スマホ復活のHTCは“激戦区の日本市場”でどのように再起を図るのか:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
HTCが約4年ぶりに日本市場でスマートフォンを投入する。「HTC Desire 22 pro」は、HTCのメタバースプラットフォーム「VIVERSE」に対応しており、スマートフォンと接続して利用するVRグラスの「VIVE Flow」に最適化されている。得意のVRやメタバースを武器に、スマートフォン市場で再起を狙うHTCだが、同社不在の4年間で、市場の構造は大きく変わった。
単体でも使えるミドルレンジのスマートフォン、ローカライズも徹底
メタバースを売りにしたHTC Desire 22 proだが、「普段使うスマートフォンの機能はしっかり備えている」(川木氏)。プロセッサは先に挙げた通り、ミドルレンジモデル向けのSnapdragon 695 5Gだが、ディスプレイは120Hzのリフレッシュレートに対応しており、トリプルカメラを搭載。メインカメラは4600万画素と高画素で、1300万画素の超広角カメラや、500万画素の深度センサーを備える。IP67の防水・防塵(じん)やQi準拠のワイヤレスチャージにも対応。端末側から周辺機器をワイヤレスで給電することもできる。
グローバルで販売されている端末だが、日本市場に合わせたカスタマイズまで施されている。キャリア版では海外メーカーとして早い時期からおサイフケータイを採用し、オープンマーケットモデルへの対応も進めてきたHTCならでの取り組みといえる。また、おサイフケータイだけでなく、5Gの対応周波数帯でもローカライズを行った。5Gは、n3/n28/n77/n78/n79の5つをサポートする。
中でも注目したいのは、ドコモが展開しているn79をカバーしていることだ。n79は中国などで商用化されているものの、欧州や米国などでは主要な周波数に含まれていないため、幅広い国や地域で展開するメーカーはベースモデルから外していることが少なくない。ベースモデルに最小限のカスタマイズを加えて販売するオープンマーケット版では、かなりの数の端末が、n79のみ非対応の状態になっている。日本市場だけにn79をサポートしようとすると、「コストが上がってしまう」(メーカー関係者)からだ。
ところが、ドコモはどちらかといえば、n79を活用して5Gのエリアを拡大している。n78は固定衛星通信との干渉があり、エリア化の際には交渉も必要になるため、マクロ局で一気に拡大するといったことがしづらい。5G用に割り当てられた新周波数帯の中では、n79の方がエリアの面展開がしやすいというわけだ。こうした事情もあり、n79非対応の端末でドコモ回線を利用しようとすると、5Gに接続できる機会が少なくなってしまう。
HTC Desire 22 proは、メタバースを売りにした端末。Wi-Fiや4Gだからといって、利用ができないわけではないが、やはり通信量が多くなりがちなだけに、高速・大容量の5Gとは相性がいい。端末の特徴を踏まえると、ミリ波には非対応ながら、各キャリアの5Gを完全にサポートした点は評価できる。
日本市場に合わせたローカライズは、カラーリングにも及ぶ。日本限定の「サルサレッド」が、それだ。川木氏が「日本の方に向けては、デザイン、特にカラーを重要視してきた」と語っていたように、HTCは、かつてKDDIとタッグを組み、日本専用モデルの「HTC J」や「HTC J butterfly」を発売してきた。その際に採用されていた象徴的なカラーが、レッドだ。そんな特別なカラーバリエーションを採用したところからも、同社の日本市場での意気込みが伝わってくる。
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