで拡大した」とコメント。楽天モバイルによるゼロ円プランの廃止が影響しているのかを尋ねたところ「楽天モバイルの発表があったあと、非常に多くのお客さまに来ていただいたというのは事実。この動きがずっと続いていたが、今回の障害によって、MNPでうちから出ていく数よりも入ってくる数のほうがまだ多いものの、一時期よりは勢いが少し落ちている状況にある。
あと、povoは基本料金が0円で、利用せずに6カ月経つとお客さまに通知して、解約するというかたちになっている。ユーザーに告知もしているが、その数を6月からちゃんと入れているので、その分ちょっと弱くなっている部分もある。
結論として、まだ非常に順調に入ってきているものの、障害の影響で新規契約の流れが弱くなっている状況だ」と語った。
また、ソフトバンクもワイモバイルが好調だという。宮川潤一社長は「増加している中心は、相変わらずワイモバイルだが、楽天モバイルの0円廃止に関してはLINEMOもかなり貢献している。今までのLINEMOの純増よりも角度高く増え始めている。
一時的かもしれないが、正直、楽天モバイルの0円廃止発表後は、私どもとしては順調にお客さんが増えてる。KDDIの障害時も、一時期ではあるが(契約者数が増加し)1Qの契約者数は好調になった。
楽天モバイルからの転入が増え、転出も半分減ったが、こんな簡単にずっと1年間暮らせると思っていない」とした。
そもそも楽天モバイルが安価なプランを提供していたこともあり、値上げによってMVNOにもいい影響が出ているようだ。IIJmioは回線数としては112万6000回線と前四半期比で3万6000回線の増加という好調ぶりだ。
同社の勝栄二郎社長は「楽天モバイルが0円プランを廃止したため、そこからの乗り換えがIIJに来ている。それがひとつの大きな理由だ。KDDIの通信障害により携帯電話(回線)をもうひとつ持ちたいという需要が出てきている。障害の翌日には8倍ほどeSIMが売られており、こういうニーズはこれからも強くなっていくだろう」とした。
ここで気になるのが、楽天モバイルからどれだけ顧客が流出したのかという点だ。楽天の決算会見は8月10日に予定されており、具体的な数字が明らかになると思われる。
ただ、他社に流出する一方で、新規に獲得した顧客もいるわけで、値上げの影響をどれだけ抑えられたかに注目が集まりそうだ。
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