中国で過熱する“折りたたみスマホ市場” サムスンはHuaweiの牙城を崩せるか:山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)
グローバル市場では「折りたたみといえばGalaxy Z」という状況だ。だがその話は中国では全く通用しない。中国メーカー各社が折りたたみスマートフォンを次々と投入している。2022年第2四半期の中国国内折りたたみスマートフォンのメーカー別販売シェアは、1位がHuaweiで53.7%と半数以上を占めている。
Samsung Electronicsの「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」は折りたたみスマートフォンの代表といえる製品であり、この形状のモデルとして世界各国で圧倒的なシェアを誇る。ライバル製品が少ないこともありグローバル市場では「折りたたみといえばGalaxy Z」という状況だ。だがその話は中国では全く通用しない。中国メーカー各社が折りたたみスマートフォンを次々と投入しており、既にSamsungの存在を脅かしているのだ。
中国での折りたたみスマホ市場はHuaweiが半数以上を占める
中国の調査会社CINNO Researchによると、2022年第2四半期の中国国内折りたたみスマートフォンのメーカー別販売シェアは、1位がHuaweiで53.7%と半数以上を占めた。Huaweiの折りたたみスマートフォンは前年同期に72.2%と国内シェアの約4分の3を占めるほどであり、既に1年前からSamsungを抜き去っていたのだ。なお、Huaweiのシェアがこの1年で約20%の減少となった理由は販売不振ではない。新規参入メーカーが増え、製品数が増えたことで、全折りたたみスマートフォンの中での割合が減っただけだ。
中国全体の折りたたみスマートフォンの販売台数は2020年第2四半期が44万3400万台で、2021年第2四半期は58万7000台と134%の伸びを記録している。この数にHuaweiのシェアをかけあわせると、2021年第2四半期は32万台、2022年同期は31.5万台と販売台数そのものはほぼ変わっていない。Huaweiの折りたたみスマートフォンは安定した台数が売れるほど、既に中国国内では一定お知名度を誇っているのだ。Huaweiの全スマートフォンの販売台数は年々減少しているものの、プレミアムフォンである折りたたみスマートフォンは年に1機種以上と積極的に新製品を投入しており、市場で高い存在感を示している。
Huaweiの折りたたみスマートフォンは2021年12月に発売した縦折り型の「P50 Pocket」も人気が高い。発売直後から品切れを繰り返しており、中国全体の折りたたみスマートフォンの中で2022年第1四半期、第2四半期と連続で販売台数1位となった。P50 Pocketのライバルとなる縦折り式モデルで目立った製品はSamsungの「Galaxy Z Flip3 5G」「Galaxy Z Flip4」となるが、発売時の価格を比較するとP50 Pocketが8988元(約18万3000円)、Galaxy Z Flip3 5Gが7599元(約15万5000円)。P50 Pocketは5G非対応ながら、高級感ある外観したことなどにより、価格が高くともSamsungの同タイプ機より売れているのである。
Samsungが巻き返しを図るも、その地位は安泰ではない
さて、中国国内の折りたたみスマートフォンのシェアは2位がSamsung、以下vivo、OPPO、HONOR、Xiaomiと続く。Samsungは今から10年以上前は中国国内でシェア1位だったが、スマートフォン時代になると低価格モデルで強みを発揮できず、見る見るうちに販売数を落としていった。今や海外ならどの国に行ってもSamsungのスマートフォンを見かけるが、中国では「その他メーカー」といえるまでシェアを落とした。この状況の中でSamsungは「折りたたみスマートフォン市場」という新しい分野で他社より先に新製品を投入し、中国国内での存在感を高めることを狙っていた。
だが折りたたみスマートフォンの本命となる、横開き型の端末でHuaweiは「外折り式」「内折り式」と2つの方式の製品を投入し、さらにSamsungよりも画面サイズを大きくしている。一時は「打倒Samsung」とばかりにカメラでライカとコラボし、子会社のHiSiliconが高性能NPU搭載プロセッサを開発するなどしてAppleを抜き、世界シェア2位に上りつめたHuaweiだが、折りたたみスマートフォン市場では既にHuaweiがSamsungを大きくリードしているのだ。
このように、中国国内ではHuaweiが圧倒的に強く、Samsungが巻き返しを図ろうと躍起になっている。しかしそのSamsungの地位も今や安泰ではない。CINNOの調査結果を見ると、vivo、OPPO、HONORは1年前には折りたたみモデルを出していなかったにもかかわらず、その後の約半年から数カ月で一気にシェアを高めている。各社から登場した製品は横折り式・内折りタイプとGalaxy Z Fold4と同じタイプの製品。だがvivo「X Fold」とHONOR「Magic V」は大画面に加え高性能カメラを搭載、OPPO「Find N」は逆に小型スタイルとすることで新たなユーザー層開拓に成功した。
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