ドコモの「5G SA」に申し込んでみた 実際に試して分かった課題
NTTドコモで販売しているスマートフォン向けにスタンドアロン(SA)方式の5G通信サービス「5G SA」の提供が8月24日始まった。法人向けには既に提供されている。今回は個人として申し込む際の注意点やメリットをお伝えしたい。
NTTドコモで販売しているスマートフォン向けにスタンドアロン(SA)方式の5G通信サービス「5G SA」の提供が8月24日始まった。法人向けの提供は2021年12月12日に始まったが、今回は個人として申し込む際の注意点やメリットをお伝えしたい。
そもそも5G SAって何?
これまでNTTドコモが提供してきたNSA(ノンスタンドアロン)方式の5Gサービスは、4G用のコア装置を用いており、4G基地局と5G基地局の電波を併用していた。迅速に5Gエリアを広げられることがメリットである反面、5Gの特徴のうち「超低遅延」「超多数接続」を生かせないという課題を抱えている。
それに対して、SA方式は5G専用のコア装置(5GC)と5G基地局というシンプルな構成で、5Gの「超低遅延」「超多数接続」を生かせることから“真の5G”といわれている。SAならではの技術として、ネットワークを仮想的に分割し、サービスごとに特徴付けができる、ネットワークスライシングが導入できるようになる。
ただし、ネットワークスライシングに関しては、法人として恩恵を受けられる点になるので、個人で利用する際には直接関係しない。
Webか店頭での申し込みが必要
5G SAを個人で利用するにはWebか店頭からの申し込みが必要になる。さらに、ドコモの5G通信サービスを契約していること(※1)も条件の1つとなっている。
(※1)ahamoを含む。5Gギガホ(新規受付終了済み)は対象外(5Gギガホ プレミアなどへの移行が必要)
個人向け5G SAサービスの月額料金は550円(税込み)で、あくまでもオプションサービスという扱いになる。当面の間はキャンペーンとして追加料金なし(無料)で利用できる。
申し込みはWeb(ドコモオンライン手続き/ahamoオンライン手続き/ドコモオンラインショップ)の他、ドコモショップを始めとするドコモ取扱店でも行える。
5G SAのサイトで申し込みの手続きを行うには、5G SA(Standalone)へアクセスし、「お手続きサイトへ」というリンクをタップまたはクリックする。「My docomo」から直接申し込むことも可能だが、サービス名の項目を探すのが大変なので、5G SAのサイトからアクセスした方がやりやすいはずだ。
申し込み手順はこうだ。My docomoから「5G SAのお手続き」という項目へ進み、手続きをする項目にチェックが入っていることを確かめる。確認メールの送付先を選択し、注意事項をよく読む。問題なければ「はい」を選択。「請求書送付先住所」を確認したら、手続きする内容を再度確認し、「この内容で手続きを完了する」をタップする。
利用できる機種は少ない
対応端末は下記の通りだが、大半の機種はソフトウェアを更新することで対応する。
- AQUOS R7 SH-52C(対応済み)
- Galaxy S22 SC-51C(対応済み)
- Galaxy S22 Ultra SC-52C(対応済み)
- Xperia 1 IV SO-51C(9月以降予定)
今回筆者が速度計測に用いた端末はGalaxy S22 Ultra SC-52Cで、8月30日に配信が始まったソフトウェアアップデートを行っている。
ちなみに、対応端末一覧表にiPhoneや5Gルーターなどは含まれていないが、ドコモ広報によると8月末時点では対応する予定はないという。
端末の他にも事前に確認しておく必要があるのはSIMだ。サービスに申し込み対応端末を用意したとしても、Ver.6以降の「ドコモUIMカード」(水色/緑色)とahamo用ドコモUIMカード(青色)とeSIMでなければ、5G SAを利用することができない。
速度はどれくらい?
ここからは気になる速度についてチェックしていく。
5G SAの理論上の最高通信速度は下り4.9Gbps/上り1.1Gbps(一部機種は1Gbps)。推定通信速度は下りが441Mbps〜833Mbps、上りが187Mbps〜385Mbpsとなっている。
サービス開始当初に5G SAを利用できるエリアは以下の通りで、5G SAの具体的な提供施設とスポット一覧(PDF)は既に公開されている。
ターミナル駅とその周辺
- 札幌駅(札幌市北区)
- 仙台駅(仙台市青葉区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 名古屋駅(名古屋市中村区)
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 大阪駅(大阪市北区)
- 広島駅(広島市南区)
- 高松駅(香川県高松市)
- 博多駅(福岡市博多区)
※その他、大規模イベント会場とその周辺、大規模商業施設とその周辺
速度計測に用いた端末とアプリは、ソフトウェアアップデート済みのGalaxy S22 Ultra SC-52Cと、「ドコモスピードテストアプリ 」。計測場所は東京駅の丸の内駅前広場。
実際に8月30日の16時〜17時にかけて何度か速度を計測してみると、16時から16時30分ごろまでは東京駅の中央口、広場、駅舎屋内のいずれも4Gと変わらない速度だったが、16時43分に計測した結果は下り517Mbps/上り25.3Mbpsだった。16時59分に屋外(駅舎壁際)で計測したところ下り457.5Mbps/上り40.4Mbpsという結果が出た。
18時〜19時にかけて何度か速度を計測してみると、夕方よりも通行人や車の行き来が激しくなったせいなのか、さらに通信速度が遅くなった。
夕方から夜にかけての混雑した時間帯では推定通信速度の範囲内にはならなかった。少し移動したり、場所を変えて計測したりするだけでも、速度にかなりの差が出ることが分かった。
8月末時点では恩恵を受けられるシーンは限定的
現状、個人のスマートフォンでドコモの5G SAを利用する際に受けられる恩恵としては、法人用途における肝とされているネットワークスライシングではなく、通信速度だろう。だが、実際に条件をそろえた上で計測しても、「下り/上りのGbps超え」を達成できず、環境や条件によっても速度に差が出ることが分かった。
さらに、現状では5G SAか5G NSAのどちらの電波をつかんでいるのかを、ドコモのスピードテストや対応端末で確認する術はなく、仮にそれを確認できる他社製アプリがあったとしても、「それをドコモとして推奨していない」という。何かしらドコモの5G SAユーザーがそれを確認できる手段を用意してほしいと感じた。
とはいえ、環境や条件さえ整えば「理論上は5G SAを体感できる」(ドコモ広報)ということなので、より快適に高解像度のストリーミング動画を見たり、大容量のファイルをダウンロードしたりできるようになるはずだ。
【訂正:9月9日10時8分】初出時、名古屋駅(名古屋市中区)としておりましたが、正しくは名古屋駅(名古屋市中村区)です。お詫びして訂正いたします
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